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3章 運命の輪
70話【輪廻と神】
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「星の輪廻システムは、魂の複製循環を行う機構なんだ」
楓さん曰く、それは肉体が死亡し、回収された魂を分割し複製しかけ合わせる。そうすることでその星の主たる種族の魂と人口を増やしていく。
神の役割はそのバランスの調整を行うところにあり、主種族が滅ばないよう導いたりもする。
「この星には所謂、神の概念はある。概念はあれど、異世界で言うところの神という機構がない。神がいないから魔法も、魔物も概念としてしか存在しない。魔法は神が敷くもの。輪廻システム内の悪性を魔物として輩出するのが神の役割のひとつなんだ」
神が在るから魔法と魔物が存在することができる。
循環をする上で、必要な悪性の排出のための機構が魔を法として敷くことであり、排出される悪性が魔物だと言う。
「主種族がそれに対抗するための術がスキルで、それを配布するのも神の役目。この星は悪性も全て主種族やそれ以外の生物に付加されている。魔法が敷かれていないから、悪人が生きたまま魔族化することもない」
彼女は、エレベーターのボタンを押す。
世界の仕組みを口にしながら。
「それでもこの星の主種族である人類は繁栄を続けてきた。その代わりに土地によっては大きな災い、禍根、強い執着が渦巻くことになった。民族紛争や聖地の奪い合い、そういった争いの火種は常に消えず、悪性は切り離されることなく、血は流れ続けた。この国にいる分にはそれらは対岸の火事だろうし、情報としてしか得られない。血を血で洗う戦地の人たちに対する、実感はない。彼らの愛着は執着になり、奪い奪われ、血を血で洗い、愛憎の坩堝と化したこの世界にスキルが得られる場所があるとなれば、それを得て使い、激化する。今、現実にそうなっている」
「そんなことをしたら……」
「そう、人口は激減する。ただでさえ人類は自身が生み出した兵器で互いを自らの主張や信念、利益がゆえに虐殺しあっていたわけだから。組織として力を合わせる必要もなくなった今、個人が個人の思うようにそれを行う。一定の魂の銀貨を得るたびにアナウンスが流れるのであれば、それもまた加速して増えるだろうね。神格を得た星がどんな魔法を敷くのか、それを全て知っているのは原国さんだけなわけだけれども」
「楓さんの言う通り、一部の護国防衛を旨とする軍は結束をしていますが、既に軍隊は軍隊の体を成せなくなっています。人数が必要な武力の運用に、人数が不要となった世界では軍を維持することはできない。特に数千、数万なんて単位で運用などは不可能となりました。特に数千年単位で民族同士での闘争を繰り返した場所では、他国からの目に対して行うプロパガンダも必要としなくなった今、混迷を極めています」
「……長きに渡る激戦地は、最後の1人になるまで殺し合うって構図だな」
その土地だけで済む話ではなく、闘争は闘争を呼び、血は流れ続ける。人を殺し続ければ、それに慣れる。強い力をたくさん持てば、それに溺れる。
それが悲願の成就であるならば、その恨みに、際限はない。
「特に陸続きだと、戦火は広がりやすい。自衛のために人を殺す、なんていうのは珍しくもないだろう。スキルには、その人間の人生が反映される。虐げられた者ほど、それを逆転するための力を望む。スキル配布のシステムってのはどうなってるんだ?」
武藤さんの問いに楓さんが「概ねあっているよ。その人間の性格と打ち破るべき困難から神は選定してスキルを与える」と答えた。
「暴力で支配をした人間は他者からの暴力を恐れる。団結を恐れる。その恐怖を払拭するために行われるのは粛清と虐殺だ」
「そう、殺すほどに魂は濁り穢れをまとう。異世界の神の持つ、浄化のシステムもこの星にはない。異世界では神の建てた神殿での告解により浄化を受ける。告解とは言っても、この世界の宗教の告解とは違うのだけれど、それは置いておいて。浄化されず濁り穢れきった魂は、肉体に作用する。人の形を保てなくなり、魔族化するというのが異世界での魔法なんだけれど、この星にそれはない。人の身のまま、残虐性を発揮することになる」
「いいえ」
楓さんの解説に、ぽつりと原国さんが言う。
「その法が、敷かれます。レッドゲートは、そのためのものです」
その言葉と共に、エレベーターが到着して扉が、開いた。
楓さん曰く、それは肉体が死亡し、回収された魂を分割し複製しかけ合わせる。そうすることでその星の主たる種族の魂と人口を増やしていく。
神の役割はそのバランスの調整を行うところにあり、主種族が滅ばないよう導いたりもする。
「この星には所謂、神の概念はある。概念はあれど、異世界で言うところの神という機構がない。神がいないから魔法も、魔物も概念としてしか存在しない。魔法は神が敷くもの。輪廻システム内の悪性を魔物として輩出するのが神の役割のひとつなんだ」
神が在るから魔法と魔物が存在することができる。
循環をする上で、必要な悪性の排出のための機構が魔を法として敷くことであり、排出される悪性が魔物だと言う。
「主種族がそれに対抗するための術がスキルで、それを配布するのも神の役目。この星は悪性も全て主種族やそれ以外の生物に付加されている。魔法が敷かれていないから、悪人が生きたまま魔族化することもない」
彼女は、エレベーターのボタンを押す。
世界の仕組みを口にしながら。
「それでもこの星の主種族である人類は繁栄を続けてきた。その代わりに土地によっては大きな災い、禍根、強い執着が渦巻くことになった。民族紛争や聖地の奪い合い、そういった争いの火種は常に消えず、悪性は切り離されることなく、血は流れ続けた。この国にいる分にはそれらは対岸の火事だろうし、情報としてしか得られない。血を血で洗う戦地の人たちに対する、実感はない。彼らの愛着は執着になり、奪い奪われ、血を血で洗い、愛憎の坩堝と化したこの世界にスキルが得られる場所があるとなれば、それを得て使い、激化する。今、現実にそうなっている」
「そんなことをしたら……」
「そう、人口は激減する。ただでさえ人類は自身が生み出した兵器で互いを自らの主張や信念、利益がゆえに虐殺しあっていたわけだから。組織として力を合わせる必要もなくなった今、個人が個人の思うようにそれを行う。一定の魂の銀貨を得るたびにアナウンスが流れるのであれば、それもまた加速して増えるだろうね。神格を得た星がどんな魔法を敷くのか、それを全て知っているのは原国さんだけなわけだけれども」
「楓さんの言う通り、一部の護国防衛を旨とする軍は結束をしていますが、既に軍隊は軍隊の体を成せなくなっています。人数が必要な武力の運用に、人数が不要となった世界では軍を維持することはできない。特に数千、数万なんて単位で運用などは不可能となりました。特に数千年単位で民族同士での闘争を繰り返した場所では、他国からの目に対して行うプロパガンダも必要としなくなった今、混迷を極めています」
「……長きに渡る激戦地は、最後の1人になるまで殺し合うって構図だな」
その土地だけで済む話ではなく、闘争は闘争を呼び、血は流れ続ける。人を殺し続ければ、それに慣れる。強い力をたくさん持てば、それに溺れる。
それが悲願の成就であるならば、その恨みに、際限はない。
「特に陸続きだと、戦火は広がりやすい。自衛のために人を殺す、なんていうのは珍しくもないだろう。スキルには、その人間の人生が反映される。虐げられた者ほど、それを逆転するための力を望む。スキル配布のシステムってのはどうなってるんだ?」
武藤さんの問いに楓さんが「概ねあっているよ。その人間の性格と打ち破るべき困難から神は選定してスキルを与える」と答えた。
「暴力で支配をした人間は他者からの暴力を恐れる。団結を恐れる。その恐怖を払拭するために行われるのは粛清と虐殺だ」
「そう、殺すほどに魂は濁り穢れをまとう。異世界の神の持つ、浄化のシステムもこの星にはない。異世界では神の建てた神殿での告解により浄化を受ける。告解とは言っても、この世界の宗教の告解とは違うのだけれど、それは置いておいて。浄化されず濁り穢れきった魂は、肉体に作用する。人の形を保てなくなり、魔族化するというのが異世界での魔法なんだけれど、この星にそれはない。人の身のまま、残虐性を発揮することになる」
「いいえ」
楓さんの解説に、ぽつりと原国さんが言う。
「その法が、敷かれます。レッドゲートは、そのためのものです」
その言葉と共に、エレベーターが到着して扉が、開いた。
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