【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて

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4章 ダンジョンアポカリプス

101話【3日目朝の狼煙】

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「何があったんですか!?」

 有坂さんがふたりを回復させる。母さんと父さんがいない。

「異星の神が、多聞と手を組んだ。俺は中立の立場をとるぞ、と言ったらここに連れてこられた」

 回復を受けた伏見さんは執務机にもたれかかったまま言い、煙草を取り出して火をつける。

「真瀬くんの両親を狙った彼らと戦闘に。ご両親は星格オルビス・テッラエが転移で移動させているので無事のはずですが、君たちが一瞬でも遅れていたら我々は死んでいたでしょう。助かりました」

「間一髪、って奴だな……。にしても、やつら、坊主の両親をどうするつもりだ?」
「俺にもわからん」

 伏見さんが、煙を吐いて言う。
「わからんが碌でもないことをするのは確かだ」

「真瀬夫妻は無事だ。僕が保護できた。それから、最後のレッドゲートが踏破された」
 星格オルビス・テッラエが僕らに告げて、姿を消す。

『レッドゲートが制限時間内にすべて踏破されました。完全クリア特典。各ダンジョンにてクリーンで安全なエネルギー資源とあらゆる鉱物の採掘が可能となりました』
『最も踏破数を稼いだ上位1000名に追加で採掘系特殊スキルを付与。下級の採掘スキルがショップに追加しました』

 昨夜話していた、特典。そのアナウンスが流れ、星格オルビス・テッラエが戻る。
 これで今までの周回では達成されなかったことがまたひとつ、達成された。

 地上すべてが血の紋で結界化されて、どこでも血の蘇生術を使用できるようになり、そして特殊スキル『告解』を有坂さんは得たはずだ。

 彼女が救った人たちにも。

「伏見さんはどうするんですか」
「どうもこうもない。俺は中立だと言っただろう。情報が欲しければ対価を出しなよ、真瀬少年」

 そう言うと、伏見さんは煙草を咥えて立ち上がる。

「俺はあんたらには用は無いが、そっちはどうだ? ないならお暇させてもらう」

「伏見くん。君は運命固有スキル、聖女の能力を知っていますか」
 原国さんが伏見さんを見据えたまま、訊ねる。彼は両手に血の紋を持つ。

「いいや。癒しの力か何かか?」

 アカシックレコードなんていっても、引き出せる情報は僅かなのだろう。
 伏見さんは、告解スキルを知らない。

 罪の告白と共に与えた苦痛をその身と魂で味わい、その罪科により、経験値等から被害者へ賠償として譲渡することで成されるカルマ値への干渉術だと、星格オルビス・テッラエの一部、節制テンペランティアが告げたスキル。

 それは血の紋を持つ人間には、処刑足りえる。
 彼の血の紋は、四肢の欠損どころか、消滅にも至るほどに刻まれている。

 それを、原国さんが伏見さんに告げる。
 伏見さんは表情を変えずに、煙草を吸い、紫煙を吐き出している。

「告解スキルは、すべての罪に一気に作用はしません。ですが、どこにいても、作動させることができる。スマホのリストに、名前のある者であれば」

 原国さんがリスクがあっても、有坂さんに伏見さんと徳川さんを会わせたのは、そのためだったんだ。
 彼らの浄化による、弱体化、あるいは無力化。

 四肢の剥奪。
 それに思い至って、僕は背筋を寒くする。
 そんなことを、有坂さんにさせて、いいのだろうか。

 確かに彼らのしてきたことは、むごい犯罪だというのはわかっている。
 他人の財産も命も尊厳も、彼らは笑いながら奪った。

 けれど、本当にこのやり方で、あっているのだろうか。

「そこのかわいいお嬢さんが、俺や多聞の自由も尊厳も命も存在ですら奪えるってことは理解した。それで?」
 伏見さんは表情を変えない。内心がわからない。

「有坂ちゃんは、それを実行できるのかな? 他人の腕や足が捥げるとわかっていて、力を使える?」
 伏見さんは、にこりと人のよさそうな微笑みを有坂さんに向ける。

「できますよ。私が貴方を裁くのではなく、貴方の罪が貴方を裁く。被害者が貴方の持つ肉体や財産を取り返すだけ」

 有坂さんが、にこりと微笑み返す。言い切ると同時に、伏見さんの体が床に崩れ落ち、膝をつく。
 煙草が床に落ちて、転がる。

 火はついたままだけれど、床を焦がすことはない。
 建物の損壊も火事も起きない。

「なるほどね。実行できるタイプか。参ったな。悪かったよ。さっきは殺されかけて機嫌が悪かったんだ。なんでも協力するから勘弁してよ」
 床に片膝をついたまま、両手を挙げた伏見さんの左手には小指がなかった。
 
「これができるのは、彼女だけではありません。彼女が復活させた者は、全員がその力を有する。悪事を行う者に、暴力的な支配を実行し続けることはもうできません」

「……俺たちを呼び出した時点で、それがわかってたんだな。左京さんも人が悪い。法の番人は、世界が変わっても法の番人か。それで? 俺に何をさせたい?」

「君の、情報のすべて。これからは、我々に協力してもらう」

 原国さんが告げる。

 床に落ちたままの煙草の、立ち上る紫煙が、反撃の狼煙のろしのようだった。
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