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4章 ダンジョンアポカリプス
108話【救済の力/有坂琴音視点】
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「彼らについての話の前に、もうひとつ聞いて欲しいんです」
私は、少し大きく声を張って言った。
このまま状況に流されたら、今までと同じ。まずは共有が重要だ。
「血の蘇生術と反魂、についてです」
聖女スキルの覚醒によって、そのふたつのスキルにも変化があったとことを告げる。
範囲指定、条件指定、死者の復活地点、全て可能になった。
範囲については『夢現ダンジョン』『レッドゲートダンジョン』『ノーマルダンジョン』『大型地下迷宮』に別れ、大型地下迷宮についてはまだ使用不可。死者がいないからだろう。
条件指定は地域や時間帯の絞込み、それから詳細指定についてはこちらで条件付けをつけられる。例えば、事故死、モンスターとの戦闘での死亡、などの死亡状況や家族の有無、年齢、性別など被害者、状況の絞込みも可能。
死者の復活地点も、今までは術者である私がいる場所だけだったのが、場所の指定ができるようになった。死者の自宅、遺体のある場所、どこかの場所指定。
「元々血の蘇生術や反魂は、聖女のスキルだったんじゃないですか?」
「いいえ、今までの周回で有坂さんが血の蘇生術、反魂を得たことはありません」
「夢現ダンジョンについての補足説明をしよう」
星格が言う。
ノートに書きつけられた補足をみんなで読む。
夢現ダンジョンは魂のみで挑む夢と現実の狭間の迷宮であり、得られるスキルには隠し要素がある。
より多くの人間の願望を集積した者が得られる隠しスキルが『血の蘇生術』であり、そのスキルツリーは他者10名以上の協力が必要となる。
戦力強化の元であるスキルポイントコインやモンスターコインの譲渡を、100枚以上受けなければ開放はされない。上位蘇生スキルである。
条件付けが厳しいのも隠し要素にせざるを得なかったのも、夢現ダンジョンが試しの迷宮であるため。
人間性と神性。初期スキルはその人間の人生の一部を反映したものであり、望みのひとつであること。
職業スキルレベル上昇は夢現ダンジョン内での1パーティーにおける上限が存在する。
上限突破を行う方法はふたつ。PK、あるいは君たちの行ったように協力者から譲渡を受ける。
聖女スキル覚醒により、それらが更に上限解放されたのが今の状態。
「そういうこと……。ダンジョン内で説明があれば、他にも血の蘇生術を、使える人は」
「それは無理でしょうね。個々に攻略可能であればまず条件が満たせない。それに1階クリアごとに、次パーティーが召喚されていたのです。1階時点で全て説明されていたら」
「1階から、動けない人が多かった?」
ぽつりと真瀬くんが言う。最初から、あのダンジョンの説明を全て聞いていたら、半信半疑でも怖くて動けなくなるのは理解できる。
1階クリアで次の犠牲者が出ることがわかっていれば、私たちも1階から動かなかったかもしれない。
『初期周回では全て説明をしていたんだ。でもそれでは、人数が足らなかった。1階から動けなくなる、意志を持って動かなくなるプレイヤーが多かった。だから僕は説明を後回しにしていった。夢現ダンジョンを異星の神へのカウンターとして用意しなきゃいけないことに気付いたのも周回をだいぶ重ねた後だったんだ。とはいえダンジョン自体がバグのようなものだから、調整にはてこずったけれど』
「悪意があったわけじゃないってこと?」
「悪意もあった。愉悦も否定しない。僕にはすべての感情がある。残酷を楽しむという感情も。今の僕が善性に偏っているのは君たちといるからだ。環境補正。僕はどちらにも傾く」
真瀬くんの作ったごはんを美味しそうに食べていた姿が印象に強く残っている。
別の陣営に星格が別の名前で存在していたら、もう私たちは生きていなかったかもしれない。
思い出すのは、徳川と伏見、ふたりの男。
見た目は整っている。魅惑的な姿をした、男たち。側に居るというだけで、怖気が全身を這い回るようだった。
悪魔が天使より醜ければ、誰も誘惑されない。
それを体言するような人間だった。彼らとは、今後もできる限り接触したくないと思う程に。
「――なるほど、嬢ちゃんがやりたいのは、大規模蘇生、だな?」
私の説明から、武藤さんが導き出した答え。
「そうです。夢現ダンジョンでのPKによる死亡者をまず全て。条件はひとつ。『PKをした者が、反省、後悔している』こと」
血の蘇生術での蘇生。蘇生を受けたもの最も自身の魂を傷つけた経験の記憶を薄れさせ、それによる傷を加害者へと返す。
血の紋が刻まれるのは、夢現ダンジョン以前の悪行を含んでいるが、夢現ダンジョンでのPKを夢だと信じて行い、今まさに後悔反省している者に限定すれば。
「血の紋が消失する人もいるはず」
私は、根岸くんや、PKを後悔する人たちを見た。苦痛に耐えて、それでも罪を償おうとする人たち。
根岸くんたちだけではないはずだ。夢だと思って行ってしまった殺人を、反省し後悔している人は、きっと多い。
「その後に告解も同様に、範囲指定をかけて行えば、欠損消失を避けられる」
紅葉さんの最初のPKは、事故だった。事故や防衛のためのPKも、数多くあったはず。
それらをひとくくりに告解だけで処理してしまうのは、暴力と何も変わらない。
正しければ何をしてもいいということは、それだけで暴力になりうるから。
いかに 因果が応報といえど、救済の力を暴力にしてはいけない。
そう説明した私に、みんなが頷く。
「MPは足りそう?」
「真瀬くんの職業補正があるけれど、足りない。だから、ダンジョンでレベルを上げたいの」
500人程度の蘇生までは今のMPでまかなえるけれど、全世界の夢現ダンジョン被害者を復活するには足りない。
その後の告解は復活者に任せたとしても、世界中の夢現ダンジョンによる死者。それらを復活させるにはどう足掻いてもまかないきれない。
だけど、レベルが上がれば、MPはフルで回復する。
それに真瀬くんのMPの最大値も上げなければ。
真瀬くんの職業補正は、パーティー、ギルド全体に波及するもの。
レベルアップでの自動引き上げにプラスして、スキルポイントコインは、真瀬くんのMP関連のツリーに使用すれば、最大MP量はかなり稼げるはず。
「人数は、どれほどですか」
「日本だけで、1億人を越えます。一箇所に集めるのは無理かと」
PKの死亡者だけで、1億人超。モンスターや事故その他要因での死者はもっと多い。
「わかりました。ではできる限りの人数が収容できる場所を確保します」
催事は行える状況ではないので、東京ドーム、ビッグサイト、国技館など、各地域の大型の建物内。そこで星格の複製体とダンジョン特務捜査員で蘇生を受けた人への説明を行うという形にまとまった。
指揮は原国さんがとってくれる。
レベル上げについては、今の状態で最もレベルを上げるのに効率のいい、高レベルノーマルダンジョンへ。
青木ヶ原樹海地下大迷宮へ向かった異星の神たちの動向は、星格が追える。
私たちはその後も意見を出しあって、作戦を立てた。
私は、少し大きく声を張って言った。
このまま状況に流されたら、今までと同じ。まずは共有が重要だ。
「血の蘇生術と反魂、についてです」
聖女スキルの覚醒によって、そのふたつのスキルにも変化があったとことを告げる。
範囲指定、条件指定、死者の復活地点、全て可能になった。
範囲については『夢現ダンジョン』『レッドゲートダンジョン』『ノーマルダンジョン』『大型地下迷宮』に別れ、大型地下迷宮についてはまだ使用不可。死者がいないからだろう。
条件指定は地域や時間帯の絞込み、それから詳細指定についてはこちらで条件付けをつけられる。例えば、事故死、モンスターとの戦闘での死亡、などの死亡状況や家族の有無、年齢、性別など被害者、状況の絞込みも可能。
死者の復活地点も、今までは術者である私がいる場所だけだったのが、場所の指定ができるようになった。死者の自宅、遺体のある場所、どこかの場所指定。
「元々血の蘇生術や反魂は、聖女のスキルだったんじゃないですか?」
「いいえ、今までの周回で有坂さんが血の蘇生術、反魂を得たことはありません」
「夢現ダンジョンについての補足説明をしよう」
星格が言う。
ノートに書きつけられた補足をみんなで読む。
夢現ダンジョンは魂のみで挑む夢と現実の狭間の迷宮であり、得られるスキルには隠し要素がある。
より多くの人間の願望を集積した者が得られる隠しスキルが『血の蘇生術』であり、そのスキルツリーは他者10名以上の協力が必要となる。
戦力強化の元であるスキルポイントコインやモンスターコインの譲渡を、100枚以上受けなければ開放はされない。上位蘇生スキルである。
条件付けが厳しいのも隠し要素にせざるを得なかったのも、夢現ダンジョンが試しの迷宮であるため。
人間性と神性。初期スキルはその人間の人生の一部を反映したものであり、望みのひとつであること。
職業スキルレベル上昇は夢現ダンジョン内での1パーティーにおける上限が存在する。
上限突破を行う方法はふたつ。PK、あるいは君たちの行ったように協力者から譲渡を受ける。
聖女スキル覚醒により、それらが更に上限解放されたのが今の状態。
「そういうこと……。ダンジョン内で説明があれば、他にも血の蘇生術を、使える人は」
「それは無理でしょうね。個々に攻略可能であればまず条件が満たせない。それに1階クリアごとに、次パーティーが召喚されていたのです。1階時点で全て説明されていたら」
「1階から、動けない人が多かった?」
ぽつりと真瀬くんが言う。最初から、あのダンジョンの説明を全て聞いていたら、半信半疑でも怖くて動けなくなるのは理解できる。
1階クリアで次の犠牲者が出ることがわかっていれば、私たちも1階から動かなかったかもしれない。
『初期周回では全て説明をしていたんだ。でもそれでは、人数が足らなかった。1階から動けなくなる、意志を持って動かなくなるプレイヤーが多かった。だから僕は説明を後回しにしていった。夢現ダンジョンを異星の神へのカウンターとして用意しなきゃいけないことに気付いたのも周回をだいぶ重ねた後だったんだ。とはいえダンジョン自体がバグのようなものだから、調整にはてこずったけれど』
「悪意があったわけじゃないってこと?」
「悪意もあった。愉悦も否定しない。僕にはすべての感情がある。残酷を楽しむという感情も。今の僕が善性に偏っているのは君たちといるからだ。環境補正。僕はどちらにも傾く」
真瀬くんの作ったごはんを美味しそうに食べていた姿が印象に強く残っている。
別の陣営に星格が別の名前で存在していたら、もう私たちは生きていなかったかもしれない。
思い出すのは、徳川と伏見、ふたりの男。
見た目は整っている。魅惑的な姿をした、男たち。側に居るというだけで、怖気が全身を這い回るようだった。
悪魔が天使より醜ければ、誰も誘惑されない。
それを体言するような人間だった。彼らとは、今後もできる限り接触したくないと思う程に。
「――なるほど、嬢ちゃんがやりたいのは、大規模蘇生、だな?」
私の説明から、武藤さんが導き出した答え。
「そうです。夢現ダンジョンでのPKによる死亡者をまず全て。条件はひとつ。『PKをした者が、反省、後悔している』こと」
血の蘇生術での蘇生。蘇生を受けたもの最も自身の魂を傷つけた経験の記憶を薄れさせ、それによる傷を加害者へと返す。
血の紋が刻まれるのは、夢現ダンジョン以前の悪行を含んでいるが、夢現ダンジョンでのPKを夢だと信じて行い、今まさに後悔反省している者に限定すれば。
「血の紋が消失する人もいるはず」
私は、根岸くんや、PKを後悔する人たちを見た。苦痛に耐えて、それでも罪を償おうとする人たち。
根岸くんたちだけではないはずだ。夢だと思って行ってしまった殺人を、反省し後悔している人は、きっと多い。
「その後に告解も同様に、範囲指定をかけて行えば、欠損消失を避けられる」
紅葉さんの最初のPKは、事故だった。事故や防衛のためのPKも、数多くあったはず。
それらをひとくくりに告解だけで処理してしまうのは、暴力と何も変わらない。
正しければ何をしてもいいということは、それだけで暴力になりうるから。
いかに 因果が応報といえど、救済の力を暴力にしてはいけない。
そう説明した私に、みんなが頷く。
「MPは足りそう?」
「真瀬くんの職業補正があるけれど、足りない。だから、ダンジョンでレベルを上げたいの」
500人程度の蘇生までは今のMPでまかなえるけれど、全世界の夢現ダンジョン被害者を復活するには足りない。
その後の告解は復活者に任せたとしても、世界中の夢現ダンジョンによる死者。それらを復活させるにはどう足掻いてもまかないきれない。
だけど、レベルが上がれば、MPはフルで回復する。
それに真瀬くんのMPの最大値も上げなければ。
真瀬くんの職業補正は、パーティー、ギルド全体に波及するもの。
レベルアップでの自動引き上げにプラスして、スキルポイントコインは、真瀬くんのMP関連のツリーに使用すれば、最大MP量はかなり稼げるはず。
「人数は、どれほどですか」
「日本だけで、1億人を越えます。一箇所に集めるのは無理かと」
PKの死亡者だけで、1億人超。モンスターや事故その他要因での死者はもっと多い。
「わかりました。ではできる限りの人数が収容できる場所を確保します」
催事は行える状況ではないので、東京ドーム、ビッグサイト、国技館など、各地域の大型の建物内。そこで星格の複製体とダンジョン特務捜査員で蘇生を受けた人への説明を行うという形にまとまった。
指揮は原国さんがとってくれる。
レベル上げについては、今の状態で最もレベルを上げるのに効率のいい、高レベルノーマルダンジョンへ。
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私たちはその後も意見を出しあって、作戦を立てた。
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