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第一章 序
第3話 悠介3
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柏華楼を出たはいいが、行く当てがない。そもそも彼はここで生まれてから一度も廓を出たことが無いのだ。町の様子や人々の生活なども、客から聞いた話や本で読んだ知識、瓦版から得た情報でしか知らない。
自分の家を探したり、食べものを仕入れたりしなければならないのだが、その方法もさっぱりわからない。この辺で柏華楼の客にでも遭遇すればいいのかもしれないが、そういうことで柏華楼にいつまでも寄りかかるのは嫌だった。
どうせ身寄りのない人間だ、死んだら死んだでいいじゃないか、母のもとへ行くだけだ。
柏華楼の楼主は当面必要な分だけお金を悠介に預けた。悠介の稼いだ金はたくさんあったが、大金を持ち歩くのは危険だから、家が決まってからまた取りに来るようにと言っていた。
だから彼は手ぶらで歩いていて、持ち物と言ったら懐に入っている少しのお金と、いつも悠介の面倒を見てくれた遊女が餞別にくれた夏みかん、それと客から貰った扇子だけだった。
しばらくぶらぶらしていると、街の真ん中に小さな川が流れているのが見えた。これが椎ノ木川だろう。この川沿いに下流へ向かえば、柿ノ木川というもっと大きな川に合流するはずだ。
悠介にとって、見るものすべてが新鮮だった。廓の中では想像するだけだったものが、今、目の前にあるのだ。
さらに少し歩くと大きなお店が見えてきた。呉服屋さんのようだ。大きな看板に『天神屋』と書いてある。たいそうな名前を付けたものだ。
そのはす向かいには河童の意匠が染め抜かれた暖簾のかかった小さな店があり、いい香りが漂って来る。暖簾には『弐斗壱蕎麦』と書かれている。どうやら蕎麦屋のようだ。その蕎麦屋の店先で、主人らしい人が縁台に座って煙管をふかして、悠介を見ていた。
蕎麦屋の主人らしき人と目が合ってしまった悠介は「こんにちは」と声をかけた。
「見かけねえ顔だな。うちの蕎麦食ったことあるか?」
「いえ」
「よし、決まりだ。食っていけ」
「あ、でも」
「お代は要らねえ。お前に食わせたいんだ」
主人は手招きしながら先に立って暖簾を分けて入っていく。悠介も断り切れずについて行った。
「そこ座れ」
もはや意見することは許されないかのように、蕎麦屋は勝手に悠介に指図する。かまどには赤々と火が熾り、上にかけた鍋では熱湯がぐつぐつと音を立てて麺を待っている。
「坊主、どこから来た。漆谷か。楢岡か」
「柏原から出たことがありません」
主人は手を止めて、悠介の顔をしげしげと見つめた。
「それにしちゃ見たことねえな」
「あたしは柏華楼で生まれたんです。生まれてから一度も廓を出たことが無いんです」
「遊女の子か」
「ええ」
「おっ母さんはどうした」
「死んじまったんです、昨日。それであたしが廓にいるのもおかしなもんだと思って、お暇を頂戴したんです」
大鍋に麺が投入される。蕎麦のいい香りが漂って来る。
「しかしお前、自分の家も決まってないんだろ」
「ええ」
「じゃあどこかに住み込みで奉公するしかねえな」
「そんな都合のいいところが見つかりますかねぇ」
悠介はさほど腹が減っていたわけではないが、出汁の香りに胃の腑が反応した。
「ヘイ、お待ち。熱いから気を付けて食えよ。これが柏原一有名な河童蕎麦だ」
「河童?」
主人がニヤリと笑った。
「俺は子供の頃沼で遊んでいて河童に会ったことがある」
「えっ、本当ですか」
「まあ食え」
驚いて固まったままの悠介を促すと、主人は言った。
「その時河童が何を思ったか、蕎麦の打ち方を教えてくれたんだ。それまで蕎麦なんか打ったことが無かったから全然うまくできなかったんが、河童の言うとおりにやっていたら凄く美味しそうな蕎麦に仕上がっていてな。それきり河童には会わないんだが、この蕎麦屋を出す時に河童の絵をあちこちに使ったんだ。もしもあの時の河童が見かけたらすぐにわかるようにな」
「へぇ……。この蕎麦、美味しいです。今まで廓で食べたことのある蕎麦と違う」
「そりゃ河童蕎麦だからな」
そこへ「ごめんよ」と入って来る人があった。五十過ぎの婆さんだ。
「弐斗壱さん、今日は蕎麦たくさん打ってあるかい。八兵衛長屋でお産なんだ、十人前ほど包んでおくれ」
「つゆはどうする」
「この鍋に入れとくれ」
「あいよ。あ、そうそう、お芳さん、そこの坊主にちょうど良さそうな住み込みの奉公先ないかね」
お芳と呼ばれた婆さんは今やっと気づいたように悠介に顔を向けた。
「あんたずっとここに座ってたかい?」
「ええ」
「こりゃ済まないね。ええと住み込みの奉公先ね。あんたいくつだい? どこに住んでる? 何ができる?」
悠介はこれまでのことをお芳に残さず話した。柏華楼で生まれたこと、母の柚香が亡くなったこと、柏華楼から出るのは今日が初めてであること、柏華楼では下男として雑用をこなし、客の相手をして将棋や碁も指したこと。
「その着物は?」
「お姉さんや禿の子たちのお下がりです」
「ああ、だから女ものなのかい」
しばらく考えていたお芳だったが、ふと何かを思い出したように言った。
「それなら佐倉様のお屋敷に行ったらどうだい? ちょうどこの前あたしが佐倉様のところを辞めたばかりなんだ。あんたを雇ってくれなかったとしても、あんたの奉公先くらいは探してくれるはずだよ」
「佐倉様?」
「大名主さ。すぐそこに椎ノ木川があっただろ? その上流に向かっていくと大きなお屋敷があるから。裏が竹林になってるからすぐにわかるよ。何ならあたしからの紹介だって言いな。悪いようにはしないだろうから」
「佐倉様ですね、わかりました。行ってみます。ごちそうさまでした。河童蕎麦、美味しかったです」
悠介が立ち上がると、主人が「気を付けて行けよ」と言ってくれた。お金を払わないのは気が引けたが、きっとこの主人は受け取らないだろうと考えて、餞別に貰った夏みかんを二つ懐から取り出した。
「これ、御礼です。一つはお蕎麦代に。もうひとつはお芳さんに奉公先の紹介代です」
案の定、弐斗壱は顔の前で手を振った。
「おいおい、無理やり蕎麦を食わせたんだから要らねえぞ」
「何をお言いだい。せっかくこんな美味しそうな夏みかんをくれるって言ってるんだ、厚意は受け取るもんだよ。ごちそうさん、坊や。あんた名前聞いとこうか」
「悠介です」
「悠介ね、あたしゃ取り上げ婆のお芳だよ。鬼灯長屋に住んでるから困ったらいつでも頼っておいで。佐倉様によろしく言っといとくれよ」
悠介は丁重に礼を言うと、弐斗壱蕎麦を後にした。
自分の家を探したり、食べものを仕入れたりしなければならないのだが、その方法もさっぱりわからない。この辺で柏華楼の客にでも遭遇すればいいのかもしれないが、そういうことで柏華楼にいつまでも寄りかかるのは嫌だった。
どうせ身寄りのない人間だ、死んだら死んだでいいじゃないか、母のもとへ行くだけだ。
柏華楼の楼主は当面必要な分だけお金を悠介に預けた。悠介の稼いだ金はたくさんあったが、大金を持ち歩くのは危険だから、家が決まってからまた取りに来るようにと言っていた。
だから彼は手ぶらで歩いていて、持ち物と言ったら懐に入っている少しのお金と、いつも悠介の面倒を見てくれた遊女が餞別にくれた夏みかん、それと客から貰った扇子だけだった。
しばらくぶらぶらしていると、街の真ん中に小さな川が流れているのが見えた。これが椎ノ木川だろう。この川沿いに下流へ向かえば、柿ノ木川というもっと大きな川に合流するはずだ。
悠介にとって、見るものすべてが新鮮だった。廓の中では想像するだけだったものが、今、目の前にあるのだ。
さらに少し歩くと大きなお店が見えてきた。呉服屋さんのようだ。大きな看板に『天神屋』と書いてある。たいそうな名前を付けたものだ。
そのはす向かいには河童の意匠が染め抜かれた暖簾のかかった小さな店があり、いい香りが漂って来る。暖簾には『弐斗壱蕎麦』と書かれている。どうやら蕎麦屋のようだ。その蕎麦屋の店先で、主人らしい人が縁台に座って煙管をふかして、悠介を見ていた。
蕎麦屋の主人らしき人と目が合ってしまった悠介は「こんにちは」と声をかけた。
「見かけねえ顔だな。うちの蕎麦食ったことあるか?」
「いえ」
「よし、決まりだ。食っていけ」
「あ、でも」
「お代は要らねえ。お前に食わせたいんだ」
主人は手招きしながら先に立って暖簾を分けて入っていく。悠介も断り切れずについて行った。
「そこ座れ」
もはや意見することは許されないかのように、蕎麦屋は勝手に悠介に指図する。かまどには赤々と火が熾り、上にかけた鍋では熱湯がぐつぐつと音を立てて麺を待っている。
「坊主、どこから来た。漆谷か。楢岡か」
「柏原から出たことがありません」
主人は手を止めて、悠介の顔をしげしげと見つめた。
「それにしちゃ見たことねえな」
「あたしは柏華楼で生まれたんです。生まれてから一度も廓を出たことが無いんです」
「遊女の子か」
「ええ」
「おっ母さんはどうした」
「死んじまったんです、昨日。それであたしが廓にいるのもおかしなもんだと思って、お暇を頂戴したんです」
大鍋に麺が投入される。蕎麦のいい香りが漂って来る。
「しかしお前、自分の家も決まってないんだろ」
「ええ」
「じゃあどこかに住み込みで奉公するしかねえな」
「そんな都合のいいところが見つかりますかねぇ」
悠介はさほど腹が減っていたわけではないが、出汁の香りに胃の腑が反応した。
「ヘイ、お待ち。熱いから気を付けて食えよ。これが柏原一有名な河童蕎麦だ」
「河童?」
主人がニヤリと笑った。
「俺は子供の頃沼で遊んでいて河童に会ったことがある」
「えっ、本当ですか」
「まあ食え」
驚いて固まったままの悠介を促すと、主人は言った。
「その時河童が何を思ったか、蕎麦の打ち方を教えてくれたんだ。それまで蕎麦なんか打ったことが無かったから全然うまくできなかったんが、河童の言うとおりにやっていたら凄く美味しそうな蕎麦に仕上がっていてな。それきり河童には会わないんだが、この蕎麦屋を出す時に河童の絵をあちこちに使ったんだ。もしもあの時の河童が見かけたらすぐにわかるようにな」
「へぇ……。この蕎麦、美味しいです。今まで廓で食べたことのある蕎麦と違う」
「そりゃ河童蕎麦だからな」
そこへ「ごめんよ」と入って来る人があった。五十過ぎの婆さんだ。
「弐斗壱さん、今日は蕎麦たくさん打ってあるかい。八兵衛長屋でお産なんだ、十人前ほど包んでおくれ」
「つゆはどうする」
「この鍋に入れとくれ」
「あいよ。あ、そうそう、お芳さん、そこの坊主にちょうど良さそうな住み込みの奉公先ないかね」
お芳と呼ばれた婆さんは今やっと気づいたように悠介に顔を向けた。
「あんたずっとここに座ってたかい?」
「ええ」
「こりゃ済まないね。ええと住み込みの奉公先ね。あんたいくつだい? どこに住んでる? 何ができる?」
悠介はこれまでのことをお芳に残さず話した。柏華楼で生まれたこと、母の柚香が亡くなったこと、柏華楼から出るのは今日が初めてであること、柏華楼では下男として雑用をこなし、客の相手をして将棋や碁も指したこと。
「その着物は?」
「お姉さんや禿の子たちのお下がりです」
「ああ、だから女ものなのかい」
しばらく考えていたお芳だったが、ふと何かを思い出したように言った。
「それなら佐倉様のお屋敷に行ったらどうだい? ちょうどこの前あたしが佐倉様のところを辞めたばかりなんだ。あんたを雇ってくれなかったとしても、あんたの奉公先くらいは探してくれるはずだよ」
「佐倉様?」
「大名主さ。すぐそこに椎ノ木川があっただろ? その上流に向かっていくと大きなお屋敷があるから。裏が竹林になってるからすぐにわかるよ。何ならあたしからの紹介だって言いな。悪いようにはしないだろうから」
「佐倉様ですね、わかりました。行ってみます。ごちそうさまでした。河童蕎麦、美味しかったです」
悠介が立ち上がると、主人が「気を付けて行けよ」と言ってくれた。お金を払わないのは気が引けたが、きっとこの主人は受け取らないだろうと考えて、餞別に貰った夏みかんを二つ懐から取り出した。
「これ、御礼です。一つはお蕎麦代に。もうひとつはお芳さんに奉公先の紹介代です」
案の定、弐斗壱は顔の前で手を振った。
「おいおい、無理やり蕎麦を食わせたんだから要らねえぞ」
「何をお言いだい。せっかくこんな美味しそうな夏みかんをくれるって言ってるんだ、厚意は受け取るもんだよ。ごちそうさん、坊や。あんた名前聞いとこうか」
「悠介です」
「悠介ね、あたしゃ取り上げ婆のお芳だよ。鬼灯長屋に住んでるから困ったらいつでも頼っておいで。佐倉様によろしく言っといとくれよ」
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