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カラーエブリデイ その5
87色 黄瀬屋敷へようこそ 訪問編
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やっほー! わたし、色野灯! 今日も今日とて学校の授業が終わりこの後なにをしようかとわくわくしながら帰りの支度をしていると、とある会話が聞こえてきた。
「ねえ、フウちゃんの家に遊びに行ってもいい?」
「?」
その言葉にわたしを含めたみんながリーンの方をみる。
「ワタクシの家ですか?」
フラウムが首を傾げながら聞き返すとリーンは「うん」といい言葉を続ける。
「そういえば、フウちゃんのお家に遊びに行ったことなかったなーと思って」
「わたしもいったことないよ」
わたしも会話に参加する。
「もしかして、ダメだった?」
「いえ、ダメという訳ではないのですが、ワタクシの家、というよりは『屋敷』は『山の上』にありますが、いいんですの?」
「屋敷!?」
「山の上!?」
フラウムの言葉にわたしとリーンは驚く。
「もし、来るのでしたら『今日は』迎えを呼ばないといけませんわね」
「『今日は』っていつもはどうやって帰ってるの!?」
「歩いてですが」
「歩いて!?」
当たり前のようにいうフラウムにわたしたちは驚くばっかりだった。
「まあ、トレーニングを兼ねて歩いて、または、走って帰ってるだけですがね」
「すごいね、わたしだったら絶対お迎え頼んじゃうよ」
「さすが、脳筋お嬢様、日常生活も筋肉臭いね」
わたしたちの会話にレータが入ってきた。
「なんですの、クソメガネ、お呼びじゃねぇですわ」
「ふん、キミの脳筋エピソードに苦言を呈したまでさ」
「貴方にそんなこと言われる筋合いはないのですが?」
「レータくんはたぶん、きのせさんのことを心配してくれてるんだよ」
喧嘩をはじめそうだった二人の後ろからクロロンがひょこっと現れる。 その隣にシアンもいた。
「きのせさん努力家だからむりをしてないかって心配してくれてるんだと思うよ」
「クウタ、それはキミの思っていることであって、僕はそんなこと一ミリも思ってないよ」
「そうなの?」
レータの返しにクロロンはフシギそうに首を傾げる。
「で、どうしますの? アカリさんとハヅキさんは来るとして、クソメガネと緑風さん、それに天海さんも来ますか?」
「え? ぼくもいってもいいの?」
「ええ、もちろんですわ」
「まあ、キミの屋敷とやらは気になっていたからね。 僕も同行させてもらおうかな」
「ホント、メガネくんの言い方、なんかムカつくね」
「同感ですわ」
わたしたちは学校を出ると、フラウムが家に連絡を取るとのことですこし離れて電話をしにいった。
しばらくすると、戻ってきて、すこし離れた場所に迎えがきてくれるとのことでその場所にむかった。
「ここならあまり人目を気にしなくていいですわね」
待ち合わせ場所に着くとフラウムがそういう。
「ひとめ?」
わたしが疑問に思い聞くと説明してくれる。
「自分でいうのもなんですが、ワタクシは貴族なのでお迎えなんてものを頼んだら目立ってしまいますわ。 なので、できるだけ人目につかない場所に来てもらうようにお願いしたんですの」
確かにわたしたちが今いるこの場所は人通りの少ない場所だった。
「ふん、もしかして、キミが誘拐されないかと家の人は心配しているんだろうけど、キミなんかを誘拐するバカはこの世に存在しないと思うけどね。 もし、そんなことをしようものならお尻が粉々になるからね」
「まあ、メガネの云う通り、そんな輩がいたらお尻の骨を粉微塵にしますけど、ワタクシが心配しているのはですね。 そんなことでは、ないんですの」
「?」
わたしたちがフラウムの言葉に頭にハテナを浮かべていると、こちらにむかってくるなにかに気がつく。
「……『あれ』できたんですのね…全く…目立たないようにと伝えたのに…」
その乗り物の姿を確認するとフラウムはため息をつく。
「…………」
わたしたちはその乗り物をみて唖然としていた。 その乗り物、たぶん『車』なんだろうけど、その車は、黄金に輝いていてめちゃくちゃ長かったのだ。
「え!? まぶしっ!? ていうか、ながっ!?」
わたしたちの言葉をリーンが代弁してくれた。
「お待たせ致しました。 『フウムお嬢様』」
車の中から黒い執事服をきたおじいさんが出てくると、ザ・執事といった感じにお辞儀すると後ろのドアを開ける。
「翼瀬さん、あまり目立たないようにとお願いしたはずですわよね」
フラウムはおじいさんに歩みよるとため息交じりにいう。
「ご友人のお迎えとのことでしたので、最大のおもてなしで迎えろと旦那様の命でございまして」
「お父様から?」
「はい、はじめは自家用ジェット機、または、ヘリで迎えろとのことでしたが、お嬢様の有無を伝えたところ、このリムジンを使えとのことで」
「……分かりました、翼瀬さんなりに気を回してくれたんですのね。 ありがとうございます」
「いえいえ、勿体無いお言葉」
執事のおじいさんは深く頭を下げると、わたしたちに眼をむける。
「お初にお目にかかります。私、フウムお嬢様の執事をさせていただいております。 翼瀬昴と申します」
スバセさんはわたしたちにも深々と挨拶をする。
「は、はい、みどりかぜくうたです! こちらこそ、よろしくお願いします」
「いろのあかりです! よろしくお願いします」
クロロンが律儀に挨拶を返したので、わたしたちも挨拶をしていく。
「ほほう、貴方が緑風様と色野様でございますか、お嬢様からよくお話を伺っております」
「え?」
スバセさんの言葉にわたしとクロロンは頭にハテナを浮かべながら、お互いをみる。
「その話はいいので、とりあえず行きますわよ」
フラウムは話を遮る様にいうと、車の中に入っていく。
「さあ、皆さんもどうぞ」
「うん」
フラウムにいわれ、わたしたちは車の中に入る。
「ええー!? すごいー!! なにこれ!?」
「ながい! ながいよ!!」
車に入った瞬間、わたしとクロロンは目を輝かす。
「ながい! でかい! ひろいよ!!」
「ロング! ビック! フッドだね!!」
「最後違う」
レータがなぜかつっこむけど、それが耳に入らないくらい、わたしとクロロンは興奮していた。
「はっ! ……乗車料金いくらかな……ぼく、今、709円しかもってないよ……」
クロロンは正気に戻ると、お金をもっていないことに気づき青ざめる。
「大丈夫ですわ、たかが送り迎えでお金なんて取りませんわよ」
「よかった、ありがとう」
「こんなすごいのに乗れるなんて夢みたいだよ」
リーンも興奮していたのかうれしそうにいう。
「まあ、お気持ちはわかりますが、出発しますので、安全の為に座ってください」
興奮するわたしたちにフラウムは慣れたように席に座りいう。
「貴族だって分かってはいたが、改めて認識したよ。 普段のキミからはお上品さがあまり感じられないからね」
「ちょっと! メガネくん、黙っていたと思ったのにやっぱり出てくる言葉は失礼だね」
「まあ、いいですわよ。 メガネの云う通りですから」
「そんなことないよ! フウちゃん」
リーンはフォローをいれる。
その後、車は出発してフラウムの屋敷にむけて走りだした。
「すごい! まるで動く部屋だね」
「きっと、変形するよ! ボタンはどこかな!」
「さすがにその機能はありませんわ」
興奮し続けるわたしとクロロンをフラウムがなだめる。
「キミ達、そんなバカみたいなこといって恥ずかしくないのかい? 庶民がばれるよ」
「……そういうメガネも落ち着きない」
「なっ!? 久々に喋ったと思ったらなんだい? 僕のどこが落ち着きないって?」
「……本読むフリして、さっきからチラチラ覗いてる」
「うっ!? なんで、そんなとこみてるんだよ……」
「……おもしろかったから」
シアンの言葉にレータはたじたじになる。
「すごいけど、ちょっと、外の視線が気になるね」
「え?」
リーンにいわれ、外をみると車が通り過ぎていくのを驚いてみている人がたくさんいた。
「正直、ワタクシもこの視線が嫌なので、避けていたのですが、今日は仕方ありませんわ」
「ごめんね、フウちゃん」
「いえ、大切な友人を招くのでこのくらいのおもてなしがあってもいいかなと思っているので大丈夫ですわ」
謝るリーンをフラウムはフォローする。
しばらく、走り続けて車が山に入った。 そして、数分後、山の上に大きな屋敷がみえてきた。
「すごい! もしかして、もしかしなくても、あれがフラウムの屋敷?」
「ええ、そうですわ」
「ここまで、かなり距離があったけど、本当にこの距離を歩いてきてるの!?」
「まあ、走れば20分程ですわね」
「いや、この距離を20分ってホントキミの体力はバカげてるね!?」
フラウムの言葉にレータは驚きを隠せずにいう。
屋敷の前に車が止まると、スバセさんがドアを開けてくれた。
「お疲れ様です。 こちらが黄瀬屋敷となります」
わたしたちは車からおり、屋敷を見上げる。
その屋敷はまるで物語で出てくるような大きな屋敷というかお城にもみえた。
「うえー! すごい!!」
「凄すぎて、笑いがとまらないね……」
レータはあまりのすごさに苦笑いしていた。
「ここで立ち話はあれですので、中に入りますわよ」
フラウムについていき、屋敷のドアを開けるとたくさんの人が列をつくって出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。ようこそお越しいただきました、ご友人の皆様」
たくさんの執事さんとメイドさんがお辞儀をしてわたしたちに挨拶をしてくれる。
「お、おじゃまします! ……で、あってるのかな?」
クロロンは挨拶をするけど、不安な顔でこっちをみる。
「たぶん、あってるとおもうよ! …………お、おじゃまします!!」
「めちゃくちゃ勢いまかせじゃないか……」
わたしも不安になっちゃってレータにつっこまれる。
「皆さん、おもてなしはありがたいですが、友人達が困惑してしまいますので、仕事に戻ってもらっていいですわ。わざわざありがとうございます」
フラウムの言葉にみんなは笑顔で会釈を返すと「ごゆっくりしていってください」と一言、言い残して去っていった。
「驚かせて申し訳ありませんわ」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
フラウムがわたしたちにいうと、一人の男の子が声をかけてきた。
その男の子は執事のカッコウをしていたけど、わたしたちと同じ歳ぐらいにみえた。
「ただいま、イブキ」
フラウムはその男の子に優しくいうと、わたしたちに目をむける。
「ちょうどいいですわ、イブキ、自己紹介をしてみてはどうですか」
「私めがですか?」
フラウムの言葉に驚きながらもイブキくんと呼ばれた子は自己紹介をしてくれる。
「では、誠に勝手ながら失礼します。 私は『黄瀬伊吹』と申します。 フウムお嬢様の専属の執事をさせていただいております。 お嬢様のご友人にお会いできるのを心よりお待ちしておりました」
ビシッとした自己紹介を終えるとイブキくんはフラウムの方をみる。
「『黄瀬』ってキミの兄弟かなにかかい?」
苗字が気になったのかレータがきく。
「いえ、私は幸運ながら、偉大な家名を頂けた、名も無き小市民でございます。 私如きには大変勿体ないものでございます」
「いただけた?」
わたしが聞き返すと、フラウムがイブキくんの方をみて確認するとイブキくんが答えてくれる。
「私は、お嬢様に『拾われた身』でございます。 そして、この名前もお嬢様から頂いたものでございます」
「!?」
その言葉にわたしたちは驚く。
「まあ、詳しく話すと長くなってしまうので、要約すると彼は複雑な事情で『捨てられて』しまい、我が家で引き取ることにしたんですの」
「そんなことが……」
フラウムの言葉にリーンは驚愕していた。
「ここではなんですので、客室に案内しますわ。 イブキ、お願いできますか?」
「はい、お任せください」
イブキくんの案内でわたしたちは客室に案内された。
「わー! すごい!」
客室に入ったわたしが感嘆の声を上げる。
「テレビでかっ! 机ながっ! 部屋ひろっ!」
リーンも語彙力が下がっちゃうくらい驚いている。
「すごい! すごいよ! まるで豪邸だね!」
「豪邸だぞ」
興奮するクロロンにレータはつっこむ。
「あれ? みっくん、どうしたの?」
机の前でなにかをみつめるシアンに気づく。
クロロンと一緒にシアンのもとにいく。
「……ねえ、これ食べていいのか?」
シアンは振り返るとフラウムに聞く。めずらしく少しウキウキしている。
シアンのみていたモノは机に置かれた、水饅頭だった。 それ以外にも、たくさんのデザートが並んでいる。
「うええ!? コーヒーゼリーだ!」
クロロンも大好きなコーヒーゼリーをみつけ、目を輝やかせる。
「ええ、もちろんいいですわよ。 なにせ、皆さんの好きなモノをピックアップしてありますから」
フラウムは胸を張るようにいう。
「ほんと! ありがとう、きのせさん」
クロロンはお礼をいうと、跳ねるようにコーヒーゼリーを手に取り席につく。 わたしも大好きないちご大福をみつける。 それに続き、みんなも席につく。
「このブルーベリーは、どこ産だい? すごい、まろやかな甘みがするね」
「どこ産かは、わかりませんが、確かに美味しいですわね」
「そちらは、『ラベン』から取り寄せたモノとなっております」
イブキくんが答えてくれる。
「ラベンか、確かそこってブルーベリーの生産量が一位のところだね」
「はい、日紫喜様はブルーベリーが好物とのことでしたので、是非とも、いいものをご提供できればと思い取り寄せました」
「すごいね、わざわざそんなことまでしてくれたのかい、ありがとう、美味しいよ」
「勿体ないお言葉」
そんな二人の会話をみていた、リーンが驚愕の顔をしている。
「どうしたの? リーン」
わたしが聞くと答えてくれる。
「だって、あかりん! 『あの』メガネくんがお礼をいってるよ! 『あの』メガネくんが! 人を煽ること以外できたんだね」
「それは、煽ってるのかい?」
リーンの言葉にレータはメガネをクイッとあげて眉間に青筋を立てながらいう。
「ねえ、イブキくんだっけ? あなたは何歳なの?」
「16でございます」
「ええ!? ということは『同い年』!?」
わたしはイブキくんが同い年という事実に驚く。
「え? じゃあ、学校は?」
リーンも驚きながらも疑問に思い聞く。
「いえ、通っておりません。 私めには必要ないことでございます。 なぜなら、フウムお嬢様に仕えるという大切な役目がございますから」
イブキくんの言葉からすごい熱意を感じた。
「ワタクシも通うように云ったのですが、この通り彼の意志は固いようで」
フラウムはすこしため息交じりにいうとイブキくんの方を向く。
「何度もいっていると思いますが、貴方もまだ未成年なので好きなことをしてもいいんですのよ? ワタクシにばかり気を向けて頂かなくても、もっと青春を謳歌したらどうですの?」
フラウムはすこし心配しているような言い方だった。
「いえ、私如きがそんな大それたこと、私はお嬢様に恩を一生掛けて返すつもりでございます」
「…………」
イブキくんの忠誠の言葉にフラウムは複雑な顔をしていたけど、なにもいわなかった。 わたしたちもそれをみてなにもいえなかった。
ふと、クロロンをみると、わたしたちとはすこし違う表情を浮かべている気がした。
クロロンはイブキくんのことをみて、なんだかフシギな表情をしていた。 うまくいえないけど、すこし哀しそうな? なにか言いたそうな顔をしていた。
だけど、何事もなかったようにコーヒーゼリーを食べると幸せそうな顔を浮かべる。
「そうだ、話変わっちゃうけど、フウちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんですの?」
リーンはなにかを思いついたのかフラウムにあることをいう。
「メイドさんの格好って出来たりするかな?」
「メイドさんですか?」
フラウムは首を傾げながら返すと、リーンはすこし恥ずかしそうにいう。
「うん、実はフウちゃんの家にきてからメイドさんの格好が気になってて」
リーンは「あはは」といいながら頬をかく。
「もし、ダメなら全然大丈夫だけど」
「わたしもメイドさんの服きてみたい!」
遠慮しがちにいうリーンだけどわたしはリーンの言葉が魅力的過ぎて勢いよくいってしまう。
「あ、ごめん、あまり遊びでそういうことしちゃだめだよね」
わたしもハッとなり謝る。
「いえ、多分ですが、問題ないと思いますわ」
すこし考える仕草をしたけど大丈夫みたいだ。
「一応確認を取ってきますわ」
「私にお任せ下さい」
席を立って行こうとするフラウムにイブキくんがいうとすぐに部屋の外に出て行った。 数分後、戻ってきた彼は大丈夫だとの報告をしてくれる。
「あの……確認して戻ってきたところ大変申し訳ないんですけど、執事さんの方もできたりするかな?」
クロロンが申し訳なさそうに聞くとすぐに答えてくれる。
「そちらでしたら、私が許可を出せますので、問題ございません」
「ほんと! やった!」
クロロンはうれしそうに喜ぶ。
「では、用意を済ませてありますので、ご案内致します」
わたしたちはイブキくんの案内で別々の更衣室へ案内された。
「ねえ、フウちゃんの家に遊びに行ってもいい?」
「?」
その言葉にわたしを含めたみんながリーンの方をみる。
「ワタクシの家ですか?」
フラウムが首を傾げながら聞き返すとリーンは「うん」といい言葉を続ける。
「そういえば、フウちゃんのお家に遊びに行ったことなかったなーと思って」
「わたしもいったことないよ」
わたしも会話に参加する。
「もしかして、ダメだった?」
「いえ、ダメという訳ではないのですが、ワタクシの家、というよりは『屋敷』は『山の上』にありますが、いいんですの?」
「屋敷!?」
「山の上!?」
フラウムの言葉にわたしとリーンは驚く。
「もし、来るのでしたら『今日は』迎えを呼ばないといけませんわね」
「『今日は』っていつもはどうやって帰ってるの!?」
「歩いてですが」
「歩いて!?」
当たり前のようにいうフラウムにわたしたちは驚くばっかりだった。
「まあ、トレーニングを兼ねて歩いて、または、走って帰ってるだけですがね」
「すごいね、わたしだったら絶対お迎え頼んじゃうよ」
「さすが、脳筋お嬢様、日常生活も筋肉臭いね」
わたしたちの会話にレータが入ってきた。
「なんですの、クソメガネ、お呼びじゃねぇですわ」
「ふん、キミの脳筋エピソードに苦言を呈したまでさ」
「貴方にそんなこと言われる筋合いはないのですが?」
「レータくんはたぶん、きのせさんのことを心配してくれてるんだよ」
喧嘩をはじめそうだった二人の後ろからクロロンがひょこっと現れる。 その隣にシアンもいた。
「きのせさん努力家だからむりをしてないかって心配してくれてるんだと思うよ」
「クウタ、それはキミの思っていることであって、僕はそんなこと一ミリも思ってないよ」
「そうなの?」
レータの返しにクロロンはフシギそうに首を傾げる。
「で、どうしますの? アカリさんとハヅキさんは来るとして、クソメガネと緑風さん、それに天海さんも来ますか?」
「え? ぼくもいってもいいの?」
「ええ、もちろんですわ」
「まあ、キミの屋敷とやらは気になっていたからね。 僕も同行させてもらおうかな」
「ホント、メガネくんの言い方、なんかムカつくね」
「同感ですわ」
わたしたちは学校を出ると、フラウムが家に連絡を取るとのことですこし離れて電話をしにいった。
しばらくすると、戻ってきて、すこし離れた場所に迎えがきてくれるとのことでその場所にむかった。
「ここならあまり人目を気にしなくていいですわね」
待ち合わせ場所に着くとフラウムがそういう。
「ひとめ?」
わたしが疑問に思い聞くと説明してくれる。
「自分でいうのもなんですが、ワタクシは貴族なのでお迎えなんてものを頼んだら目立ってしまいますわ。 なので、できるだけ人目につかない場所に来てもらうようにお願いしたんですの」
確かにわたしたちが今いるこの場所は人通りの少ない場所だった。
「ふん、もしかして、キミが誘拐されないかと家の人は心配しているんだろうけど、キミなんかを誘拐するバカはこの世に存在しないと思うけどね。 もし、そんなことをしようものならお尻が粉々になるからね」
「まあ、メガネの云う通り、そんな輩がいたらお尻の骨を粉微塵にしますけど、ワタクシが心配しているのはですね。 そんなことでは、ないんですの」
「?」
わたしたちがフラウムの言葉に頭にハテナを浮かべていると、こちらにむかってくるなにかに気がつく。
「……『あれ』できたんですのね…全く…目立たないようにと伝えたのに…」
その乗り物の姿を確認するとフラウムはため息をつく。
「…………」
わたしたちはその乗り物をみて唖然としていた。 その乗り物、たぶん『車』なんだろうけど、その車は、黄金に輝いていてめちゃくちゃ長かったのだ。
「え!? まぶしっ!? ていうか、ながっ!?」
わたしたちの言葉をリーンが代弁してくれた。
「お待たせ致しました。 『フウムお嬢様』」
車の中から黒い執事服をきたおじいさんが出てくると、ザ・執事といった感じにお辞儀すると後ろのドアを開ける。
「翼瀬さん、あまり目立たないようにとお願いしたはずですわよね」
フラウムはおじいさんに歩みよるとため息交じりにいう。
「ご友人のお迎えとのことでしたので、最大のおもてなしで迎えろと旦那様の命でございまして」
「お父様から?」
「はい、はじめは自家用ジェット機、または、ヘリで迎えろとのことでしたが、お嬢様の有無を伝えたところ、このリムジンを使えとのことで」
「……分かりました、翼瀬さんなりに気を回してくれたんですのね。 ありがとうございます」
「いえいえ、勿体無いお言葉」
執事のおじいさんは深く頭を下げると、わたしたちに眼をむける。
「お初にお目にかかります。私、フウムお嬢様の執事をさせていただいております。 翼瀬昴と申します」
スバセさんはわたしたちにも深々と挨拶をする。
「は、はい、みどりかぜくうたです! こちらこそ、よろしくお願いします」
「いろのあかりです! よろしくお願いします」
クロロンが律儀に挨拶を返したので、わたしたちも挨拶をしていく。
「ほほう、貴方が緑風様と色野様でございますか、お嬢様からよくお話を伺っております」
「え?」
スバセさんの言葉にわたしとクロロンは頭にハテナを浮かべながら、お互いをみる。
「その話はいいので、とりあえず行きますわよ」
フラウムは話を遮る様にいうと、車の中に入っていく。
「さあ、皆さんもどうぞ」
「うん」
フラウムにいわれ、わたしたちは車の中に入る。
「ええー!? すごいー!! なにこれ!?」
「ながい! ながいよ!!」
車に入った瞬間、わたしとクロロンは目を輝かす。
「ながい! でかい! ひろいよ!!」
「ロング! ビック! フッドだね!!」
「最後違う」
レータがなぜかつっこむけど、それが耳に入らないくらい、わたしとクロロンは興奮していた。
「はっ! ……乗車料金いくらかな……ぼく、今、709円しかもってないよ……」
クロロンは正気に戻ると、お金をもっていないことに気づき青ざめる。
「大丈夫ですわ、たかが送り迎えでお金なんて取りませんわよ」
「よかった、ありがとう」
「こんなすごいのに乗れるなんて夢みたいだよ」
リーンも興奮していたのかうれしそうにいう。
「まあ、お気持ちはわかりますが、出発しますので、安全の為に座ってください」
興奮するわたしたちにフラウムは慣れたように席に座りいう。
「貴族だって分かってはいたが、改めて認識したよ。 普段のキミからはお上品さがあまり感じられないからね」
「ちょっと! メガネくん、黙っていたと思ったのにやっぱり出てくる言葉は失礼だね」
「まあ、いいですわよ。 メガネの云う通りですから」
「そんなことないよ! フウちゃん」
リーンはフォローをいれる。
その後、車は出発してフラウムの屋敷にむけて走りだした。
「すごい! まるで動く部屋だね」
「きっと、変形するよ! ボタンはどこかな!」
「さすがにその機能はありませんわ」
興奮し続けるわたしとクロロンをフラウムがなだめる。
「キミ達、そんなバカみたいなこといって恥ずかしくないのかい? 庶民がばれるよ」
「……そういうメガネも落ち着きない」
「なっ!? 久々に喋ったと思ったらなんだい? 僕のどこが落ち着きないって?」
「……本読むフリして、さっきからチラチラ覗いてる」
「うっ!? なんで、そんなとこみてるんだよ……」
「……おもしろかったから」
シアンの言葉にレータはたじたじになる。
「すごいけど、ちょっと、外の視線が気になるね」
「え?」
リーンにいわれ、外をみると車が通り過ぎていくのを驚いてみている人がたくさんいた。
「正直、ワタクシもこの視線が嫌なので、避けていたのですが、今日は仕方ありませんわ」
「ごめんね、フウちゃん」
「いえ、大切な友人を招くのでこのくらいのおもてなしがあってもいいかなと思っているので大丈夫ですわ」
謝るリーンをフラウムはフォローする。
しばらく、走り続けて車が山に入った。 そして、数分後、山の上に大きな屋敷がみえてきた。
「すごい! もしかして、もしかしなくても、あれがフラウムの屋敷?」
「ええ、そうですわ」
「ここまで、かなり距離があったけど、本当にこの距離を歩いてきてるの!?」
「まあ、走れば20分程ですわね」
「いや、この距離を20分ってホントキミの体力はバカげてるね!?」
フラウムの言葉にレータは驚きを隠せずにいう。
屋敷の前に車が止まると、スバセさんがドアを開けてくれた。
「お疲れ様です。 こちらが黄瀬屋敷となります」
わたしたちは車からおり、屋敷を見上げる。
その屋敷はまるで物語で出てくるような大きな屋敷というかお城にもみえた。
「うえー! すごい!!」
「凄すぎて、笑いがとまらないね……」
レータはあまりのすごさに苦笑いしていた。
「ここで立ち話はあれですので、中に入りますわよ」
フラウムについていき、屋敷のドアを開けるとたくさんの人が列をつくって出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お嬢様。ようこそお越しいただきました、ご友人の皆様」
たくさんの執事さんとメイドさんがお辞儀をしてわたしたちに挨拶をしてくれる。
「お、おじゃまします! ……で、あってるのかな?」
クロロンは挨拶をするけど、不安な顔でこっちをみる。
「たぶん、あってるとおもうよ! …………お、おじゃまします!!」
「めちゃくちゃ勢いまかせじゃないか……」
わたしも不安になっちゃってレータにつっこまれる。
「皆さん、おもてなしはありがたいですが、友人達が困惑してしまいますので、仕事に戻ってもらっていいですわ。わざわざありがとうございます」
フラウムの言葉にみんなは笑顔で会釈を返すと「ごゆっくりしていってください」と一言、言い残して去っていった。
「驚かせて申し訳ありませんわ」
「お帰りなさいませ、お嬢様」
フラウムがわたしたちにいうと、一人の男の子が声をかけてきた。
その男の子は執事のカッコウをしていたけど、わたしたちと同じ歳ぐらいにみえた。
「ただいま、イブキ」
フラウムはその男の子に優しくいうと、わたしたちに目をむける。
「ちょうどいいですわ、イブキ、自己紹介をしてみてはどうですか」
「私めがですか?」
フラウムの言葉に驚きながらもイブキくんと呼ばれた子は自己紹介をしてくれる。
「では、誠に勝手ながら失礼します。 私は『黄瀬伊吹』と申します。 フウムお嬢様の専属の執事をさせていただいております。 お嬢様のご友人にお会いできるのを心よりお待ちしておりました」
ビシッとした自己紹介を終えるとイブキくんはフラウムの方をみる。
「『黄瀬』ってキミの兄弟かなにかかい?」
苗字が気になったのかレータがきく。
「いえ、私は幸運ながら、偉大な家名を頂けた、名も無き小市民でございます。 私如きには大変勿体ないものでございます」
「いただけた?」
わたしが聞き返すと、フラウムがイブキくんの方をみて確認するとイブキくんが答えてくれる。
「私は、お嬢様に『拾われた身』でございます。 そして、この名前もお嬢様から頂いたものでございます」
「!?」
その言葉にわたしたちは驚く。
「まあ、詳しく話すと長くなってしまうので、要約すると彼は複雑な事情で『捨てられて』しまい、我が家で引き取ることにしたんですの」
「そんなことが……」
フラウムの言葉にリーンは驚愕していた。
「ここではなんですので、客室に案内しますわ。 イブキ、お願いできますか?」
「はい、お任せください」
イブキくんの案内でわたしたちは客室に案内された。
「わー! すごい!」
客室に入ったわたしが感嘆の声を上げる。
「テレビでかっ! 机ながっ! 部屋ひろっ!」
リーンも語彙力が下がっちゃうくらい驚いている。
「すごい! すごいよ! まるで豪邸だね!」
「豪邸だぞ」
興奮するクロロンにレータはつっこむ。
「あれ? みっくん、どうしたの?」
机の前でなにかをみつめるシアンに気づく。
クロロンと一緒にシアンのもとにいく。
「……ねえ、これ食べていいのか?」
シアンは振り返るとフラウムに聞く。めずらしく少しウキウキしている。
シアンのみていたモノは机に置かれた、水饅頭だった。 それ以外にも、たくさんのデザートが並んでいる。
「うええ!? コーヒーゼリーだ!」
クロロンも大好きなコーヒーゼリーをみつけ、目を輝やかせる。
「ええ、もちろんいいですわよ。 なにせ、皆さんの好きなモノをピックアップしてありますから」
フラウムは胸を張るようにいう。
「ほんと! ありがとう、きのせさん」
クロロンはお礼をいうと、跳ねるようにコーヒーゼリーを手に取り席につく。 わたしも大好きないちご大福をみつける。 それに続き、みんなも席につく。
「このブルーベリーは、どこ産だい? すごい、まろやかな甘みがするね」
「どこ産かは、わかりませんが、確かに美味しいですわね」
「そちらは、『ラベン』から取り寄せたモノとなっております」
イブキくんが答えてくれる。
「ラベンか、確かそこってブルーベリーの生産量が一位のところだね」
「はい、日紫喜様はブルーベリーが好物とのことでしたので、是非とも、いいものをご提供できればと思い取り寄せました」
「すごいね、わざわざそんなことまでしてくれたのかい、ありがとう、美味しいよ」
「勿体ないお言葉」
そんな二人の会話をみていた、リーンが驚愕の顔をしている。
「どうしたの? リーン」
わたしが聞くと答えてくれる。
「だって、あかりん! 『あの』メガネくんがお礼をいってるよ! 『あの』メガネくんが! 人を煽ること以外できたんだね」
「それは、煽ってるのかい?」
リーンの言葉にレータはメガネをクイッとあげて眉間に青筋を立てながらいう。
「ねえ、イブキくんだっけ? あなたは何歳なの?」
「16でございます」
「ええ!? ということは『同い年』!?」
わたしはイブキくんが同い年という事実に驚く。
「え? じゃあ、学校は?」
リーンも驚きながらも疑問に思い聞く。
「いえ、通っておりません。 私めには必要ないことでございます。 なぜなら、フウムお嬢様に仕えるという大切な役目がございますから」
イブキくんの言葉からすごい熱意を感じた。
「ワタクシも通うように云ったのですが、この通り彼の意志は固いようで」
フラウムはすこしため息交じりにいうとイブキくんの方を向く。
「何度もいっていると思いますが、貴方もまだ未成年なので好きなことをしてもいいんですのよ? ワタクシにばかり気を向けて頂かなくても、もっと青春を謳歌したらどうですの?」
フラウムはすこし心配しているような言い方だった。
「いえ、私如きがそんな大それたこと、私はお嬢様に恩を一生掛けて返すつもりでございます」
「…………」
イブキくんの忠誠の言葉にフラウムは複雑な顔をしていたけど、なにもいわなかった。 わたしたちもそれをみてなにもいえなかった。
ふと、クロロンをみると、わたしたちとはすこし違う表情を浮かべている気がした。
クロロンはイブキくんのことをみて、なんだかフシギな表情をしていた。 うまくいえないけど、すこし哀しそうな? なにか言いたそうな顔をしていた。
だけど、何事もなかったようにコーヒーゼリーを食べると幸せそうな顔を浮かべる。
「そうだ、話変わっちゃうけど、フウちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「はい、なんですの?」
リーンはなにかを思いついたのかフラウムにあることをいう。
「メイドさんの格好って出来たりするかな?」
「メイドさんですか?」
フラウムは首を傾げながら返すと、リーンはすこし恥ずかしそうにいう。
「うん、実はフウちゃんの家にきてからメイドさんの格好が気になってて」
リーンは「あはは」といいながら頬をかく。
「もし、ダメなら全然大丈夫だけど」
「わたしもメイドさんの服きてみたい!」
遠慮しがちにいうリーンだけどわたしはリーンの言葉が魅力的過ぎて勢いよくいってしまう。
「あ、ごめん、あまり遊びでそういうことしちゃだめだよね」
わたしもハッとなり謝る。
「いえ、多分ですが、問題ないと思いますわ」
すこし考える仕草をしたけど大丈夫みたいだ。
「一応確認を取ってきますわ」
「私にお任せ下さい」
席を立って行こうとするフラウムにイブキくんがいうとすぐに部屋の外に出て行った。 数分後、戻ってきた彼は大丈夫だとの報告をしてくれる。
「あの……確認して戻ってきたところ大変申し訳ないんですけど、執事さんの方もできたりするかな?」
クロロンが申し訳なさそうに聞くとすぐに答えてくれる。
「そちらでしたら、私が許可を出せますので、問題ございません」
「ほんと! やった!」
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