下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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新たなる出会い

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「ねえ、もう一緒に住んでるし、今更じゃない?」

「ただ恥ずかしいだけですよ?」

「そうなの。商店街では前から夫婦って言われてきたから、今更って思われるのもねぇって話してたの」

「気にしないんじゃない?返って僕が恥ずかしくなるよ?」

「雪翔……その話は雪翔からしてくれませんかねぇ?その、那智とか……」

「分かった。金と銀を使いに出せばいいんだよね?」

「もうそこまで?」

「お手伝いは部屋でしてくれてるから、出来ないかなぁ?」

「匂いがわかってるから出来ると思いますよ?金・銀!」

「はい?」

「結婚したとだけ伝えて来てください……」

「他は?」

「それだけです!ほら行ってきておくれ」

後でお駄賃頂戴ねと言い残し二匹が行ってしまったので、みんなが帰ってくるまで森に行ってくると言って出掛ける。

「しーちゃん、本持ってて」

「はい!」

「えっと五芒星を描いて気を送り……その後なんて読むのかな?飛ばしていいのかなぁ?それを続ける。毎日欠かさず続けて初めて小さな気の塊が二つできる」

書かれた図に合わせて気を送るイメージで毎日続けているが、その部分が暖かくなる程度で変化はない。

「しーちゃん、みんなの中でこれ読めそうな人知らない?あ、でもダメ!結婚式までに自分でしたいんだ。しーちゃんもナイショだよ?」

「はいー。黙ってます」

「この間の文字……見たことあるような気もするんだけどなぁ」

その後も一時間ほど続け、木にまた明日ねと声をかけて戻る。

「ごめん、もうご飯炊いちゃった?」

「ええ、でも、今日は三人分だから楽よ?」

「隆弘さんがバイトかぁ」

「裏の畑、移してきたでしょ?ちゃんと育ってるか見てきてくれない?」

「水やりもしてくるね」

畑に行くとちゃんと育っており、少しだが新しく芽が出ていた。

「フキューッ」

「何……猫?」

「違います……匂いが狐です!紫狐が見ます」

しーちゃんが裏側に回ったので反対から覗くと、真っ白で小さな猫……狐が蹲っていた。

「しーちゃん、その子弱ってるの?」

「紫狐達とは違って金たちと同じ匂いがしますけど」

「冬弥さんに見せよう……」

膝に乗せて落ちないようにしているが、かなり震えている。裏にいたと説明して、せめて元気になるまでお世話したいとお願いする。

「親の匂いがないですねぇ。だいぶ時間が経ってると思いますよ。ここの野菜を食べに来たんですかねぇ?」

「ダメ?僕面倒みるから」

「下宿だとバレたら困るので、家に連れていってください。ミルクでもいいと思いますけど、温めて、人肌になってから飲ませてくださいね」

「うん、ありがとう!」

抱っこして家まで行き、ダンボールがあったと組み立てて、中にバスタオルを入れる。それでも震えているので寒いのかな?と思い暖房をつける。

暖炉の形をした暖房器具だが、臭いが少ないのでちょうどいいかもしれない。

温めたミルクを言われた通りの温度にして飲ませようとするも、プイっと横を向いてしまう。

「しーちゃーん。狐の子ってどうやって育つの?」

「し、紫狐は産んだことがないから……母から乳をもらうんだと……」

「そうか!ちょっと待っててね!」

綺麗なスポンジを水で洗って、ミルクを浸し手で口元に持っていくと、チューチューと吸っていたのでそれを繰り返す。

「やった!飲んでくれたよぉ。しーちゃんありがとう!」

「あー!ミルクだ!」

「金銀おかえり。飲む?」

「もうミルクは卒業しました!」

「君たちはこうやって飲んでたの?」

「覚えてないので……」

「でも確か、赤ちゃんはそう飲むって。最初の僕達くらいになると、色々と食べ始めるから水とか木ノ実とか」

「そうなんだ。この狐どう思う?」

「金は、分からないけど……優しい感じがする」

「銀も。この狐女の子だよ?」

「そうなの?」

最近は、俺とかおいらとか言わずに、しーちゃんの真似をして自分たちの名を呼んでいる。
まさかメスだとは思わずに世話していたが、おトイレはどうしたらいいのだろう?
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