下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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新たなる出会い

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「凄い……ここから手縫いで作るんだよね」と栞の母に聞くと、お婆ちゃんでいいわと言われ照れてしまう。

「お婆ちゃん……」

「やだ、照れるわねぇ」

「は?」

「羨ましかったのよ?冬弥さんの家族が楽しそうで。うちにも遠慮なく遊びに来てね!そうだ、雪翔君にも着物作ってあげましょうか?」

「でも、僕歩けないし」

「関係無いわよ!何色が好き?」

「み、緑色とか」

「若いからねぇ……柄物もいいわよねぇ」

「何しとるんだ」

「あら、お父さん。雪翔君に着物をと思ってね」

「緑か……ならばこの若草色はどうじゃ?」

「老けて見えません?もっと薄い色は?」

「ならこれは……」

そう言って二人で反物を合わせてくる。

「雪翔よ、わしの事は爺さんでいい。栞の子だからの。それよりほれ、好きなのを言うてみぃ」

「この、淡い緑とか好きです」

「おお、これなら薄く柄もあるしいいかもな。羽織はこの藍色のはどうじゃ?」

「今は白地が流行ってるんですよ?でもこれに白はねぇ」

「その白に近い緑のはダメですか?」

「ふむ、肩が白くて下に段々と濃くしていくか。よし、縫ったら着物に合わせて染抜きにしよう。式までに間に合わせるから待っておれ」

「ありがとうございます」

「良い良い、後は足袋と草履じゃな」

細かいものをいくつか合わせてもらい、やっと決まったところで、帰るぞーと御機嫌のおじいちゃんが顔を覗かせた。

「何じゃ?着物か?」

「ええ、雪翔君に」

「良かったな!それなら儂の羽織もひとつ頼む。色はいつもとよく似たのでいい」

「ならこの生地は?」

「もう少し濃いと有難い。ほかの着物にも合わせやすいからのう、ここでみんな作っておるから、適当に合わせてくれ」

「分かったよ」

「じゃあ、式でな!」

その後はいくつか挨拶に行き、籍だけ入れるというのでついて行く。

「前より賑やかだね」

「そうですねぇ、なにか芝居でも来てるのかも知れませんねぇ」

「でもこの通りには芝居小屋はないですよ?」

「気になりますが、役場に行きましょう」

役所につき、必要なことを書いて終わり。その書類を城に出さないといけないと、京弥さんを呼んで送ってもらう手続きをする。

「おめでとう」

「ありがとうございます。城にはいつ届きます?」

「明日には。天狐からと印が有るから優先される。浮遊城には行かないのか?」

「みんなで行こうと思いまして申請中です」

「それは楽しみだ!で?あちらでは新婚旅行とか言うものがあるんだろう?」

「そうみたいですが、下宿の子に聞いてからにします」

「その間雪翔はこっちに遊びに来るといいよ。決まったら知らせてくれ」

その後は時間も時間だったので下宿まで冬弥の力で飛んでもらい、市役所に婚姻届を出す。既に養子になっていたので、出すだけで済んだが、何故か二人はみんなにどう言おうかと悩んでいるようだった。
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