下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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翌朝はご飯を食べてから二人を送りに神社へと行く。

「雪翔、いい子で待ってるんですよ?」

「そんなに子供じゃないもん」

「薬とリハビリの運動忘れちゃダメよ?」

「大丈夫だから楽しんできてよ」

みんなに見送られ人の世界……人間界へと向かった二人の後には四人の祖父母と京弥夫妻、周太郎が残った。

「さて、帰るとしようかの」

「僕、もう少し神社の周り散歩してから帰る」

「じゃあ、お昼にうちに来なさい。一緒にお昼でも食べよう」

いい?と祖父を見るとニコニコと笑っているので、お昼前に行くと伝え、いつものように周太郎が残りみんなが帰ったあとに、誰にも言わないでね?と彫り物の道具一式と、簪を出す。

「この形は櫛ですね。形によって言い方など変わりますが、御館様の年齢の方ですと一括りに簪と呼ばれる方が多いです」

「そうなんだ。これお婆ちゃんへの贈り物だから家で出来なくって……」

「大丈夫です。言いません。毎年私たち使用人からも贈り物を渡しているのですが、今年は女衆が張り切ってましたので私はまだ知らないんです」

「お祝いとかするんでしょ?」

盛大にしますと聞いてまた楽しみが増えた。

カリカリと集中して彫っている間、周太郎には暇をさせてしまうと思い、ひーちゃんと金と銀を出して紫狐と一緒に遊んでいてもらう。

「ンギューゥ!!!」

「何?今の声……」

「ひーちゃんメッなのです!ゆっきーは今大切なお仕事してるから遊べませんー!」

「ンギュー!!!」

「はいはい。もう少し待っててね……それ怒った声なんだ。初めて聞いたよ」

「坊ちゃん、この狐たちは……」

「金と銀は冬弥さんから。翡翠は僕が拾ったの」

「あちらにも居るんですね」

「狐?」

「我々でもなかなか出会えません。私で影が四匹です。それでも使用人の中では多い方なのと、この体格なので護衛を任されることが多いですが、この狐は……我々の影と違いますよね……?」

「そうみたい。僕もまだ詳しくわからないんだけど、式神がどうのこうの難しくて」

「陰陽道ですか?」

「陰陽道?陰陽師じゃなくて?」

「言い方の違いだけだと聞いてますが、それだとこの翡翠様、金と銀様はかなり徳の高い方かと」

「様はいらないって。まだ小さいからどんな力があるのかもわからないんだ。僕も色々調べてるんだけど……何か知ってる?」

「そういったものがあるとだけしか……悪狐や野狐などは退治されるとも聞いたことがあるくらいで他は……」

「星占いとかもするみたいだよ?」

「星読みですか。星でしたら夜はここからの眺めは良く見えて綺麗ですよ」

「それは夏にしておくよ。今は寒いんだもん……と。これで粗方削れたかな。細かいところは帰ってからして……うん、間に合いそう!」

「これはまた見事な」

「まだ大まかに削っただけだよ。ここから細かくなるから机がやっぱりいるかな」

「部屋でされるのが一番でしょう」

「昼寝って言って彫ろうかなって思ってるんだけど」

「何かありましたら呼んでください。前にも言いましたが耳だけは良いので」

「鼻もでしょ?」

「そうです。そろそろ行きましょうか」

無理やり翡翠を影に戻し、呉服問屋の前までくる。
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