下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
26 / 99
七泊八日

.

元々、出来にくく流れやすく諦めていたと言う。初孫になるから、喜びもひとしおだろう。

「初孫は雪翔じゃよ?」

「お爺ちゃん……でも僕は血が」

「それは関係ない。腹の子より早くうちの孫になったんじゃ。この子は二人目の孫。無事生まれるよう、幸は何もするでない!寝ておれ」

「病気じゃないんですから。それに多少に運動は必要ですよ?」

「京弥、やっとできた子じゃぞ?」

「だから元気に生まれてくるためにですねぇ……」

「こう言ったことは女に任せておいてください。無事生まれるなら六月辺りかしらねぇ」

「明日病院に行ってきます」

「二つ祝いができたの。明日は宴の用意じゃ!」

御機嫌になったのかかなりの酒を親子で飲んでいたので、食事が終わってから風呂に入り部屋に戻って彫り物の続きをする。

「ゆっきー、幸さんなのですが」

「幸さん?」

「実は……もう何度もややが……」

「うん、聞いてる。だから言えなかったんだね」

「だと思います。それに男子ならばその子が次の後継となるのです」

「普通そうでしょ?だって僕、次男の子だから長男の子が継ぐのは普通だよ?」

「紫狐はゆっきーが気にしてるのではないかと……」

「何も気にしてないから大丈夫だよ?それに、僕はみんなと寿命が違うから、冬弥さんと栞さんに子ができたら、その子が継ぐのが良いと思ってるし」

「ゆっきーは寂しくないですか?」

「どうして?」

「血の繋がりのある子はやはり扱いが違うかと……紫狐はそれも心配で」

「気にしすぎだって。もう少し彫ったら薬飲んで寝るから、しーちゃんももう気にしないで?」

「はいー」

そう言いながら寝巻きに着替えている紫狐は、帽子で耳まですっぽりと隠し、影に戻って行った。

コンコン__

「坊ちゃん」

「どうぞー」

「失礼します。坊ちゃん、使用人からこれを坊ちゃんにと」

「あ!カフェオレ?」

「コーヒーと言うものに牛の乳を。本の通りにですが」

「ありがとう」と一口飲むと、甘さもちょうど良く向こうと変わり無かった。

「みんな勉強家だなぁ」

「奥様がご懐妊とか……」

「明日病院に行くって言ってたよ?」

「坊ちゃん__」

「まさか、みんな気にしすぎ!って伝えてくれる?誰に子ができても、僕は冬弥さんの養子の子。血の繋りが無いのは分かってるし、血の繋がった子が跡継げばいいと思ってるし。ってさっきもしーちゃんに言ったんだけど」

「私はずっと坊ちゃんについてますので」

「ありがとう。でも赤ちゃんも大きくなったら遊び相手がいるし、その時はちゃんと可愛がってあげてよ?」

「それは勿論ですが」

「うん、ならいいよ。あまり騒いでもさ、幸さんが気にするといけないから。それよりも、ヤスリとつや出しないかな?仕上げに使いたいんだけど」

「明日でいいですか?用意しておきますので」

「うん。かなり彫れたんだ。明日には出来るよ?」

「寝てますよね?」

「うん。柄が大きかったからだよ。複雑な柄とかたくさんしてきたからかな?コツがわかってきてるからだと思うんだけど」

「明日も神社へ?」

「ここでするよ。昼過ぎには出来ると思うんだけど、昼から買い物も行きたいんだ」

「ではそのように支度しておきます」

お休みと言ってから片付けをして布団に入り、出てきた翡翠をだっこして眠る。
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。