下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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「ムキュッ。あー」

「あー。って何?ほらこぼしてる!ぺっしちゃダメ!」

「めー!」

「めーじゃなくて……無くて、これ話してるのかな?」

「みたいですね。でも早すぎますよ?あと数ヶ月はと思っていたんですけどねぇ」

「めっ!」

「これ真似してるのかも。要らなくなるとぺってするの怒るから」

「では躾を……」

「待って待って!翡翠はまだ赤ちゃんだよ?それに理解してるかもわからないし」

「魚でもあげてみましょうか。そろそろ飲み込めるでしょうし」

ペッ!

「あー!もう!」

「まだ柔らかくした方がいいかもしれませんねぇ」

「この魚柔らかいのに?」

「もっと水分が多いほうが飲み込みやすいのかもしれません」

「だから出しちゃうんだ……でもペッはダメだよ?」

「ンキュッ!」

「はいはい。金たちはおにぎりでいいの?」

「魚入れてくれた。これでいい!」

「銀も!」

「食べすぎないでよ?」

「うん」

みんなが食べてるのを見て、もっとくれと膝をよじ登ってくる翡翠を下におろし、ペッするからダメ!と言うと「キューキュー」と泣き出してうるさくなったので、ごめんねと影に戻す。

「僕、ものすごく意地悪してるみたい……」

「それでいいんです。続けていたら、何が良くて何がダメなのか分かってくるでしょう。だから意地悪ではないです」

その後、京弥が帰宅したのでまたお膳が増え朝食をとってもらい、女中頭は途中で席を立って粥を幸に持っていくと出ていった。

「京弥さん、どうなったの?」

「牢に入れてあります。雪翔の言っていたことがおおよそ当たってました。お手柄です」撫で撫で撫で撫で……

「やっぱり僕禿げちゃう……」

「禿げないです。みんなに言われるでしょう?それと街の見回りを強化したのでお祭りも例年通り行いますから、一族の誰かと周太郎は必ず連れて行くように」

「行ってもいいの?」

「いいですよ?ただ本当に混み合うので、必ず誰かと一緒に……」「兄上?私の事忘れてませんか?」

言い合いをしている訳では無いが、兄弟で自分の車椅子を押すのはどっちだと言っているので、お茶を飲みながらやり取りを見ていると、みんなが急に立ち上がり練習でもしていたようにお膳を片付け始める。

「みんなが帰ってきたようですねぇ」

「やっぱり怒られるの?」

「それは無いんですけど、昔、ここで酒盛りをしていて怒られたことはありますから、みんなもう癖づいてるんですよ」

「たまにはいいんじゃない?」

「いいですよ?そこに私たちがいなければ」

「居たんだ……」

「兄上も居ましたよねぇ?」

「居たねぇ。あの時は父上の酒を飲んだから怒られたんだと思ってるよ?北の銘酒だったと思ったけど。あの後売ってなくて探すのが大変だったよ」

「それも樽でしたしねぇ……」

怒られるのは当然だと思い、大人しい京弥まで参加していたことにも驚き、頭には祖父の怒り顔が浮かぶ。

「お、お祭りって冬弥さんは社に行くから来れないんじゃ……」

「あ……」

「な?だから一族と周太郎でいいだろ?」

「はい……ただし、姿を現して二人付けてください。押すのは周太郎で構いませんが、本当は四方を囲んでほしいくらいです……」

「みんなにつけて屋敷にも残さないといけないから、二人でいいだろう?」

「ええ、後ですね……この年末年始の時には影も揃えておかないといけないんです。なので紫狐も連れて行きますが……」

「うん」

「元旦が終わるまで社を離れられないので迎えにこれないのですけど……」

「大丈夫だよ?」

「いい子にしててくださいよ?」

「子供じゃないもん」

「まだまだ子供です。私と栞さんは明日の夕方にはあちらに行かないといけません。必ず周太郎を側に!ですよ?」

「冬弥……お前しつこいな?」

「可愛いわが子ですからねぇ」

撫で撫で撫で撫で……
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