下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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「あー。行っちゃった……」

「寂しいですか?」

「周太郎さん。そんなことないって言ったら嘘になるけど、やっと会えたのになかなか一緒にいられないから……でもそれは僕のわがままだよね。帰ろっか!」

周太郎の前に一瞬姿は現せたが、二人共すぐに消えてしまい、近くにいるのだろうけど少し心細い。さっきまでたくさん話していたとは思えない位、いなくなるととても寂しく感じる。

「夕餉が済んで、朝起きたら祭りの始まりです。一番盛り上がるのが深夜なので、夕餉の時にでも御館様と行くところを決めてもいいと思いますよ?」

「うん、そうする」

何事もなく家につき、祖父母にチラシとかないのかと聞くと、一枚の紙が渡された。

第一部から三部まであり、一番盛り上がるのは二部の終から三部のはじめにかけての深夜。

だが、危険がないかと考えると深夜は外したいと祖父に言われる。

「栞さんの家のお爺ちゃん達も行くんでしょ?みんなでいてもダメなの?」

「家には何人かの一族と京弥、あと使用人数名残るだけじゃ。他は町人に紛れて儂等を守ってくれるが、危険が無いことを保証はできんのじゃよ。儂等は雪翔を危険な目に合わせたくないしのぅ」

「昴さんも来るって聞いたよ?」

「昴がか?」

何か考えているようだったが、分かったと二部から連れて行ってもらうこととなり、一族の二人に昴と周太郎がいればまずは安心じゃと言われ、お爺ちゃん達は?とつい聞いてしまう。

「儂等は狐がおるし、それなりの力もある。もしもじゃ、何かあれば一人ででも逃げるのじゃ。約束できるか?」

「……うん」

夕方前に着物を着ましょうと言われ祖母に着せてもらう。

どうしても立たなければいけなかったので、周太郎に支えてもらい着付けが終わった時には足がガクガクとしていた。

「よく似合ってるわよ。次は周太郎ね」

「いえ、私は……」

「せっかくのお祭りよ?ほら、これに着替えなさい。ほら脱いで脱いで……」

脱いだ周太郎の体には無数の傷があり、思わず目をそらしてしまいそうになる。見た感じかなり古い傷だと思うが、それは聞いてはいけないことだと言い聞かせ、着付けが終わるのを待つ。

濃紺の着物と羽織でいつも来ている茶色い着物とはまたイメージが全然違う。

「なんか、恰好いい」

「だって周太郎はまだ若いもの。これでも地味だわねぇ」

「周太郎さんいくつなの?」

「いくつか試験は受けさせてもらったので今は2尾ですが、100を超えたばかりです」

「100過ぎで2尾は凄いのよ?周太郎は勉強家だしねぇ。でも3尾からは実技もあるし、200を超えないと受けられないのよねぇ」

「優秀なんだ。それにすごい筋肉だよね?強そう」

「周太郎はね、何でもできるのよ?なのに習うだけならって辞めちゃうの。人を傷つけたくないからって。護身術と思って習わせたんだけど……」

「すいません。師範に勝ったらもういいかなって思ってしまって……」

「それでも毎朝鍛錬してるわよねぇ?」

「それは……」

「いいのよ?でも、自分の身を守ることも忘れちゃダメよ?」

「はい」

「じゃあ行きましょうか」

玄関に行くと昴が来ていて、よっ!と手を挙げている。

このまま栞の祖父母を迎えに行き祭りの会場まで行くと聞き、使用人達も休みだというのでどこか出会えるかな?と道を行く。

「お爺ちゃん、お婆ちゃん!」

外で待っていたので声をかけ、周太郎に押してもらって目の前まで行って、三郎に支えてもらって立つ。

「どうかな……?」

「おお、よく似合っておるな。やはり羽織はこの色でよかった」

「着物も丁度いいわね。帯も良い感じだわ」

「作ってくれてありがとう。金たちのまで……」

「良いのよ。みんなと合流していきましょうか」

車椅子に座り、だんだん混み合う中に入っていくと、見たこともないような家くらいの大きさの神輿が飾られている。

「凄いね……こんなに大きくちゃ持てないよね」

「これは祭りの中心に飾られておるものじゃ。ほれ、あの一番高いところに天狐様が来られる様になっておる」

じっと昴を見ると俺は乗らないと言われ、よく見ると御簾が掛けられている。

「あれじゃ見れないよ?」

「姿を隠すことがもうみんな慣れてるんだよ。俺も名前出されても構わないんだがな」

「まだ冬弥さんだけなの?」

「順次出すと言うのはどうも嘘みたいだな……」

「それ酷いよ!」

「俺もそう言った。今回の件もな、俺ともう一人は冬弥側だ。残り四人はかなり古株だから昔のしきたりに沿ってしか話ができないんだ」
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