下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
40 / 99
七泊八日

.

しおりを挟む
「本来は御館様の命でなければ姿は出せないのですが……」

「ごめんね。どこにも出られないから……」

「何かお聞きになりたい事でも?」

「二人の名前は教えてもらえないんだよね?」

「申し訳ございません。ですが祭りの際に町民としていくので、その際は三郎・四郎と呼んでいただければ」

「わかった」

今話しているのが三郎、無口な少し体の大きい方が四郎と覚え、この狐の世界の地図を出して、一つ指を指す。

「ここなんだけど、これこの世界の世界地図じゃないよね?なんか大陸に見えるんだけど」

「それならば四郎の方が分かるかと」

「はい……この妖街は、その名の通り狐以外にも妖が住んでおります。その地図は狐のエリアの地図となり、雪翔様の仰っている大陸とは橋で繋がっております」

「狐エリア?他にもあるの?例えば犬エリアとか?」

「いえ、兎の妖は主に薬などを作っており、離れた小島に住んでおります。そこから問屋が買い付けなどして売っております。他は地図に書いていないだけで大陸で繋がっており、狸の里などあります。後は大抵妖怪が縄張りを持って住んでおりますが、行くことはないので地図に載っていないのでしょう」

「妖怪ってどんなの?」

「雪翔様がご存知かわかりませんが、ろくろ首にぬらりひょん、小豆洗いに河童に朧車。天狗は森の中におりまして、そこに覚(さとり)なども居ります」

「なんで地図に書いてないのかな?」

「三郎……」

「それは天狐様が禁止とされたからです。交流がないわけでも、行ってはいけない決まりも無いのですが、場所によっては入らない方がいい所もありますので」

「お祭りには来るの?」

「来ます。朧車も空を飛んでいるか、その変で誰かを乗せたりと稼ぎ時ですし、祭りはこの狐エリアが一番大きな祭りを各地の中ではしますので」

「みんな仲良くすればいいのにね?」

「昔の話ですが、この妖怪の世界といえばわかりやすいでしょうか……かなり大きな戦がありました。その時に結ばれた協定が、各地に干渉をしないとなり、時を経てかなり規則はゆるくなりましたが、出入りの際はやはり行くのも戻るのも厳しくなっております」

「兎さんとは仲いいんだよね?」

「兎は中立の立場ですので。それに、島自体が薬草の宝庫で、誰も手出しはしません」

「僕も兎になりたいよ……あれもダメこれもダメじゃみんな仲良く出来ないもん」

それからは行ったことはあるのかと聞いて、四郎が行ったことが有るというのでどんな街だったかと聞いたりして時間を過ごし、夕方になり冬弥と栞が部屋に来た時に二人が居たことに驚いていたが、そろそろ行くというので、社まで行きたいとごねて連れていってもらう。

「雪翔君、あっちで帰ってくるの待ってるわね」

「うん、着物も持って帰っていい?」

「良いわよ。私も畳み方くらい知ってるから」

「紫狐は連れていきますが、その二人からは絶対に離れないでください。三郎と四郎でしょう?私も何度か会いましたが、一族の中でも一番若い二人です。後周太郎と行動は共にしてくださいよ?それと、怪我と……」

「怪我しないもん。大丈夫だよ、みんな居てくれるから」

撫で撫で……

「兄にも色々と頼んでありますし、祭りには昴さんも来てくれるそうです。仲良くしてください」

「うん。昴さんて親戚のおじさんみたいだよね……」

「そんな感じですねぇ。でも頼りになる人ですから」

「二人共そんなに心配しないで?僕も気をつけるから」

「分かりました。では三郎、四郎。雪翔を任せました」

「はっ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。 天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!? ほのぼの美味しいファンタジー。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 表紙・挿絵:深月くるみ様 イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。 ☆マークの話は挿絵入りです。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...