下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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手術

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回り道をしようにもそこには捕まるところはほとんどなく、この緩やかな坂を行く他にない。

少し休んでからまた歩き続け、休む。繰り返して行くとやっと半分ほど進めた所で、視界も悪くなり、濡れた前髪で前が見えない。
進まなくちゃ……家に帰らなきゃ……


____「おい!雪翔?」

「お前ら冬弥に連絡してこい。俺は雪翔を運ぶ。それに、人目があるから飛んでいくこともできない。早く呼んでこいよ」

「畏まりました」

「おい、しっかりしろ!ったくなんで誰も呼ばなかったんだよ」

「秋……彪さん?」

「捕まってろよ?俺はそんなに背がでかくないから……もうすぐ家だからな」

「車椅子……滑って。携帯も壊れて、歩いたんだけど」

「いいから。よし、家だ!冬弥ー?栞さーん?」

「あ、今日は居ないかも……」

「ちょっとここに座ってくれ、鍵あるか?」

鞄から鍵をだして渡すと、玄関の中にいれてくれ、服を脱がされてバスタオルで巻かれ暖炉の前に座らされる。

「遅くなりました!雪翔は?」

「遅い!」

「栞さんに任せようと思ったのですが、私のほうが早く帰れそうだったのでこれでも急いで……」

「今暖炉のところにいる。風呂沸かしてるからつれてきてくれよ」

「分かりました」

バタバタと音がし、「冬弥さん?」と聞くと何があったのか聞かれる。

帰り道の話をし、狐に車椅子を取りに行かせたのか、なぜみんなを出さなかったのか聞かれる。

「呼んだんだけど誰も出てこなくて。だからフェンスに掴まりながら半分ぐらい頑張ったんだけど」

「分かりました。とにかくお風呂で暖まりましょう」

冬弥に担がれて湯船につけられ、足をマッサージされる。

「寒いですか?」

「うん、少し」

「かなり高い温度なんですけど……」

風呂から上がり新しい服を着て暖炉の前で毛布にくるまる。

「ホットミルクです。飲めますか?」

「俺にもくれ!」

「見つけてくれて有難うございます」

「たまたま兄貴の社に使いを出していた影が見つけて連絡してきたんだ。それで行ったら座り込んでてさ……ただ、雪翔の周りに人がいたから普通におんぶしてきたんだけどさ、おぶってて雪翔の気を少し感じたんだけど、身を守ることって言ったら良いのかな?それが大きくてそれで狐達の気も感じなくてさ」

「前にもありましたよねぇ。もうでてこれるでしょう。みんな出てきなさい」

半ば強引に呼び出されたみんなが一斉に騒ぐので、一人ずつ話してくれと冬弥が困っていた。

「えっと、みんなの話をまとめると、この力は翡翠と言うことでいいんですね?」

「そうですー。中から出れないようにされてしまいました。多分前もそうだと思います。それに式まで出られないなんて聞いたことがありません」

「そうですねぇ。一度皆さん私の影に入ってください。気が薄くなっていますので」

嫌々する翡翠も無理矢理いれて回復させる。

「みんなどうなるの?」

「大丈夫です。なのでゆっくりと休むことにしましょう」
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