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手術
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病院前のバス停で降りて受付まで行き、リハビリ室の前で待つ。
「雪翔君、どうぞー」
「はい」
「まずマッサージから始めるね。その後筋力をつけていくトレーニングになるけど、怪我はもう大丈夫?」
「痛みもないです」
「良かったね、早く治って。ちょっと見せてくれる?」
ジャージを捲って足を見せるとまだ治りかけで黄色っぽくなってきていて、何となく微妙に治ってない感じのその色がとても嫌だった。
「うん、これなら大丈夫だね」
足をマッサージしてもらってからストレッチをし、器具に足を付けて引っ張ってもらう。
「こ、腰が……」
「頑張って!」
はいと返事をしたものの、返って腰痛になるんじゃないかと心配になる。
「雪翔君、家でもずっと車椅子?」
「いえ、手すりのあるところは少しずつ自分で歩いたりしてますけど。たくさん歩けるわけじゃないから少しですけど」
「うーん、家でもテレビ見てる時や、疲れたなって思った時に、ベッドの上やソファに座ったままでいいから、前屈と伸びをして解してくれる?かなり腰周りが固くなってきてるみたいなんだ。車椅子の人に多いんだけど」
「わかりました」
「お風呂とかは平気?」
「はい」
「湯船で伸びしたりするのもいいよ。血の循環をもっと良くしていこう」
会計をしてバスの時間を確認してから外に出ると、結構雨が降っていたので傘を車椅子の所に付けて角度を調節する。
バス停までの距離だけだが、ギリギリになってしまうと傘をたたむ時間が無くなってしまう。雨の日はあまり出ないのでまだ全然なれず、バス停前について屋根の下でたたむ時には開くよりも手間取ってしまった。
なんとかバスに乗って自宅近くのバス停でまた傘を広げて進む。雨脚が強くなってきたので、早く帰らないとと少し緩やかな坂を登る。
コンクリートで一部出来ているが、滑り止めか雨が履けるようにかおしゃれな柄が彫り込んであり、速度を早めにして登る。
ズ……ズスッ……
「うわっ!」
少し滑り、慌てないで行こうと慎重に進むが、やはり後ろに落ちていく。
周りに人影もなく、どうしようと思っていると半分ほど進んだ時にズルズルズル__と坂を落ちていく。停止ボタンを押すものの、まだ直ってきてない代替機なので、いつもと少し止まり方もちがい、そのまま成すすべもなく横向きに落ちていき、車椅子から放り出される。
「いったー!」
振り向くと車椅子は少し先に落ちて横向きに倒れており、周りには捕まるところもない。
仕方なく張って車椅子まで行き、腕の力でなんとか座って車椅子を立たせ、捕まって立ってやっと椅子に座ることが出来たが傘は壊れてしまい、雨に打たれて全身ずぶ濡れだった。
「この道はもう登れないな……しーちゃん……」
呼んでも出てこず、金や銀、白に黒を呼んでも出て来ない。車イスも自動では動かず、携帯も画面が黒く壊れてしまったようでどうしようもなく、手で車イスを押すもうまく動いてくれない。
「もうすぐ家なのに……」
仕方なく車イスを隅のほうに置いてロックをかけ、フェンスに捕まって立ち上がり、リハビリの時のように少しずつ足を前に出して進む。
「冬弥さん……」
もう少しもう少しと自分に言い聞かせながら進み、かなり進んだだろうと後ろを見ると一メートルも進んでいないように見える。
「雪翔君、どうぞー」
「はい」
「まずマッサージから始めるね。その後筋力をつけていくトレーニングになるけど、怪我はもう大丈夫?」
「痛みもないです」
「良かったね、早く治って。ちょっと見せてくれる?」
ジャージを捲って足を見せるとまだ治りかけで黄色っぽくなってきていて、何となく微妙に治ってない感じのその色がとても嫌だった。
「うん、これなら大丈夫だね」
足をマッサージしてもらってからストレッチをし、器具に足を付けて引っ張ってもらう。
「こ、腰が……」
「頑張って!」
はいと返事をしたものの、返って腰痛になるんじゃないかと心配になる。
「雪翔君、家でもずっと車椅子?」
「いえ、手すりのあるところは少しずつ自分で歩いたりしてますけど。たくさん歩けるわけじゃないから少しですけど」
「うーん、家でもテレビ見てる時や、疲れたなって思った時に、ベッドの上やソファに座ったままでいいから、前屈と伸びをして解してくれる?かなり腰周りが固くなってきてるみたいなんだ。車椅子の人に多いんだけど」
「わかりました」
「お風呂とかは平気?」
「はい」
「湯船で伸びしたりするのもいいよ。血の循環をもっと良くしていこう」
会計をしてバスの時間を確認してから外に出ると、結構雨が降っていたので傘を車椅子の所に付けて角度を調節する。
バス停までの距離だけだが、ギリギリになってしまうと傘をたたむ時間が無くなってしまう。雨の日はあまり出ないのでまだ全然なれず、バス停前について屋根の下でたたむ時には開くよりも手間取ってしまった。
なんとかバスに乗って自宅近くのバス停でまた傘を広げて進む。雨脚が強くなってきたので、早く帰らないとと少し緩やかな坂を登る。
コンクリートで一部出来ているが、滑り止めか雨が履けるようにかおしゃれな柄が彫り込んであり、速度を早めにして登る。
ズ……ズスッ……
「うわっ!」
少し滑り、慌てないで行こうと慎重に進むが、やはり後ろに落ちていく。
周りに人影もなく、どうしようと思っていると半分ほど進んだ時にズルズルズル__と坂を落ちていく。停止ボタンを押すものの、まだ直ってきてない代替機なので、いつもと少し止まり方もちがい、そのまま成すすべもなく横向きに落ちていき、車椅子から放り出される。
「いったー!」
振り向くと車椅子は少し先に落ちて横向きに倒れており、周りには捕まるところもない。
仕方なく張って車椅子まで行き、腕の力でなんとか座って車椅子を立たせ、捕まって立ってやっと椅子に座ることが出来たが傘は壊れてしまい、雨に打たれて全身ずぶ濡れだった。
「この道はもう登れないな……しーちゃん……」
呼んでも出てこず、金や銀、白に黒を呼んでも出て来ない。車イスも自動では動かず、携帯も画面が黒く壊れてしまったようでどうしようもなく、手で車イスを押すもうまく動いてくれない。
「もうすぐ家なのに……」
仕方なく車イスを隅のほうに置いてロックをかけ、フェンスに捕まって立ち上がり、リハビリの時のように少しずつ足を前に出して進む。
「冬弥さん……」
もう少しもう少しと自分に言い聞かせながら進み、かなり進んだだろうと後ろを見ると一メートルも進んでいないように見える。
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