下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
7 / 87
白い空間

.

しおりを挟む
一時間ほど待っていると、狐が報告をしに来て、「疑ってすまなかったな。文弥殿には妾は昔世話になったことがある。あの方が天狐になられてすぐの事。その頃は妾もまだ何も力がなく、お礼は良いと言われてもうどのくらい経ったか……」

「お爺ちゃんと知り合いなの?」

「そうじゃ。これも何かしらの縁であろう。妾も仙じゃ。仙人ではないが、それなりに力はある。しかし、ここからそなたの言う社までつなげるのは容易ではない。一度狐の国に送ることならば出るが、決めるのはそなたじゃ」

「えっと、東の役場まで行けば僕道がわかるんですけど」

「良いじゃろう。一日ゆるりと過ごしてから行くか?」

「いえ、これ以上甘える訳には……お爺ちゃんの所まで送ってもらえたらなんとかなると思います」

「そなたは聡い子じゃな。妾も恩返しができて嬉しいぞ?久方ぶりじゃから妾が付いていこう」

「そんな……お社は?」

「代わりに任せておけば良い。暫し離れておっても問題は無い」

あれよあれよという間に支度が整い、車椅子のままでいいが白と黒は影に入れるように言われ、戻ってとキーホルダーに戻ってもらう。

「あの、ここはどこなんですか?」

「ここか?ここは日本の地図で言うと東北地方にあたるのじゃ。そなたの家からは離れておるのか?」

「は、はい。かなり……」

「岩戸は知っておるのじゃな?何度か通ったのかえ?」

「はい。前はコンテストにも出て、航平ちゃ……従兄弟が青年部で優勝して、僕は少年部と総合で優勝もらって……」

「そうであろう。ソナタはとても可愛い顔をしておる。妾でも一票投じておる。ならば、胡蝶にはあったかえ?」

「あ、天狐の?」

「そうじゃ。あれは妾の姉じゃ。と言うても血は繋がっておらんがの」

「それってどう言う……」

「妾が幼き頃に育ててくれた母であり姉のような存在じゃ。ほれ、そろそろ門番のおる場所に出る」

話しているとつくのも早いと言われ、ここからどうやって祖父のところに行くのだろう?と考えてしまう。

お姫様のような着物を着ているのにすたすたと歩いている姿はとても綺麗で見とれてしまう。

話し方や仕草など、一度しか見ていない天狐の胡蝶に似ていると思ったのは育てられたからなんだとついまじまじと見てしまう。

「雪翔というたな?ここから東まではかなり離れておるのじゃ。社から社に移動したことは?」

「あります。冬弥さんと一緒に」

「文弥殿のご子息じゃな。なれば問題はなかろう」

そう言って出口まで案内して貰い、外に出ると一面雪景色だった。

「雪だ!」

「ここは北の地で、その中でも一番寒いところじゃ。妾はこちらの出身ゆえ、どうしても出口がここになってしまう。寒かろ?」といつ出したのか、毛布のような生地の肩掛けを貸してくれた。

「ありがとうございます」

「良い良い。さて、妾に掴まっておくれ。ここから二つ飛ぶ事にしようかねぇ」

そう言うと、すぐに目の前の景色が変わり、雪景色がなくなり、見たことの無い社の前に出た。

「ここは東の国との境じゃ。もう一つで文弥殿の近くの社にまで行けるのじゃが、もしかしたらそなたの知っておる社と違うかもしれぬ」

「えっと、使いを出したら迎えに来てくれると思います」

「同じ場所に出してやりたいんじゃが、妾も行ったことのないところには、自分の気を置いておらんのじゃ。済まないねぇ」

「いえ、連れてきてもらっただけでもとても有難いです」

「そうか?」

そう言いつつ次に飛んだ場所は山の中腹。
街は見渡せるが、来たことのない社だった。

「金、銀、お爺ちゃんの家わかる?」

「わかる。お爺に雪が来たっていえばいい?」

「うん、気をつけて行ってきてね」

走っていったと思ったら途中で消えたので、空を飛んだのか、この社の移動のように移動したのかはわからないが、後は祖父を待つだけとなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を

花籠しずく
キャラ文芸
 ――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。  月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。  帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。 「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」  これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。 ※R-15っぽいゆるい性描写があります。

借りてきたカレ

しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて…… あらすじ システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。 人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。 人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。 しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。 基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!

【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~

御崎菟翔
キャラ文芸
​【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】 ★第9回キャラ文芸大賞エントリー中! 「選ぶのはお前だ」 ――そう言われても、もう引き返せない。 ​ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。 そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。 彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。 ​「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。 なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに! ​小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。 その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる―― ​これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。 ​★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』 この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中! https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

後宮薬師は名を持たない

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

処理中です...