下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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再び

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ホイル蒸しが出来上がる頃に、スパゲティを茹で始め、ひき肉を痛めながら後で絡ませるトマトソースを作っていくのを見るが、いつも手際がいいので邪魔にならないように、お肉を炒め終わってからお皿を用意し始める。

「あ、坊ちゃん。高い所のものは取ります」

「うん。上の大きいお皿一つと、真ん中のお皿全部!周太郎さんみたいに力持ちだったらなぁ」

「薪割りで鍛えられますよ?」

「毎日だもんね」

「慣れれば早く終わりますし、運ぶのも紐のかけ方でかなり変わりますから」

「でもこっちの国では使うことなんてないよ?」

「焚き火とかしないんですか?」

「うん」

「今の時期は芋を焼くと美味しいんですが」

「焼き芋?」

「はい。甘くて美味しいので好きなんです」

「庭でもできないから、今度お爺ちゃんの所に行ったらしようよ」

周太郎にあとは任せ、横になってる航平に食事は取れるかと聞き、大丈夫だとの事だったのでまだゆっくり寝ててと言ってから、気になるので地図とパソコンを見比べる。

「坊ちゃん」と四郎に呼ばれ、どうしたの?と聞くと、「あの巻物と本は坊ちゃんの近くにいたら読めるのですよね?」と聞かれる。

「そうみたいだけど」

「見せてもらえませんか?」

「いいけど、僕でも読めない所が沢山あるんだ」

「坊ちゃんはどのような感じで分かったんですか?」

「頭に流れてくる感じで、内容は分かるんだけど、理解するのにはちゃんと読まないと無理なのかも。図は見たらわかるんだけど」

紫狐に頼んで箱を持ってきてもらい、巻物は小さかったので広げておき、小冊子をその横に置く。

「なんじゃ?」

みんなが集まってきたので、四郎に言われて見せてると説明すると、すぐに祖父が紙と筆をと言ったので、こっちではシャーペンだよ?と言って渡すが、鉛筆の方がいいと言われて、鉛筆を渡す。

「重次さんならばもっと文字に詳しいんですが……」

「四郎もなかなかに本には詳しかったの。どうじゃ?何かわかるか?」

「気にはなっていたのです。一度、少し見えた時に、何処かで見たことのあるような字だと……一部、狐の国の……こちらの人間の世界で言うところの古代文字です」

「ヒエログリフとかの?」

「それはこっちだろ?四郎、いつ頃のだ?」

「そこまでは……ですが、例えばこの文字は『く』と読みます。そしてこちらが『い』書き出していけばある程度読めるのではないかと」

「じゃあ、四郎と雪翔は先にご飯食べてください。その後寝る時間まで四郎、頼めます?」

「はい!お役に立てるように頑張ります」

「汚したら行けないからこっちで食べてくださいね」

「すいません若奥様」

「やだ、恥ずかしい……」

「こんがらがるので、家は名前で構いませんよ。それよりもすっかり忘れてました。三郎は格闘ばかりでしたが、四郎は兄の書物もよく読んでましたものねぇ」

「一族の中でも一番記憶力もよく、頭もいいです。戦闘は負けませんが」

「やはり三郎をこっちに残していくのは正解ですね。頭は玲が使ってくれると思いますよ?」

「俺もいるだろ?」

「考えて動く前に、侑弥を優先してください。栞さんは自分の身を優先に」

「我が子を優先です!私だって少しは防御だって出来ますから!」

「そうでした。最近はみんなの能力が凄いので色々と頭の中でこんがらがってしまって困ります」
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