妖古書堂のグルメな店主

浅井 ことは

文字の大きさ
146 / 158
#12 新たな訓練

しおりを挟む
「えっと、醤油とか豚骨とか色々ありますけど」

 ポケットから一冊の本を取り出し見せてくる。

 『人間界、おすすめ料理店』

「何ですかこれは」

「こちらで美味しいお店百選らしい。そこにこの地域のラーメン屋が載っていて……」

 見せてもらうといつも行列のラーメン屋さんだと分かり、時間を確かめる。

「今の時間はお昼でかなり混んでるかも。俺のおすすめのラーメン屋でもいいですか?」

 それでいいと言われたので、サッパリ醤油のちぢれ麺のお店に案内する。

 店舗は古いが安くて美味しいので、たまに来るお店なので好みに合えばいいのだが。

 
「いらっしゃい」

 メニューを見せ注文したのは、チャーシュー麺の大盛り、餃子、青菜炒めにエビチリ。しかもしっかりと二人前。

「食事も訓練……こちらで言うトレーニングと同じだ。バランスよく食べ、筋肉と力に変えるのが一番いい。アギル様が食にこだわるのは高ランクの者はみんな知っているが、その分栄養のバランスは考えていると思っている」

「確かに、バランスはいいです。でも食材取りに行かされてばかりだったから、俺は死神の仕事の事は全くと言っていいほど分かってません。それに、バイトで雇われてただけで、死神の仕事をする返事もリヒトさんにしてないんです」

「聞いているが……王とリヒト様方がお決めになったのだから、何かしら君にも能力があるのだろう」

「ホルンさんはその……」

「俺は王家の血筋だ。と言っても親戚にあたる。話は聞いているし、他に漏らすこともない。もちろん今聞いた話も」

「あの、ありがとうございます」

 来た料理はボリュームがあるが、二人で半分ずつ食べお腹いっぱい。

 ラーメンは初めてらしく、食べ方はぎこちなかったが、「美味い」と満足してくれ、会計も払ってくれたので、御馳走になることにした。

 夕方まではまた走り込みをして終了。

 内容は毎日変わると言われたが、朝と夕方は主に走り込みで三日間すると言われて、最終日。

「ほんとにここ走るんですか?」

 連れてこられた場所は山の中。

 しかも高配のきつい整備もされていない場所で、周りは木だらけ!

「えーと、道らしきものがないんですけど」

「この山から下の街に戻るには、走り続けて半日はかかる。十二時間以内に戻らない時は助けに行くから安心してくれ」と、ペットボトルの入ったリュックを渡される。

「今回は武器の使用は禁止。一応懐中電灯も入れておいた。緊急の時には中の連絡用携帯を鳴らしてくれ」

「ちょ……」

 待ってと言いたいのに「始め!」と言われ、まずは降り易い道を探す。

「方角が分からないじゃやないかー! 確か、良く葉の茂ってる方が南だっけ? あれ? 方角聞いてもどこに着くのかさえ分からないっていいのかよー」

 文句を言いつつも、開始からすでに十分。

 降りられそうなところをゆっくり降り、速足で歩ける所は進めるだけ進むが、まだ少ししか歩いてないのに息が苦しい。

「山の上の方だから空気が薄いのかな」

 時折時計を見て、一時間に一度五分休憩し、水も少しずつ飲む。

 今までキャンプ経験もないし、本当に降りれるのだろうか?

 途中で少し大きめの木を見つけたので、それで足元の葉をよけながらさらに進み、どのぐらい歩いたのだろうか……やっと川が見えてきた。

「無くなったペットボトルに水入れておくか」

 済んだきれいな水だったので、大丈夫だろうと水を入れてリュックにしまい、川下に向かって歩くスピードを上げる。

 順調に歩いていたら川が二手に分かれていたので、ど真ん中を行けばどうなるんだろうという好奇心から、川を渡って真ん中を進むのはいいのだが、山の中で木々の擦れる音とたまに聞こえる鳥の声だけではちょっと寂しい。

 それ程の砂利ではなかったので軽く走って行くとまた川になったので横の道を歩き、途中で水を飲みながら時計を見る。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

後宮薬師は名を持たない

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

処理中です...