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浅井 ことは

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天界へ

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「姫……噛ませるなど……」

「黙っておれリアム。おっさんを見てみろ」

「父上。お怪我は?」

「ないない。少し驚きはしたが、結月の言い方であまがみ程度だと思ったから」

「ほう、気づいたか」

「はなひていいれふか?」

「離していいぞ。私が戻るまでしばらく天王と遊んでやれ」

「はいー」

「どこかへ行くのか?」

「もちろん材料集めに。ってことで、リアムを借りるが良いか」

「かまわんよ。ただ、冬と秋の境にはあまり行くことはおすすめできないかな」

「?」

「森の魔女と呼ばれるものがいるのは知っているだろう?」

「噂にだが」

「前まで春と冬の境にいたんだけど、最近移動したらしくて。何かの研究をしているとかしていないとか、良い話を聞かないのでね」

「わかった。是非会いに行ってこよう!」

話聞いてた?と言われながらも無視をして、リアムをつれて退室する。

着替えてから外に出る。
リュックにスニーカー。
Tシャツにジーンズ。

「とても姫の……」

「リアムは小姑か?日本ではと言うより、人間界では普通だ」

「もうお戻りにならないのですか?」

「わからん。先に川原にいきたい。
後、ユニコーンの血と天竜の鱗。天馬の爪……」

言い終わる前に消え、川原で天石を集めていると袋を持ったリアムが現れた。

「お前……何か言ってからいけよ。モテないぞ?」

「私には姫だけですので。ですが、姫がそうおっしゃるのなら気を付けましょう」

「はぁ……まぁ、取ってきてくれるのは助かるが」

「他に必要なものは?」

「いや、来るときにも採取したしこのぐらいで良い。さて行くか」

「いけません。父上も……」

「黙らんか! 女のようにメソメソと。私は男らしいほうが好きだぞ?」

「それは私と……」と下を向いて照れている。

「それはない」次はがっくりかたを落としている。

でもすぐに立ち直るのがリアムだ。

「では、捕まってください。秋と冬の狭間へ飛びます。荷物は部屋に送っておきます」

そういって先に荷物を送られ、服の袖をつかんだ瞬間には、枯れた木々と少しの紅葉といった微妙に寂しさを感じる場所に出た。

「初めて来たが……これはまた……」

「不思議と落ち着く場所でしょう? 私も気に入っているのですが、ここには今はもう鳥もいません。前までいた猿もリスも……」

「………………魔女か?」

「はっきりとはわかりませんが、原因のひとつにかわりないかと」
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