天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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完全に寝てしまって盾が壊れても行けないと思い、横になるだけでまぶたが閉じていくのを我慢する。

「ノア、今のうちに天草集めちゃおうか」

「疲れてませんか?」

「寝たら盾が壊れそうだし、採って置かないと怖い人がいるじゃん」

「この辺りは綿毛も沢山ありますから、暇そうな方にも手伝ってもらいましょうか」

「そうだね」

天幕を出て、サムと数人会話をしている兵士を連れて麻袋にとっては詰める作業をしたが、人数が多かったのですぐに集まり、袋はパンパンだった。

「この綿毛って花なの?草なの?」

「どちらでもありません。ですが、薬の材料にもなり、群生しているところ以外では取れないので、貴重といえば貴重です」

「そうなんだ。他に薬になるものってある?」

そう言うと近くにいた兵が、ただの細い草だと思っていたのを抜き、「この茎の汁が傷薬になります」と教えてくれた。

他にも、組み合わせで腹痛に頭痛と農民など田舎に暮らすものは街に行くことがあまりないので、みんな知っているという。

別の袋にもその時期にしか無いものがあるというので採っていきながら天幕へと戻ると、スフィが中から出てきており、空を見上げている。

「起きたの?なにか食べる?」

「いや……、雨が降りそうだ」

「そう?こんなに天気いいのに」

「風の匂いで感じるが、一時的なものかもしれん。それよりも火を消さなくていいのかと」

「もう燃え尽きたかな……」

「見てこよう」

気をつけてと言って見送り、荷馬車に麻袋をしまう。

「奏太様、お昼の準備は雨避けをつけてしますか?」

「そうだね。野生の動物の方が詳しいだろうから」

上の雨避けを立てている間にポツポツと降り出し、そんなには降らないだろうと思っていたら、雷雨となり各々天幕で食事を作ることとなってしまった。

スフィも戻ってきたので、軽く焼いた肉とパンを皿に乗せて、ノアと3人で食事をする。

「旅してた頃みたいだね」

「あの時は最初大変でした」

「二人で旅を?王族はそのような事はしないと思っておったのだが、風習でも変わったか?」

「違うよ。まだ王子でもなんでもない時かな?成り立てかもしれないけど、その頃に幻界を旅したんだ。その次は魔界だけど」

「ほう……天界は?」

「してないけど、お披露目の時に色々あったから、駆け回ったって感じかな?」

「あの時はみんなバラバラになりましたからね」

「うん、その時にこの地に俺の城が建つって聞いて来たから、今やっとって感じかな?それよりも火はどうだった?」

「外側はもう盾を解いてもいいくらいに消えていて、中は音からするに、まだ細かい爆発音が聞こえていた」

「食べたら消しに行きたいけど、こんな天気じゃね」

「この地の天候は穏やかな日が多いが、このような雷雨がくると二三日は続く」

「帰れないじゃん!」

「でも火は消えますよ?」

「そうだけど……」
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