天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

文字の大きさ
64 / 127

.

しおりを挟む
天幕の前で誰かの声がしたので、入ってくれと言うと、兵が2人入ってきた。

「どうしたの?」

「今、いくつかの天幕が突風で飛ばされ、隊長が天幕の下敷きに……それも折れた大木の下に……」

「ノア、手伝いに行こう」

「いえ、救助はしたのですが、傷がひどく、我々では治せないと判断をして、治癒のできる王子とノア様にお願いに参りました」

「すぐ行く……いや、ここに連れてきて。ベッド空いてるから。他のテントも強化魔法掛けないと……」

「それでは魔力がいくらあっても足りません。魔法陣を書きますので、それに一度魔力を流せばいいようにして渡しますので各テントに配ってください」

ノアが書いているのを次々と受け取り、兵士ひとりがテントを回り、もう一人が違う兵とサムを連れてきた。

「王子、申し訳ございません」

「いいから!ノア、治せそうかな?」

「兄が居ればとつくづく思いますが、陛下からかなり教えられましたので、骨と傷は治せます。ただ、完全にとは行かないので、暫く固定しなければならないのですが」

すぐにやってくれと頼んで、水晶を取り出して結月に薬の作り方を聞く。

事情を話すと、骨は魔法や薬でいくらでもくっつくが、痛みや熱はやはり薬しかないと言うので、今ある材料を教える。

「奏太、天草を煮込んだ鍋に綿毛とお前の削りかすを一つまみ入れろ」

「カスって言うなよな!」

「まぁ気にするな。一番の特効薬だ。後、食料を包む葉があるだろう?」

「竹の葉みたいなやつ?」

「そうだ。残りの薬に浸してから貼って包帯を巻け。腫れが引くだろう」

「分かった、すぐに作る」

「透明になる前に火からおろせよ?」

「綿毛が溶けないんじゃないの?」

「入れればすぐに溶ける。煮込みすぎると効果が薄くなるから気をつけて作れ」

「うん」

聞いた通りに薬を作り、飲ませる分とは別に葉を浸す。
浸した葉は緑色が薄い黄色に変わり、冷ますとちょうど湿布ほどの厚さに変わっていた。

「ノア、薬できたよ」

「サムさん飲めますか?」

「も、申し訳ございません」

「いいから飲んで。俺湿布貼るから」

見た感じは大分と傷も塞がっていたので、濡らしたタオルで綺麗に拭いてから葉を貼り包帯がわりの布で巻いていく。

「眠ったようです」

「熱が出ないといいんだけど。ノアも凄いね」

「何度も練習したかいがありましたけど、私ではこれが限界です」

「ノアも横になっててよ。今のうちに休んでおこう」

取り敢えずみんなで横になり、体だけでもと休息をとる。

時折スフィが動いているのが分かるが、それでもウトウトと眠ってしまう。

「奏太様」と服を引っ張られ起きると、「我ではタオルが絞れぬ」と口にタオルを咥えて言ってくるが、頭のいい彼の事なので、そんなことでは起こさないだろうと目を見る。

「何か……いる、でいいんだよね?」

「雨で匂いが消えているところはあるが、間違いない」

外に出るにも雨で出にくく、雷が成る度に映る影を頼りに、そっと動いてノアを起こす。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...