天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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人間界1

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作業部屋の隣の部屋のベッドにムーを寝かして、傷薬を塗り、首に湿布を貼る。

スフィ__と呼んで来てもらい、ムーから預かった布の切れ端を渡して説明する。

「こんな薄い匂いでよく分かったものだ。気をつけていないとわからないほどに薄い……」

「スフィでもわからなかったくらい?」

「人が多いと匂いが混ざる。そこで嗅ぎ分けられたのは賞賛に値する」

「で?何の匂い?」

「みんなが帰ってきてからのが良いと思うが」

「分かった。ブランいる?」

「います!」とスフィの背中からまた雛となってできたので、大きくなってよ!とお願いして、ムーを部屋まで運んでもらう。

ルーカスに着替えてから部屋に来て欲しいと言い、自分も急いで着替えて部屋で待っていると氷を持ったエールラも一緒にやって来た。

「私も入っていいんでしょうか?」

「うん、構わないよ?みんな勝手に入ってくるし」

「怪我と聞いたので氷を持ってきたんですけど」

ありがとう。とムーの腫れた首元を冷やしながら、無茶しないって言ったのに……と頭を撫でる。

「奏太君ごめんね?」

「いいから寝てろって。スフィも何か感じたみたいだし褒めてたぞ?」

「本当?」

「うん、ブランがお前を運んでくれたんだから、後でお礼言えよ?」

「わかったー」

「それにしても大分と腫れてないか?強く持たれてもこんなに腫れないと思うんだが……」

「あ、ムーさん。姫様から聞いていたので熱を図りますね?」

「え?や、やだ……」

ブチュッ

「うぅぅぅー。気持ち悪いー。お腹気持ち悪いー」

「我慢しろ。お前達お尻で図るしかないし」

ピピッ

「はい、終わりです。これ、最新の体温計らしいですよ?えっと、42℃超えてますね……」

「犬の体温は、38~40位だったと思うんだけど……」

「熱?」

「俺には分からん!」

「どうしよう……」

「取り敢えず冷やすしかないと思うのですが」

「奏太、看病は女の役目だ!うん、エールラは優しいなぁー!」

「何か違う気がするけど……」

「我が見よう」とスフィが、ムーの側による。

大きな体でベッドに寝ているムーの体に手を置き、何かしているが、治療出来るのだろうか?

「我は少しの治癒ならば出来るが、ここには陛下もいる。体の中は大丈夫だが、首の筋がおかしくなっておる。それで熱が出たのだろう」

「お医者さんみたい……」

「早く治すには陛下の薬が良いと思うが」

「わかった。帰ってきたら頼むよ。じゃあ冷やしておくだけにしようかな?」

「それで良いと思うが、あまり動かさない方がいいだろう」

「わかった!」

「すごいなお前。魔界にも狼はいるが、天界の狼と全然違うぞ?」

「魔界にも我のようなものはおるはずだが、長は森から出ることはほとんど無く、特に人前に姿は出さないものだ。だから王子が知らぬとも仕方がなかろう」

「成程。探しても見つからないと言うことか。幻界にも居るのか?」

「居る」

「まだまだ知らないことが沢山だな……」
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