下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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学校

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入学して2ヶ月半。
友達と言える人は出来ず、窓際の席で休み時間はいつも本を読んでいた。

手紙には友達を作りなさいと書いてあったが、声をかける勇気もなく、掛けられてもどう話していいかわからず、必要以外人と話すことが無くなってしまった。
心配してくれる紫狐のしーちゃんには、学校では手出しはしないでと言ってあるが、帰るとすぐに出てきてくれる。

学食があるが、栞さんがお弁当を作ってくれるので、校舎裏にある立入禁止の古い校舎の中で食べ、休み時間いっぱい本を読んで過ごし、チャイムがなる前に教室に戻る。

そうして一日過ごし、下宿に帰ってからはすぐに銭湯へいき、汚れを落としてから新しく出来た部屋へ戻って、母屋で洗濯をしてから部屋にこっそりと汚れた体操服などを干して誤魔化す。

「ゆっきー、これ以上ごまかすのは無理です!私が出ます!」

「ダメ!それはしちゃダメなことだと思うんだ。冬弥さんが居ないのに勝手にしーちゃんを使ったら、いけない気がするし、僕、平気だから誰にも言わないで!」

「後、あと少しだけですよ?これ以上酷くなるなら栞さん……いえ、那智様に報告します」

「お願い、みんなに知られたくないんだ。那智さん達に知られたらきっと学校に来るだろうし、栞さんを困らせたくないんだ」

「今、冬弥様が長期不在なので、私は那智様から力を分けてもらってます。秋彪様と玲様からも。なので、ゆっきーが、傷つくなら報告の義務もあるし、これ以上傷が増えるのなら、対処しなくてはなりません!」

「見た目は……まだ何も。僕も努力するからもう少し待って」

「もうしてるじゃないですか?好きな本を破られ、体は殴られ蹴られ。それでもゆっきーは辞めてと言葉にしてます!やられてるばかりじゃなくて、ちゃんと抵抗もしてます。紫狐はもう見てられません」

うぇぇぇんと泣いて飛んでいってしまったが、紫狐も限界だったのだろう。
自分が傷つくと中の狐も傷つく事もあると前に那智から聞いたことがある。

「どうしよう……」

まだ真新しい部屋のカーテンレールに体操服とワイシャツをかけ、下宿屋に戻りご飯の支度を手伝う。

「お弁当箱は?」

「あ、今洗うね」

最近買った乾燥機に洗った弁当箱を入れてスイッチを押し、お米を洗う。

「雪翔君、何かあったの?」

「何にもないよ?そろそろ初めてのテストだなって思って」

「そう!それなんだけど、みんなから聞いたのよ。テスト期間なんでしょう?その間はお手伝いはいいのよ?」

「うん、でも夜ちゃんと勉強してるから」

「そう?無理はしちゃダメよ?海都君は堀内さんや賢司さんたちに教わってるけど、結構慌ててるみたい」

「二年になると進学コースと別れるから、難しくなるって聞いたよ?」

「私まで心配になっちゃう」

「頑張っていい点取れるようにするね。今日唐揚げなの?」

話をすり替え、唐揚げに焦がしネギをかけるんだと、本を見ながら栞も毎日頑張っている。
女性一人で掃除に洗濯、朝夕の食事の支度は大変だろう。

夕食時に、長袖で暑くない?と聞かれたが、寒がりだからと言ってまた誤魔化す。
四月からどれだけ嘘をついてきたがわからない。

翌日、乾いた体操服を取りに行き、学校へと向かう。結局紫孤は拗ねたのか帰ってこず、1人の登校はこれが初めてとなった。

初めは海都と一緒に行っていたが、部活の朝練が始まったとのことで、一時間は早く出ていく。

「ゆーきーとーくーん!」と肩を掴まれ、耳元で持ってきた?と聞かれる。

校舎裏につくと「今まで持ってこなかった分と利子合わせて150万ね。いつくれんの?」

「そんなお金はありません!」

「毎週五万ずつくれたら許してやってもいいんだけど?」

「渡せません」

だいたいそんな金額、どう計算すれば出てくるのか意味がわからない。

「お前、下宿にいるんだろ?下宿にいる奴は生活費貰ってんだよな?そこから払えよ」

「嫌です!君たちに渡すお金は無い!」

「おい、脱がせろ」

ひとりが命じてシャツを脱がされる。中に着ているTシャツとズボンだけになると、容赦なく上半身を殴られる。殴り返そうとしても他の奴に手足を抑えられているので反撃も出来ない。
ホームルームが始まる前まで続くので、なるべく遅く下宿を出るのだが、同級生に毎日恒例のように捕まり殴られる。
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