下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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退院

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「そんな……夏のキャンプとかクラスの子とか少しだけど思い出したのに」

「いい事は思い出してもいい。だが、あんな目にあったところにまた行かせるのはさすがの俺でもいい気はしない。思い出してからでもいいだろう?」

「少し考えてもいい?」

「……そうだな、自分で決めるのが一番だとは思うが、俺は反対だ。それも含めて考えてくれ。後、これを見てくれ」

「カタログ?」

「車椅子だ。歩行器で街を歩く訳にはいかないから、まだ暫くは必要になる。好きなのを選べと言いたいが、家の幅を考えて幾つか丸を降ってもらった。そこから選べ」

「はい……僕、もう走ったりできないの?」

「ちゃんと治せばできるし、今はまだ必要なだけだ。それがあれば、外にも出れるだろう?本屋とかよく行っていたと聞いたからな」

「商店街の本屋さん……」

「あそこなら一人でも行けるだろう?歩いていくにはまだ無理があるからな」

パラパラっとめくると、幾つか丸が降ってあるものの中に、黒地に緑のラインのものを見つけ、指を指す。

「もっとゆっくり選んでいいんだぞ?」

「今見ててこれが1番使いやすそう。だけど電動って書いてあるから高いよね……」

レバーで進んだり方向を変えたりできるもので、タイヤもパンクしないと書いてある。少し使うにはもったいないなと思っていたら、病室内にも関わらず電話をかけている。

「まぁ待ってろ。荷物もリハビリと思って片付けておけよ?」

そう言って何枚かのお札をくれる。

「守りは身につけてろ。跳ね返すくらいはできる。紫狐、栞のところへ行って退院のこと知らせてこい。その後秋彪のところに寄ってくれ。行けばわかる」

「分かりました」

「凛は置いていくが、煌輝は一度影に戻す。そのための守だ」

「はい。煌君ありがとう」

珍しく手を振って影に戻っていく。

「那智さん、あの、裁判?どうなるのかな?」

「すぐに始まる。退院したらまた弁護士や刑事やら来ると思うが、お前は聞かれたことに答えればいい」

その次の日に、車椅子の会社の人が、説明をして車椅子を置いていったので、絶対術をかけたんだと思いながらも、座ってみる。

少し動かすとくるっと回ってしまったので、扱いは難しいのかもと思って説明書を読んで、廊下を少し回ってみる。

「あら、雪翔君の車椅子かっこいいわね?」と看護婦さんに言われたので、今日届いたと言うと、気をつけて行くのよと声を掛けられる。

返事をして、1階まで降りて売店へ行き、飲み物と稲荷寿司があったのでそれを買って外の中庭に行き、金と銀に稲荷をあげて説明書を最後まで読む。

「バッテリーの予備がいるなぁ。箱に入ってたかな?」

持続時間などを頭に入れて、少し陰ってきたので部屋に戻ろうと来た道に行くためにUターンする。

学生服を着た男の子が二人。お母さんと一緒に目の前に立っていて、お辞儀をされる。

「あの……」

「本当は弁護士さんを通さないといけないと思ったんだけど、この子達がどうしてもって。少しだけ話せるかしら?」

「でも僕、今一人だから……」

「早乙女、俺達ちゃんと話した。学校も自主退学にした。ごめん……」

二人に謝られ、どうしたらいいのかと思っていると、奥から玲が歩いてきたのでこっちだと手を振る。
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