下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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江戸屋敷

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夜の薬を飲んでウトウトしていると「風邪をひきますよ坊ちゃん」と周太郎さんが部屋に来た。

「え?あの、すいません」

「屋敷の方が使用人に気は使わないでください。明かりを消しに来たのですが、どうしますか?お休みになられますか?」

「うん……」

そう言うと机からベッドまでヒョイっと運んでくれて布団までかけられた。

「私は耳がいいので、屋敷内なら普通に呼んでもらえば聞こえますから」

「ありがとう」といい、すぐに眠りに落ちる。

「雪翔、雪翔……そろそろ起きないと朝餉ですよ!」

「え?」

ぼーっとした頭で、狐の世界に来たのだと思い出して準備をする。

顔を洗い、食事の部屋へ行くとみんながもう待っていたので寝坊を謝るが、気にするなと言われ食べながら今日の行く場所を聞く。

人間界のものも売っているというのも見たかったが、家族出てかけようとのことになり、使用人を二人連れていく大所帯となってしまった。

「街についたらお昼まで私達は買い物に行きますからね?」

「幸も出かけるとは珍しいのう。ゆっくり見てくるといい。京弥、たまには簪の1本でも贈ったらどうじゃ」

「父上が知らないだけで、結構贈り物をしてますよ?」

「あら、それなら私も着物でも買ってもらいましょうかねぇ?」

「たまの事だ。好きにするといい」

ご飯を食べてから街まで行き、すぐに祖母と幸は買い物へと行ってしまった。

その後、電器屋さんのように色々なものが積まれたところへ行くと、ここが電気のあるところだと言われて中に入る。

「いらっしゃ……御館様。こんな所にどうされたんです?」

「なんじゃ、ここはお主の店じゃったのか!」

「あっちの暮らしになれなくて、戻ってきたんですよ」

「知り合い?」

「昔に盗賊をしてた馬鹿者じゃ。儂が捕まえたんじゃが、手先が器用じゃったから人間界でなにか身につけてこいと送り出したんじゃが……根は真面目なやつじゃから心配せんでもいい」

「真面目な盗賊?」

「まぁな。それより、街に売ってるのもお主の物があるのか?」

「新しく出来たショッピングモール風の所にはいくつか出してます。玩具ですけど……で?その子は?」

「冬弥の子じゃ。儂の孫になる」

「天狐様の坊ちゃんでしたか。それはそれは」

「充電のことでな。この車椅子の充電を任せたいんだができるのか?」

「へい、自家発電機というのを持ち込んであるので出来ます」

「自家発電なの?だったらコンセントも?」

「さすがは坊ちゃん。勿論ついてますよ。ただ、動かなくなったら終わりなもんで、また人間界に仕入れに行かないと……」

「よく許可されたものだな?」

「役場で承認済みです。この機械のことが分かれば街に明かりをつけれる夢も叶いますから」

「ねぇ、それ。無理だと思うよ?仕組みが違うもん」

「ぼぼぼ坊ちゃん?それは真ですか?」

「うん」

うろ覚えの知識しかなかったが説明するとガクッとしてしまった。

「悪いこと言っちゃったかな?」

「目が覚めて良かったと思うよ?勉強不足だったね。で、この子がいる間は優先的に車椅子を充電してもらいたいんですよ」

見せて欲しいと言われて、持ってきた充電器とバッテリーを見せる。

「何の位で満タンになるのかわかりますかね?」

「えっと、三時間だったかな?」

「分かりました。これはお預かりしても?」

祖父の顔を見ると頷いたので、先に満タンのバッテリーと交換してから渡す。

「毎朝うちに届けてくれ。この子が帰る時に渡したものも回収するから、解体などしないように」

「も、勿論です」

代金は後からということになって、預けて車椅子を動かす。

「勿体ないから周太郎、押してくれ」

「はい」

「良いのに」

「もし充電ができなくなれば困るじゃろう?それに今日はまだ見に行くところが沢山ある」

「あ、そうだ。銀行あるかな?あっちでもこっちでも使えるカードと通帳があるんだけど」

「通貨が違ったの。どこにでもあるから、周太郎連れてってくれんか?儂等はこの先の着物問屋におるから」

「はい」

すぐ近くにあると言われ着いたのは、見慣れた銀行だったが、電気のこともあるのに何故か普通にATMが使える。

お金を多めに降ろしてから戻り聞くと、家の冷蔵庫もそうだが、一説では磁場で動いているのではないかと言われているそうだ。

でも磁場だったらカード使えないよね?と思ったが、来るだけでも不思議なところなので何も言わずに置いた。
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