下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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江戸屋敷

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段々と近付いてくるのが分かるが、みんなには分からないらしく、頭の中で色々な記憶が蘇る。

僕は高校生で、年明けの受験で神社にお参りしてから、すぐに下宿に行ったこと。
親から見放されて里子になったこと。
学校で馴染めずにイジメにあっていて、骨を折って入院した事……

首を……閉められて今まで思い出せなかったこと……

そして近づいてくる人が誰かわかったこと。


階段からだんだん姿が見え、誰かと認識した瞬間。

「冬弥さん……」と呟き、泣いていることに気づく。

「冬弥じゃと!?」

目の前に立った人を見て全てがわかる。

車椅子の腕を置く部分に力を入れて、足を下ろして少しよろめきながらも立ち上がる。

「冬弥さん!冬弥さんだよね!?僕……」

1歩、また1歩と少しずつ足を動かし、なんとか目の前まで行くと、「待たせてごめん」と抱きしめられる。

「ぼ、僕。思い出した……いつも一緒にいて、お父さんになってくれるって……でも居なくなって、ずっと待ってて……う、うぇ……うえーーーん!」

「泣かないでください。だいぶ待たせましたが、ちゃんと帰ってきましたよ?」

「気配が……いや、神気が全く……お主、天狐を超えたのか……?」

「父上、皆さん、ただいま戻りました。すべて話は聞いてます。人間界に降りた時には雪翔に2回会ってますよ?」

「バスの?」

「そうです。全く無茶をする……」

「本当に冬弥様?」
「偽物じゃないのか?」
「それより、前にダダ漏れじゃった神気はどうした!」などとさんざん言われたが、何より驚いたのは雪翔の足が動いたことにみんなが一番驚いている。

「私も一緒に帰ります。ここから全員人間界に私が移します。父上、母上……報告は後ほどという事で」

「構わんが……」

「では一度帰りましょうかねぇ」

社からどう飛んだのかはわからないが、ついた先はいつもの下宿の玄関。

「雪翔、泣かないでください。良く頑張りましたね」

「う、ん。僕……全部思い出した……」

「神気に触れたからか?全くわからなかった」

「修行しましたしねぇ」

「と、とにかくだ!話せ!分かるように」と那智までが驚いている。

母屋に入り、おかえりなさいと言い、それでも立っているのは疲れるだろうと車椅子に座らされる。

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