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江戸屋敷
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雪翔は心配しすぎだと言われ、夕餉が終わりいつものように薬を飲む。
「京弥さん、借りていた本ありがとうございました。届かなくて戻してないんですけど」
「部屋に置いておいてくれたらいいよ。向こうに持っていってもいいけど」
「じゃあ、大きめの地図を借りて行ってもいいですか?」
「そんなのでいいのかい?」
「はい」
「なら出しておくよ。後、これも持っていくといい」
渡されたのは巻物。
「絵巻だよ。小さいものだから、額に入れて飾ってもいい」
「ありがとうございます」
中を見ると兎や亀、狐に狸に狼が描かれており、向こうの絵本の縮図みたいだと言うと、こちらの童話を元に書かれたものだと言われる。
「向こうの絵本全部詰め込んだみたい」
「こちらでは少し話が違うから、その童話集も持って行って読むといい」
「やった!」
「ほんとに本が好きだなぁ。戻ったらまた部屋から出てこないとかダメだぞ?」
「分かってます!ちゃんと外にも出ます」
「じゃあ、もう寝ろ」
「えー。まだ眠くない……」
「明日起きれるのか?」
「うっ……」
最近少し寝坊してるのがバレているかのように見られるので、お土産の団子を渡してから、お休みなさいと言って部屋に戻り布団に入る。
朝起きて、いつものように身支度を整えて土間へと行く。
「おはよう」
「おはようございます。どうかされましたか?」
「うん、あのさ玉子ってある?」
「お飲みになります?」
「え……の、飲まない。ここってあまり卵の料理なかったし、少し借りれないかなと思って」
「構いませんが……」
卵を沢山もらったので割って行き、混ぜて出汁と少しの塩を入れ、軽く混ぜてから鉄の板で焼いていく。
「坊ちゃん、何をお作りに?」
「楽しみにしててね」
そう言っても火加減が難しいので少し焦げたところもあったが、細めの卵焼きを沢山作って、朝ごはんに出して欲しいと頼む。
残りの分は、みんなで食べてほしいと言って、味身代わりに端っこをつまむ。
まぁまぁかなと満足して、移動する時にタケノコを一つつまみ食いして、外に出て庭を一周してから戻る。
そのまま部屋に行ってご飯を待っていると、みんなが早いなと声をかけてくれる。
「ね?早起きできてるでしょ?」
朝餉が運ばれてきて、珍しく卵焼きが出てきたのですぐに雪翔だろうと言われてしまう。
「こっちに、卵焼きってなかったみたいだし、最後のご飯だからみんなに食べてもらいたかったんだよ」
「家の者たちの分も作ってきたんじゃろう?」
「分かっちゃった?」
「雪翔はみんなに優しいからの。それにしても美味い。これからはたまに朝餉に出すように言おうかの」
「良かった。下宿で……そう、栞さん手伝ってたし、なんかその前にも似たことがあった気がするんだ。作ってたら思い出すかなって……」
「雪翔、儂等も行ける時にはそちらに行くし、何もこれが最後ではないぞ?そんなに気を使う必要は無い」
「僕がしたかったんだ。みんなを怒らないでね?」
「分かっておるよ。にしても、幸よ……どうしたのじゃ?」
「いえ、こんなにも綺麗に巻けるものなのですねと思いまして。こちらにはない料理なのでつい」
「出汁と少ししお入れて混ぜて焼いただけだよ?簡単だからみんな出来ると思うけど」
朝食後、紙に作り方を書いて机の上に本と一緒に置いておく。
本を取りに来た時にわかるだろうと、風で飛ばされないように重しをして、周太郎に荷物を運んでもらう。
「周太郎さん、いつもありがとう。とても助かりました」
「またいらして下さい。みんな待ってますから」
「ありがとう。すごく楽しかった」
それは良かったですと言われ、栞が来たので岩戸の方に向かうと思ったら社から帰るというので、そこで初めて繋がっていたのだと知る。
「ここは儂のテリトリーの社じゃから好きなところに出られる。最初は街全体を見せたくて遠回したが、次からはここと、冬弥の社を繋げておくことにするとしよう」
「そんなことも出来るの?」
「普段は閉じておくがな、まだまだ力は有り余っておるよ」
さて行くとするか?と聞かれ、また不思議な感覚に囚われたので待ってほしいと鳥居の階段の手前まで行く。
「どうしたんじゃ?」
「なんかね、ここに今居ないといけない気がするんだ」
「雪翔気のせいじゃないのか?」
「違う……」
祖父母と栞、那智と秋彪。皆が後ろにいるのはわかるが、前からくる何かを待っていないといけない感覚に、説明もできずに車椅子を進めて止まる。
「京弥さん、借りていた本ありがとうございました。届かなくて戻してないんですけど」
「部屋に置いておいてくれたらいいよ。向こうに持っていってもいいけど」
「じゃあ、大きめの地図を借りて行ってもいいですか?」
「そんなのでいいのかい?」
「はい」
「なら出しておくよ。後、これも持っていくといい」
渡されたのは巻物。
「絵巻だよ。小さいものだから、額に入れて飾ってもいい」
「ありがとうございます」
中を見ると兎や亀、狐に狸に狼が描かれており、向こうの絵本の縮図みたいだと言うと、こちらの童話を元に書かれたものだと言われる。
「向こうの絵本全部詰め込んだみたい」
「こちらでは少し話が違うから、その童話集も持って行って読むといい」
「やった!」
「ほんとに本が好きだなぁ。戻ったらまた部屋から出てこないとかダメだぞ?」
「分かってます!ちゃんと外にも出ます」
「じゃあ、もう寝ろ」
「えー。まだ眠くない……」
「明日起きれるのか?」
「うっ……」
最近少し寝坊してるのがバレているかのように見られるので、お土産の団子を渡してから、お休みなさいと言って部屋に戻り布団に入る。
朝起きて、いつものように身支度を整えて土間へと行く。
「おはよう」
「おはようございます。どうかされましたか?」
「うん、あのさ玉子ってある?」
「お飲みになります?」
「え……の、飲まない。ここってあまり卵の料理なかったし、少し借りれないかなと思って」
「構いませんが……」
卵を沢山もらったので割って行き、混ぜて出汁と少しの塩を入れ、軽く混ぜてから鉄の板で焼いていく。
「坊ちゃん、何をお作りに?」
「楽しみにしててね」
そう言っても火加減が難しいので少し焦げたところもあったが、細めの卵焼きを沢山作って、朝ごはんに出して欲しいと頼む。
残りの分は、みんなで食べてほしいと言って、味身代わりに端っこをつまむ。
まぁまぁかなと満足して、移動する時にタケノコを一つつまみ食いして、外に出て庭を一周してから戻る。
そのまま部屋に行ってご飯を待っていると、みんなが早いなと声をかけてくれる。
「ね?早起きできてるでしょ?」
朝餉が運ばれてきて、珍しく卵焼きが出てきたのですぐに雪翔だろうと言われてしまう。
「こっちに、卵焼きってなかったみたいだし、最後のご飯だからみんなに食べてもらいたかったんだよ」
「家の者たちの分も作ってきたんじゃろう?」
「分かっちゃった?」
「雪翔はみんなに優しいからの。それにしても美味い。これからはたまに朝餉に出すように言おうかの」
「良かった。下宿で……そう、栞さん手伝ってたし、なんかその前にも似たことがあった気がするんだ。作ってたら思い出すかなって……」
「雪翔、儂等も行ける時にはそちらに行くし、何もこれが最後ではないぞ?そんなに気を使う必要は無い」
「僕がしたかったんだ。みんなを怒らないでね?」
「分かっておるよ。にしても、幸よ……どうしたのじゃ?」
「いえ、こんなにも綺麗に巻けるものなのですねと思いまして。こちらにはない料理なのでつい」
「出汁と少ししお入れて混ぜて焼いただけだよ?簡単だからみんな出来ると思うけど」
朝食後、紙に作り方を書いて机の上に本と一緒に置いておく。
本を取りに来た時にわかるだろうと、風で飛ばされないように重しをして、周太郎に荷物を運んでもらう。
「周太郎さん、いつもありがとう。とても助かりました」
「またいらして下さい。みんな待ってますから」
「ありがとう。すごく楽しかった」
それは良かったですと言われ、栞が来たので岩戸の方に向かうと思ったら社から帰るというので、そこで初めて繋がっていたのだと知る。
「ここは儂のテリトリーの社じゃから好きなところに出られる。最初は街全体を見せたくて遠回したが、次からはここと、冬弥の社を繋げておくことにするとしよう」
「そんなことも出来るの?」
「普段は閉じておくがな、まだまだ力は有り余っておるよ」
さて行くとするか?と聞かれ、また不思議な感覚に囚われたので待ってほしいと鳥居の階段の手前まで行く。
「どうしたんじゃ?」
「なんかね、ここに今居ないといけない気がするんだ」
「雪翔気のせいじゃないのか?」
「違う……」
祖父母と栞、那智と秋彪。皆が後ろにいるのはわかるが、前からくる何かを待っていないといけない感覚に、説明もできずに車椅子を進めて止まる。
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