下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

文字の大きさ
98 / 102
退学

.

しおりを挟む
「冬弥よ、金の話をしておるぞ?」

「そうですねぇ、前と同じでいいですかねぇ?そろそろ下宿も立て替えたかったんです。あの土地の持ち主は私ですし、他に不動産を持ってもいいと思ってましたからねぇ」

「祟らんのか?」

「それは最後です。水狐、調べを……桜狐と朱狐はもう一人の方を」

「何をするのじゃ?」

「たしかあの母親は議員です。隠し財産から土地家屋などの総資産はかなりのものでしょう。あの小童の方は大したことは無いです。が、それなりに持ってますねぇ。父親もすべて金で解決ですか……今日には空っぽです」

「心の治療費と言われたらいくらあってもねぇ……おいくら位かしら?」

「100万ずつでも多いくらいでしょうな。でもそれで口止めもしておけば、しがない下宿屋、残してもらえるだけでありがたいと思わせないと。後は警察の取り下げは議員の先生にお任せしますよ」

「ええ。容易いことですわ。おほほほほほほ!」

「えーい!胸糞悪い!狐はまだか?」

「もう戻ってきてますよ。あの子達にも神気の欠片を渡してありますので」

「全員出て化けてください。全てのものを前と同じように移してください。今回は登記の書き換えもします。専門の業者に術を。出来ますね?」

狐全員が頷き、素早く行動する。

「彼らが帰る頃には全て私のもの。不動産は元々私の所有物としますから、家に入れないよう表札も変え、近所周辺に多少の記憶の書き換えを。中もカラに見えるようにしないといけませんねぇ。それと、あの母親は不倫してますからそれをマスコミに。金という力を失って、帰る家もない。慌てている間にどん底、娘は勿論贅沢をして暮らしてきてたんでしょうから、貧乏暮らし以上の苦痛は今のところないでしょうねぇ。あぁ、借金はあの女のままで。小童の方の家は大したことはありませんが、すべて出し切ってもらいましょう。それなりのお坊ちゃまですから、同じ貧乏ぐらしで良しとしますか」

「その家はどうするのじゃ?」

「売ります。本日中に……もちろん術で。なので全員出しました。半分以上終わらせれてると思いますよ?」

「儂の狐も貸そうか?」

「では残り半分手伝いに借ります」

「これで終わりか?」

「いいえ?記憶は残しておきますよ?誰も信じなくとも、自白剤、嘘発見器にかけても本当の事を言っていて尚、嘘つきになるんです。今判決待ちの小僧には、毎夜夢と白昼夢出てくるように仕向けてますよ?元は気が弱いのでしょう。既にノイローゼに近いと思います。社会復帰は無理でしょうねぇ」

「あ奴らは?」

「小娘達はちゃんと後からかけますよ?社会復帰なんてさせません」

「戻るか……」

「見届けません?」

「仕方ないのう。それで収まるなら付き合ってやるわい」

その後高級車で帰宅した女の方について行くと、表札が変えられ、車も下ろした途端に買取センターへ。中に入るも鍵が合わず、携帯でどこかに連絡するも繋がらず。慌てふためく母親に、娘が携帯を出すも繋がることはなく、近所の家に駆け込んで追い出される姿が何とも滑稽だった。

手持ちの金で駅前で服を買い、高級ホテルに宿泊。そこからいくつかに電話をかけている。
マスコミの方は遅れているのだろう。

翌日の朝のチェックアウトの時にカードが使えないところまで見届けて、水狐を見張りにつけ、現金はいつものところに隠しておくように指示する。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...