栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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目と目

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「そう!事故現場!あの時後ろからメガネとって……」

「私だとわかったでしょう?」

「だっ、だからって!」

あんな、あんな……密着しなくてもっ!
耳元で話さなくても!
抱きしめられたって勘違いしそうになっちゃったって思い込んじゃったことも!
何より目を隠され……

「そう、目。なんで片目隠したの?」

「姫にも見えると思ったんです。あの時、私は左目を瞑って右目だけで見てましたが、姫よりはかなりはっきりと見えました。一人だと姫が見えた程度にしか見えませんから」

「意味がわからない……」

駐車場に停め、少し歩きましょうかと言われて降りると、目の前は一面の海!

「ここからでも綺麗ですが、展望台に行きましょうか」

階段ではなくスロープを昇っていくと、広いデッキから日が沈んでいくのが見えるのだそう。

「どうぞ」と渡されたカップにはコーヒーではなく温かい紅茶。

「この時間から冷えてきますから。御手洗などはお店の奥にあります」

「後で行きます……」

しばらく頭を整理するのに海を見ながらこの二日半ほどのことを考える。

が……目が同じ。

変なものが見えたのはきっと目の錯覚で、出会ったのは偶然。

うん、結論は出た!

「姫?」と覗き込まれたので、考えて出た結論を言うと「そのうち分かります」とだけ言われる。

夜は学生では来ることなどできないであろうフレンチレストランで食事をし、目のことには触れずに日常の他愛ない話をして20時半に家に送って貰えた。

「朝は何時に家を出ますか?」

「いつも歩きなので7時半に出ます」

「では明日からお迎えに来ますね」
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