栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは

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水の神

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胸元を触ってプールだから外してたんだと気付いた時には黒い塊の手のようなものが腰の辺りまで。

気持ち悪い……

どうしよう。
春を呼ぶにも上に上がらないと叫べない。
何故か息は出来ているのか苦しくないが、暴れようにも水の中では……

ニューッと手のようなものがどんどんと上に伸びてきて、胸周りがものすごく気持ちが悪く、もう限界!と腕を上に大きく突き出す。

何とか上に!

そう思って腕を上下に動かしていると、「シギャァァァ」と変な声が聞こえて下を向く。

足元に渦のようなものが出来ていて、黒い塊がその中に吸い込まれるかのように下の方が消え、胸に張り付いていた腕のようなものも渦の中に消えていく。

しばらく下を見ていると、渦もなくなり、何とかプールの端の手すりまでたどり着くことが出来た。

「姫愛!」

「は、春さん」

「何してたんだ、探したんだぞ!」

「私……どのくらい?」

「居ないのが分かって三十分ちょっとかな。ロッカーも見たし、プールの中もひととおり見たのに居なくて。なのにプールから出てくるし」と頭を搔く。

「そんなに長く?」と手すりを持って上がろうとして、よく考えたら足の着く深さなのに……と今更ながら気がつく。
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