下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは

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港町

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「一度に食べたらダメだよ?」

「あいっ!」と前足をあげて返事する翡翠がとっても可愛かったが、いつの間に覚えたんだろうと金と銀を見る。

「僕達じゃないよ?桜狐さんだよ?」

「ひーちゃん泣いてても、すぐに泣き止ませれるんだよ?」

「へぇ、それで教えられたのかぁ」

「僕達も、挨拶?教えてもらった!」

「どんなの?」

「こんにちは。よろしくどうぞ!」

「なんか違うよ?こんにちはは合ってるけど、よろしくどうぞ!じゃなくて、よろしくお願いしますだよ?」

「あ、そうだった!」

「まだまだ練習しなきゃだめだね」

「難しいよ」

「銀頑張らないと……」

「うん」

二人が話している間、翡翠はベランダの影で昼寝を始めてしまった。気持ちよさそうにしているのでそのままにして、本を開く。


コンコン__

「はい」

「失礼します。……その狐達は……」

「あ、僕の狐達だよ?ほら、挨拶して」

「こんにちは。どうもよろしくです」

と金と銀が頭を下げ、翡翠もキョロキョロしてから同じようにお辞儀をする。

「こんにちは。よろしくお願いします」

「どうしたの?」

「それが、奥様も到着されまして……」

「え?冬弥さんが逃げろって言ってた意味がわかった気がする……」

「逃げろですか?なんとなく意味はわかりますが、お会いしたいとのことで、応接間にてお待ちです。一度会われておいたら後は楽かと」

「風の一族が言うんだからそうした方がいいんだろうね。ちょっと待ってね」

車椅子に移動し、みんなは絵本読んでいたらおとなしいから部屋にいてもいいかと聞くと、大丈夫だと言うので、行ってくるねと部屋を出る。

扉が開き、座っている祖父と横にいる綺麗な人が奥さんなんだろうと「こんにちは」と挨拶をする。

「こんにちは」

上から下までジロジロと見られ、「もう少し太ってもいいんじゃないかしら?」と顎に手を当てて何やら考えている。

「雪翔、車椅子のままでいいから横に来い」

「何を言うか!ジイジの横に決まっておるだろう?」

「そしたら母上が雪翔のことを見れませんよ?」

「そ、そうか?」

那智の隣に行くとお茶が出され、黙ってつい下を向いてしまう。

「母上、雪翔が困ってますから辞めてもらえます?」

「あら、ごめんなさい。本当に『人』なのね」

「そうですよ?それが何か?」

「確かに気は人のそれとはまた違うけれど……細かいことはいいわね。私の事はバァバでいいわよ?それと、晩餐用にスーツを何点か作りたいんだけど」

「那智さん……」

「すぐじゃない。帰る時の前日の夜に着せたいそうだ。作らせておけ」

「ふふ。じゃあ、採寸に行きましょう」
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