下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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夏休み~狐一族温泉観光ツアー前編~

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みんな前より上手に出来ていて、ポーズも決まり満足しているようで、見ていたみんなも上手だったと拍手しているが、さらに歌おうとする紫狐を桜狐や藍狐が止めに入り、しょぼんとして戻ってきた。

「みんな上手だったよ。フリフリに磨きがかかってたね」

「そ、そうなんです!このフリフリのキレが__」と熱く航平に語り出したので、今のうちにと周太郎たちと七輪に火をつけてお鍋が出来るのを待ちながら天麩羅を食べる。

「周太郎さんは一族とは違うの?」

「違いますが、ちょっとした連絡係になってるので、ほかの使用人より接する機会が多いです」

「屋敷の中で我々二人と重次を知ってるのは周太郎位でして、他のものは顔を隠していると全員似たり寄ったりと思ってるかもしれません。航平様も周太郎側ではないでしょうか。武道もできますし」

「使用人てこと?」

「いえ、周太郎は使用人の中でも表立っての護衛みたいなものですから、航平様も負けず劣らずかと思いまして」

「確かに強いけど、一族にはなれないの?」

「頭領の許可があれば」

「だとしてもダメだよ?航平ちゃん人間なんだから」

「分かっておりますが、格闘センスは素晴らしいのでつい」

ついついとか言いながら、更に話が盛り上がっていたので、コソっと隣からエビの天ぷらを奪い、カニの天ぷらもヒョイッと貰ってしまう。

「あ、ああー!坊ちゃん……海老が!」
「カニが……」

「美味しかったー!」

「取っておいたのに……」

「だってみんな話に夢中だったから、天麩羅が寂しそうにしてたんだ。だから僕が……あ、お鍋!」

「火はもう消えてます。ダメですよ?猪肉は我らも好物なので……おお!」

鍋の中を覗いて、好物の猪肉を見つけるとみんなが一気にかきこみ、絶対あげないアピールをされてしまった。

「そんなに急がなくても……」

「米はあるのでしょうか?」

「あ、お婆ちゃんのところだ」

「頂いてきます」

お櫃は四つ置いてあるとのことで一つもらい、雑炊にして最後に食べ、おなかいっぱいだと残りのフルーツが入るか心配していると、まだまだ食べられるといったみんなの表情が一瞬にして変わる。

「どうしたの?」

「今……いえ、消えました。追いますか?」

「大丈夫。白たちに任せてあるんだ」

「いつからです?」

「旅行の前から……」

「坊っちゃまこの事は皆様ご存知なのですか?」

重次に聞かれ、言ってないと返すと「ダメでございます!」と悲鳴のように騒がれる。

「ちょっと……僕も確信なくて。何となくだけど何もしてこないと思うんだ。だから様子見なの」

「何かありましたら我らがお守りしますので」

「うん、ありがとう。それよりも、冷めるよ?」

「あ、猪肉が……」
「やはり米と食すのが一番!」
「ここのは匂いも少ないですね」

それぞれが、好物の猪肉を堪能したあと、デザートにメロンとアイスが付いてきたので、翡翠や金と銀にあげようかなと振り向くと、金はお婆ちゃん。銀は何故か那智の父。翡翠は京弥から貰っており、紫狐は航平から離れていない。

カップルのように「あーん」とメロンをねだっている姿に、冬弥も笑うしかないのか呑気に見ている。

「いいもん、全部食べちゃうもん!」

「坊ちゃん、明日はどうするんですか?」

「周太郎さんたちはいつまで居られるの?」

「御館様と一緒に帰ります。折角の動物だったのに残念でしたね」

「赤ちゃんライオン抱っこしたかったなぁ。明日はどこに行くんだっけ?僕聞いてないけど」
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