下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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非日常

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冬弥と二人で買い物に行くのはかなり久しぶりなので、少し照れてしまう。

「どうかしました?」

「何でもない。山本くんいるかな?」

「もう夕方なので仕事なら帰ってくる頃じゃないですか?」

「大工さんて、何時までなのかな?いつも学校には遅刻してこないけど」

「学校の日だけ早く帰ってるかも知れませんねぇ。気になるなら聞いてみたらどうです?中々いい子じゃないですか。明るいし、はっきり物事を言える賢い子に見えましたけど」

「棟梁に似てるよね?」

「そう言えばそうですねぇ。棟梁も若い頃はモテたとか言ってましたけど、彼もモテそうですよね」

「女子とも仲いいみたいだけど、いつもからかわれてるよ?」

「そんなものじゃないんですか?まだ10代ですし。雪翔も女友達は出来たんでしょう?」

「んー?仲が悪いわけじゃないけど、可愛いとかって言われるよ?男に可愛いって言われても……」

「まぁ、確かに前に言っていた小動物みたいですけどねぇ?」

「それも意味わかんないもん」

話している内に棟梁の家に着いので、塀をつたって歩いていき、チャイムを鳴らす。

「はいよー!誰だい?」

ガラッと戸が開き、立っている姿を見て棟梁が目を丸くしている。

「おいおい、歩けるようになったのか?おーい、龍!ちょっとこっちこい」

「爺ちゃんうるさ……ええー!お前なんで立ってんだよ!」

「そんなに驚かなくても……掴まってないと無理だけど、前より歩けるようになったんだよ?あ、お土産渡しに来たんだ」

お菓子と山本の分だと言ってお土産を渡すと、サンキューと中を見ている。

「おお、青龍か!ありがとな」と頭を撫でられる。

横では冬弥と棟梁が話しており、今度ゆっくりと欄間を見にこいと言われた。

「あ、そうだ!コレ見てください」と山本が冬弥に携帯の画面を見せ、二人で笑っているので覗き込むと、半分口を開いて寝ている自分の写真が目に入る。

「何これ……」

「修学旅行でお前さっさと寝てただろ?クラスじゃない男子まで見に来てた人気ぶりだったから、記念にとって置いたんだ。いるか?」

「いらないから消してよー!」

「まだまだあるぞ?飯食ってる写真とか……」

「雪翔、撮られてるの知らなかったんですか?」

「知ってるのは後で写真ちょうだいって言ったし、男からなんて知らないよ?」

「人気ですねぇ」

棟梁の家を後にして、商店街で必要なものを買って戻る。

「そんなに買わなかったね」

「これで三日は持ちますよ?それに下宿と家とでは食費とか分けてますから」

「栞さんが管理してるの?」

「全部私ですよ?食費とかは渡してありますけど、光熱費とか貯金とかそういったものは全部私がしてますねぇ」

「よく、奥さんに財布握られるってテレビでやってたけど」

「普通はそうなんでしょうが、今まで社で暮らしてたからわからないって言われましてね、それで必要な分だけ渡してます」

「へえ、知らなかった。てっきり栞さんだと思ってたから」

「人間の家族でもそう言った家庭ありますよ?」

「うん。どっちが幸せかってアンケートとかやってたもん」

「結果は?」

「握りたいけど奥さんが怖い」

「何ですかそれ?好きで結婚するのに怖いんですかねぇ?」

「僕にはまだわかんないよ」
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