下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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非日常

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ご飯ですよと冬弥が呼びに来てダイニングに行き、珍しく焼きそばと味噌汁といった簡単なご飯だったのにも驚いだが、その横のお皿に卵で巻いた練り物が置いてある。

「これ何?」

「新作です。食べてみてください」と言われ、いただきますと、一つ口に入れる。

梅としそとチーズの旨みと、巻いてあるのは竹輪。

「竹輪だ!」

「どうです?おつまみにもいいし、お弁当にも良くないですか?」

「これどうやったの?」

「竹輪に縦に切れ目を入れて、しそと梅とチーズをいれて、卵一つを薄くフライパンにひいてクルクルと。三本まで作れたので、6本入の竹輪なら卵二つでできますね。残り半分はきゅうりを入れて卵を巻かなくてもいいかもしれないです」

「僕、きゅうりがあるのも食べたい」

「次のお弁当で入れましょうか」

「うん。おつまみなら、みんな喜ぶね」

「最近は皆さんと飲まないですからねぇ。たまには前のようにおつまみを持って一緒に飲もうかと思いまして」

「お酒が絡むとアイデアが出るんですって。夕餉のおかず考えてほしいのに……」

「家の方は料理の本見てますよね?」

「和食はいいんですけど、洋食も雪翔君の年なら好きだと思って。まだ美味しそうで簡単なもの沢山載ってましたから、お休みごとに挑戦しようと思ってます」

「和食はないんですか?」

「買いましたけど、和食は冬弥様のが上手なので。中華の本もありますよ?」

「酢豚とか良さそうですねぇ。天津飯に、チンゲン菜とイカの餡掛け炒めとか……」

「それは下宿でしてよね?酢豚の時は僕も食べに行きたいけど」

「学校ない日は来てるじゃないですか」

「無い日に作ってね?」

「はいはい。航平君も飲みます?」

「いや、話が済んでからにします」

「だから未成年なの!」

「海外ではもう成人ですよね?」

「国籍がこっちなので、20からになりますけど」

「残念です」

「しっかり飲ませてるのに!」

「雪翔、大抵はみんな乗りで飲んでるぞ?」

「僕、大学怖くなってきた……」

食事を終え、航平と二人で後片付けをし、ちょうど終わったところにインターフォンが成る。
鳴ったと同時にすり抜けてくるので、すぐに那智とわかるのだが、相変わらずスーツを着ている。

「お前病院いってねーだろ!」

「あ!」

「あ!じゃないよ。明日行けよ?」

「そう言えば病院に行ったら連絡しないといけないんでしたねぇ。パパっと治したいんですけど、だめですかねぇ?」

「その糸取れたらいいんじゃないか?」

「それもそうですね。で、どうしたんです?」

リビングの一人用のソファにしっかりと腰を下ろしながら、「航平のことでな」と、ぶっきらぼうに言う。

「今、俺の狐がいくつか回ってるからもう少し待ってくれ」

「はい」

「なんの話なんですか?」

「あー、栞お茶くれお茶」

「那智様も今日は飲まないんですね」とお茶を入れに行き、紫狐たちも大人しく隅っこで遊んでいるので、会話のない空気がとても嫌な感じがした。
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