八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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平穏な日々

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「爺ちゃん!爺ちゃん!」

「そう騒ぐな。大丈夫だ」

「だって、何あれ?普通の人みたいだった……」

「ちょっと座ろうか」

境内まではまだ距離があったが、木でできた長椅子はいろんな所に設置されているので、そこに祖父を座らせて、近くの自販機まで走って水を買いに行き、祖父に渡す。

「あれは───」

少し水を飲んで、祖父が教えてくれたのは、三十年は昔のことで、その時にも祭りの時に現れた物の怪だと言う。

「あれって妖怪的なものなの?」

「大国様が言うには、人の魂が幾重にも重なってできたものと聞いている。だが、普通はあのような形は取れないのだとも。当時は無我夢中で夜な夜な退治に来ていたんだがな、いつももう少しのところで逃げられていたんだ。やっと倒した時には今のように面をかぶり、人の言葉も話すようになっていた……その時見た顔が、私そっくりだったんだよ」

「倒したのに出てきたってこと?それに、爺ちゃんの顔って……」

「人の形はしていたが、元々顔らしきものがあるだけで、人間のような顔は持っていなかったと聞いている」

「だからって真似しなくてもいいのに」

「最初に私を見たからだろうと大国様はいってるが、倒したと思っていたのになぁ……でも、これでもう出ては来ないだろう。かなり時間をとってしまった。また明日にして今日はもう帰ろうか」

「待って!その、爺ちゃんが対峙してる時、鈴を前に出してたでしょ?あれがどうしても剣道やってる時の爺ちゃんに見えたんだけど」

「それか……一日目ではよくわからなかったと思うが、あの鈴から自分の好きな形に変化させることが出来る。と言っても純平や婆さんには無理だがな。あの鈴に自分の気を込めると、自分の得意とする物になってくれるんだが、今回はお前が鉄製の棒を渡してくれたからそこに気を流して竹刀の長さにしただけの事だよ。

翔平も昔、剣道しただろう?お前も剣や竹刀など間合いの取れる物にしたらいいと思うが、どのような形で出るのかは私にもよくわかってないんだ」

祖父と夜道を歩きながら質問ばかりしていると、「お散歩ですか?」と近所のおじさんとおばさんがウォーキングをしているのに会った。

挨拶をすると、「仲がいいのね」と言われたが、どうしてもさっきみたやつのことが頭から離れずに、本物の近所のおじさん達か?と疑ってしまう。

「行くぞ、翔平」と言われて家に着くまで祖父にわかるところだけでもと教えてもらい、家に着いてからは、いくつかの剣道などの本を借りた。

「どうだった?なんか変な匂いするけど」

「変な匂い?迦具土だけに分かるのかな?」

「妖にしては匂いが濃い……が、害はないようだな」

あのお面の人か!と思い、迦具土に今日の出来事を話す。

「俺も爺ちゃんみたいに出来るのかな?」

「お前次第だろ?俺は夜誰もいなければ炎で滅するだけだから楽なもんだ」

「この鈴、すごいものだったんだね」

「鈴がすごいんじゃない。爺さんがすげーんだ」

「爺ちゃんが?」

「具現化……えっと、漢字で書くとこうか?文字通りだな。爺さんは前当主、現当主補佐となる。それなりの力がないと出来ない事だ。それに、剣道をやっていたからか、集中力がすごいんだ。反射神経もいい」

「なぁ、俺にないものばっか言ってないか?」

「まぁ聞け。多分今日は鈴の使い方を教えるだけだったと思う。お前の話聞いてると、最初は力の制御ができてなかったみたいだし、集中すれば魔を追い払うことの出来る武具があの鈴を媒介にして出るはずなんだ。爺さんは祭りまでにできるように慣らして行こうと思ってたんだろーけど……明日は俺も着いてく事にする」

今日はよく休んでおけと言われてベッドに横になりはしたが、祖父の姿を思い出してしまい中々寝付けない。

仕方がないと、本を読みながら、四時頃にやっとウトウトとして起きる。

眠い!

眠いのに眠くない!

遠足の前の日の小学生か俺は!!!
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