八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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石長比売の決断

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それから暫く、大国さんの計らいもあって、兄は会社を有給休暇と言う形を大国さんの術で何とかしてもらい、一週間家で寝ている間ずっと問題集を解かされまくった。

しかも俺の部屋で寝るとかやめて欲しい……


「兄貴、下の部屋で寝たらゆっくり出来るよ?」

「今いるうちに、お前の頭に数学と英語を叩き込んでやろうと思ってな」

「いいよー。無理すんなよー」

「翔平、今のお前のペースで試験受けて行けると思うか?」

「それ言うなよ!」

「塾は行きたくないんだろ?」

「もうどこも一杯だし、俺、あの雰囲気で気持ち悪くなるから無理」

「じゃあ、文句言うなよ?それと、治ってからも毎週金曜に帰ってきて、月曜はここから出社するから」

「はぁ?兄貴体壊すよ?」

「普通はお前が壊すんだバカ!」

バン!と、扉の開く音がし、「うるさい馬鹿兄弟!」と割烹着にお玉を持った迦具土に怒られ、ご飯だと呼ばれる。

この一週間は馬鹿とアホしか聞いてないような気がする。

しかも、大国さんからの連絡が無いので、あれからどうなったのかも分からない。

「よう!」

「大国さん!」

「飯を食いに来た。報告も兼ねてな」

飯がメインだろう?とものすごく言いたいが、ここはちょっと我慢。

「先に手を洗ってきなさい。迦具土君に怒られるわよ?」

あれから何も聞かされてなかったのか、迦具土も気になっていたらしく小姑魂に火がついたように口うるさくなっていたので、いい報告ならば静かになってちょうどいい。

「祖母殿、今夜はすき焼き鍋と言っておいたが……」

「用意してありますよ。大国様も座って下さいな」

相変わらずの子供茶碗に大盛りのご飯を入れてもらい、祖父が牛肉を鉄鍋に入れていくのを、涎でももう垂らすんじゃないかと言うほどに見入っている。

食べ慣れてるんじゃないのか?

しかも、暑いのに鍋って……

ジュゥゥゥッというお肉の焼ける音と香りに、目をキラキラさせながら、出来ていくすき焼きを見つめて、まだか?まだか?と聞いているので、卵をお椀に割ってくれと言って見本を見せると、今度はこれでもかという程に卵を混ぜているが、ただ回していただけなので卵がちゃんと混ざっていない。

「大国さん、貸して下さい」

「何だ?混ぜたぞ?」

「それ混ざってませんから!」

ケラケラと笑う兄が面白がってお椀を横から取り上げ、綺麗な黄色になるのを見せながら卵を解し、大国さんに渡すと、「おお、純平は優しいな!最近みんな意地悪でいかん」とさり気なーく愚痴をこぼしている。

祖父が煮えたお肉を大国さんのお椀に入れると、「ぉぉお!源三郎のすき焼きか!」

そう言いながら、一口……で食べられる訳もなく、ふーふーとしながらお肉を頬張り、「美味い」とお肉コールをしている。

「大国さん、豆腐とかも食べないと」と兄がお椀に豆腐やしらたき等入れていると、椎茸を見てとても嫌そうな顔をしながらこちらを見てくる。

「大国さんてしいたけ嫌いでしたっけ?」

「デカイのはなんとも……昔、笑い茸を食べてからは丸ごとはちょっとな。細かく切ったやつしか食べてな……「食え!」

面白がった迦具土が、えのきではなくしいたけをいくつも入れているので、流石の大国さんも「入れすぎだ馬鹿野郎!」と喧嘩が始まる。
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