八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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石長比売の決断

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お菓子売り場でこれでもかというほどお菓子を詰め込んだ子供用のカゴ。

300円を遥かに超えて、祖父はよく食べているせんべいまで手に持っている。

「お爺さん?そのお菓子の山は何かしら?」

「いやな、昔の菓子が沢山あってつい……」

「お菓子は300円までですよ?一週間分でね?」

「そ、祖母殿……ダメか?」

「ダメです!……と言いたいところですけど、石長さんへのお見舞いということで、ちゃんとおすそ分けができるのならいいですよ?」

「祖母殿ー!」

「おい、やるだけじゃだめなんだぞ?」

「なんだ、迦具土も欲しいのか?」

「要らんわ!」

「そうねぇ。買い物袋に入れるところに、小さな袋があるから、そこで三つに分けましょうか」

「み、三つ?何故だ!俺の取り分が……」

「大国さんと兄貴と石長さんの三人の分ですから」

悲鳴と言うよりも、既に青ざめている大国さんを何とかなだめて、お会計をして三つに分ける。

あれはダメこれはダメと文句を言うので、適当に三つに分けて袋に入れると、しっかりとツヤッツヤのほっぺはこれでもかと言うくらいに膨らんでいた。

家に帰ってただいまと言おうとしたが、二人の言い争いが聞こえてきたので、荷物を置いて部屋に行くと、布団の上に立って怒っている石長さんと、同じく腕を組んで仁王立ちの兄。

俺達が買い物に行ってた間に何があったんだ!

それでも手洗いとうがいと言われて洗面所へと行き、迦具土と大国さんと戻った時には祖父母は台所で手洗いなどをしたらしく、冷蔵庫に色々ろと詰めている所で、「まぁ、夫婦喧嘩みたいなものにしか聞こえないが」と祖父も呑気に言っている。

「兄貴……ただいま」

「おう、お帰り。翔平、この頑固な石長さんがお前の姉になるのは嫌か?」

「は?え?姉?」

「姉だとー?」

「まぁ、人間のルールには従えん夫婦とならなれるがな」

早速、おやつの袋をどれにしようか選んでいる大国さんは、サラりと怖いことを言ってのけ、驚いているのは俺と迦具土だけ。

祖父母は呑気に夕飯の支度を始めてしまった……

一体なんの話をすれば結婚となるのか意味がわからない。

「ちょっと二人とも落ち着いてよ。とにかくこっちの居間で座って話したら?」

そう言ってお茶を取りに行き、祖父母に結婚がどうのこうのと言っていることだけ伝えると、「純平が決めることだしなぁ」などと呑気なことを言っている祖父に、「あら、お赤飯炊くのには今日は無理ねぇ」等と祝い事をしようとしている祖母。

「ご飯の支度の前に来てよね?」

それだけ言って、みんなのお茶を持って行くと、あぐらを書いて腕を組んでる兄に、正座をしてプルプルと怒りをあらわにしている石長さん。

「迦具土、怖いよあの二人」

お茶をみんなの前において、話を聞こうとしたら、「あー、これは駄菓子と言ってだな、ほれ、石長に見舞いだ。このいちばん美味しそうな菓子をやる。源三郎と選んだんだぞ?こっちは純平にだ」

「ありがとうございます」

「大国様、ありがとうございます。後で頂きますので机に置いて下さいませ」

「わ、分かった……それより結婚だが……」

「大国様、私の気持ちはもう話してあります。なのに……なのに純平さんが!!!」

「落ち着け。純平、お前、話を聞いた上で何と言ったんだ?」

珍しく大国さんがまともなことを言っている。
それだけでも奇跡なのに、兄は「離れるくらいなら一緒になればいいと言っただけだ」と言う。

全く、雰囲気のひとつもない……が、兄に惚れているはずの石長さんは喜びこそすれ、なんで怒っているのだろう?
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