八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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石長比売の決断

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パチン___

いきなり祖母が兄の頬を叩き、「だから言ったでしょう?お爺さんも……石長さんは大切なお嬢さんだから、軽はずみな気持ちで接してはいけないと……。

どれだけあなたが真剣だったとしても、石長さんの気持ちを全く考えてないわね!お婆ちゃんガッカリ!ちょっと頭冷やしてきなさい!そして、あなたは真剣だったかもしれないけど、それが石長さんにちゃんと伝わってなかったことを反省しなさい!

女はね、ちゃんと言葉で言って貰わないとわからない生き物なのよ。きっとそれは神様だって同じだと思うわ!」

「ば、婆ちゃん……」

「翔平は黙ってなさい。これは純平が悪いわ!ほら、とっとと頭冷やしに行く!」

しょんぼりとしながらも、兄が玄関の方に行くので追いかけていこうと立ち上がるのを祖父にとめられ、渋々背中を見送る事に……

「婆ちゃん、あんなに言わなくても」

「良いんですよ。純平はあのくらい言わないとわからない子だから。いい?どれだけお勉強ができても、いい会社に入っても、それだけじゃあダメなのよ?

純平は要領がいいから、人付き合いもそれなりに上手くやってきたんだろうけど、それは表面上のこと。全てとは言わないけれど、きちんと向き合わないといけない人とは、会話だけじゃダメなの。

ちゃんと、相手の立場にもたって、その気持ちも分かるようにならないと……」

祖母がそこまで怒ったり、誰かに何かを言うことは殆どないので、祖父も大国さんも黙ってしまい、迦具土は何となくだが少し落ち込んでるようにも見える。

「そ、祖母殿……その、俺達神は、祖母殿の言うように人々は沢山見てきたが、そこまで考えたことは無かった。

少し、我々も心というものをもっと考えねばならんのかもしれん」

「あらやだ、あれは純平に言ったことですよ?だって、相手が何を考えてるかなんて見ただけでは分かりませんもの。沢山話しをして、相手の気持ちも考えて……そうすると段々表情から分かるように……なるのは私達くらいになってからかしらねぇ?お爺さん」

「おいおい……私は未だに突然怒る婆さんの気持ちは……わからんことも無いが分からんぞ?」

「あら、そうでしたの?ほほほ」

なんだかんだと惚気けるな爺ちゃん達!

真剣な顔で何かを考えている神様二人。

とりあえず、お茶を入れ直して、駄菓子で誤魔化してみるか……

車の音はしなかったので、多分歩いて公園にでも行ってるのかもと思いながら、大国さんにご飯の前だけどと駄菓子を勧めると、目をキラキラさせながら袋を見て、「いや、純平が帰ってきてからにしよう」と開けた袋を括り直している。

明日大雨にならないといいのだが。

祖母がご飯の支度をしてくるというのを、迦具土が手伝いに行き、大国さんには祖父が色々と婚姻のことなどを聞いているので、一緒に聞きはするものの、頭に全然入ってこない。

「大国さん、何とかならないのかな?」

「なんとかと言ってもなぁ」

「だって、恋愛の神様なんでしょ?」

「まぁ、そうなるんだが、こればっかりは石長次第じゃないか?あいつも好意を持ってるのは確かなんだ。ただ……昔のことが気になってはいるだろうし、無理強いさせる訳にもいかんし……」

「爺ちゃんはいいの?」

「私は純平がいいと言うのなら構わんよ?ただ、人と神様とでは寿命が違うだろう?石長さんもそれを気にしてるのではないかと思ってなぁ」

「あ……」
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