八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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神気と力

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「よっこいしょ」

呑気に座ってんじゃねぇ!!!

「そろそろ迦具土も来る頃合いかの?」

「多分。晩御飯用のお重取りに戻ってます」

「ならば、とっとと呼ぶとしよう」

パン__

手を鳴らしたと思ったら、土間に迦具土。

しかもかなり怒っている。

「ジジイ、てめぇ、突然歩いてる俺が消えたら周りがビックリするだろーが!」

「誰もおらんかったじゃろう?」

「もしもだもしも!」

「にしても大荷物よのぅ。自転車というのにはのらなんだか?」

「無理だろ……」

渡された紙袋の中には、三段の重箱と二段の重箱。
それとは別に風呂敷包みがあったので、これはおにぎりか何か。
水筒は一番大きいものが多分味噌汁かなにかだろうと予測しながら開けていくと、二段の重箱は素麺。

薬味もラップで隅に置いてあるが、どう食えと言うんだ!

「えーと、紙コップに入れて食うのに三つ渡されて、このでかい方が氷入りの麦茶。これのコップはこの大きい方の紙コップらしい。あと、タオルを渡されたんだが」

「あ、水筒の下に敷くようだと思うよ。暑いから氷溶けると思うし。いつも念の為って敷いてるから」

「もう出すのか?」

「そうだね。その後におやつ出そうかな……大天狗さん寝ちゃったし、タイミングがなくて」

準備していると、八意さんが大天狗さんを起こし、「儂の分は?」としっかり聞いてくるので、「無いです!」と一言。

「今日はたのむのをわすれておったんじゃ」

紙皿を渡し、紙コップにつゆを入れて重箱の一段を渡すと、ヨダレが垂れそうな程に見ている八意さん。

「後で食べに行こう」と言ったのはしっかり聞いたからな!

「八咫烏さんはどうします?おにぎりとか?」

「何でも。余りたくさんはいいです」

お昼も少なかったしなぁと、玉子焼きにひと口ハンバーグ、おにぎりと置いていくと、とりあえずこの位でと言われたのだが、あまりにも少なすぎやしないか?

後でポテチを多めにあげようと思い、自分達もいただきますと箸をつける。

「あ、時雨だ」

おにぎりの具が時雨だったので、珍しいなぁと思いながら食べていると、大天狗さんは素麺を器用にすすり、冷たいお茶が気に入ったのか、特に氷を口に含んでは「暑さが吹き飛ぶ」と言って喜んでいる。

素麺のところに氷入れて置いてくれて助かったよ……

「あ、お酒どうします?」

「素麺の後で……」と黙々と食べる大天狗さん。

おかずは酒のあてにするのかな?と迦具土を見ると、白い瓢箪のようなものに入れたお酒を八咫烏にあげている。

お神酒のこと忘れてたよ……

結局、お酒とおつまみを八意さんと大天狗さん二人で食べて飲んでるので、ちょこっと八咫烏にも渡し、「食べて早く元気になってくださいね」と言う。

「翔平、実はな……」

「嫌です」

「まだ何も言うておらんではないか」

「嫌な予感しかないですけど。それに俺、受験生!丸一日机にかじりついてるはずの受験生!」

「分かっておる。じゃが、体に変調があるようじゃしの」

「知ってたんですか?」

「何となく。儂らの神気とは少し異なるようで、それをこの大天狗に見てもらいたかったのもあるんじゃ」

ちゃんと考えてくれてたんだ!

「でじゃ、この夏休みの終わりまで、大天狗と八咫烏と共に、橿原神宮まで熊野からついて行ってくれんか?」

「またそんな無茶を……」

「確かに、山越えは無理であろう。人の足でどのくらいかかることか……」

「熊野古道というのを知っておるか?」

「聞いたことありますけど……」

大峯奥駈道 おおみねおくがけみち。玉置神社から奈良県の吉野、金峯山寺きんぷせんじまで。とても厳しい山で、五日から六日はかかる。翔平、まずはその山を登ってみんか?」

「はい?」

「一般の登山道ではないし、安全な道でもない。熊野那智大社から、玉置神社までは大天狗と八咫烏とで行っておるんじゃ。目的地は橿原神宮。前に奈良に行ったところからはだいぶ離れておるが……その力のことやこれからの事、自分の中で何かわかるかもしれん」

ただの登山とは違うこと、登ることによって何かを得る得ないは自分自身だということ。

もちろん迦具土も一緒と言われたが、歩く速度によって一週間は見ておいた方がいいこと。

「祖父母と話してからでいいですか?」

「構わんよ。明日はいいからよく考えてから来なさい」

そう言われて、片付けられるものだけ片付けて、今日は一旦帰ります。と、茅葺き屋根の家を出る。


帰宅して直ぐに祖父母に話すと、「いいんじゃないか?」と簡単に言ってくれる。

「でも……」

「大天狗様と八咫烏様をお送りするとも考えられるし、仕事と思ってまず行けばいい。その中で翔平がどう感じるのか、それはお前次第だしな」

そう言って、「確か純平の……」と言いながら、リュックなどを漁る祖父。

「靴は買わないとねぇ。明日2人のを買ってきなさい」と祖母にも言われ、つくづく逃げられない!と思ったのは迦具土も同じようだったようだ。
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