下宿屋 東風荘 8

浅井 ことは

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浮遊城の水盆

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ガックリと肩を落としながら、「侑弥も早く習い事をさせねばのぅ」と言いながら、栞と一緒に侑弥と遊んでいる姿は、普通のお爺ちゃん。

たまに、突拍子のない行動をとるが、基本みんな穏やかな性格の家族だと思っていたのだが、その子供たちは暇だからとやっていることがスゴすぎる。


「航平ちゃん、僕、四月から三年でしょ?今から緊張してきた……大学入れるかなぁ」

「雪翔は慌てなければ大丈夫だよ。もっと自信を持たないと」

「だって、テストの度に倒れそうに緊張するんだもん。みんな頭いいんだから持ち回りで教えてくれないかな」

「んー、那智さんでも、今の数学とかはどうなんだろう?昔とは違うって言ってたし、歴史なんて年号変わったのもあるし」

「あ、そっか。だったら、隆弘さんと賢司さんと堀内さんに頼むしかないかぁ」

「海都のこと忘れてない?あいつも大学生になるんだよ?」

「バイトばっかり行きそうなんだもん。そんなようなこと言ってたし、テスト前に慌てそうでしょ?」

「毎日コツコツとやれば良いだけなんだけどな」

「僕、もっと頑張らないと!」

「いやいや、雪翔はもっと遊べ」

「那智さん、ほんとに無理?」

「あー、数学位なら分かるが。仕事柄毎日のように見てるからな。教えるのは無理だ!前に航平の昔の教科書みた時に、答えはあってるが解き方が違うとか言われたからダメだろう?」

「公式覚えて……」

「航平に教えて貰え。三郎、周太郎と庭に石と網を置いてきてくれ。今夜は多分庭で食事だろうから」

「畏まりました」


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