18 / 73
居候
.
しおりを挟む
食事を終えるとそのまま皆が雪翔に教えていたので、後は任せて自室に戻る。
「橙狐」
「はいな」
「誰か来たら私の振りをしておいてくださいね。少し出掛けてきますから」
「雪翔様はどうされますか?」
「あの子が来たら出掛けてるって言ってくれたらいいよ」
頼んだよと言って姿を消して社へと行く。
「神酒はもらってるよ」と琥珀が言うと、漆は今日の揚は上物だったと堪能していたらしい。
「誰か来ました?」
「いつもの老人が犬の散歩ついでにここに来たが、それ以外は小さい子達ばかり遊びに来て宮司が困っていたよ?」
「それはいつもの事でしょう?違う方です」
「野狐が来たから追っ払ってやったが、嗅いだことのない臭いだった」
「あれは臭かったね」
「臭いですか?」
「どんな臭いかわかります?」
「ほら、人間の女がつけるような臭い」
「そう、蜜柑のような臭いだった!我らは鼻が利くが、あのような臭いはごめんだ」
「わかりました。引き続きお願いしますね」
「なにかあれば呼んでくれても良いぞ」
「その時が来たらにしておきます」
そのまま社の外に出て冬の社へと向かう。
近くにプレハブの家ができており、工事関係か発掘の方かはわからないが明かりがついている。
社にも電気が通されたのか中の改装など行われ、補強などもしているのか外には幕が張られているが透けて見えるので意味はない。
「臭いますねぇ。蜜柑も食べるのは美味しいのに、変な臭いがついているのは困りますよねぇ」
社の裏の古墳のところにも人は数人いたが、木の上に見知らぬ狐が一匹。太い枝に寝そべってこちらを見ていた。
「あなた誰です?」
「どうも。東風神社の狐さんだよね?」
「そうですけど。あなたが那智の言っていた狐ですか。こんな所にいないで那智の世話にでもなったらいかがです?」
「旦那がここにいろって言うからさ。その内ここにも御信託が来るだろう?それを俺が受けてやろうと思ってさ」
生意気な口を聞く狐だと思いながらも、「きっとあなたには降りないでしょうねぇ」と少し嫌味な風に言う。
「何でそんなことがわかる?」
「那智にもわかっていると思うんですけど、あなた何か術かけたでしょう?」
「俺にはまだそんな力はないよ。親父様が行けって言うから来てやっただけだ。少し巻物と、この粉で操らせてもらったけど。夏の狐も大したことないね」
「そうでしたか。臭いの正体はその粉なんですね?まぁ、そんなものにかかるほど那智は甘くないと思っていたんですけどねぇ?」
「簡単だったけどな。それにこの地の狐は弱いと聞いているし。俺が総代勤めてやっても良いんだけど?」
「それでここの狐も手にかけたんですか?」
「あれは放っておいても死んだだろう?楽にしてやっただけだよ。ちょっとこの粉の臭い嗅がせただけだけど」
「その粉はなんなんです?」
「しらね。何でもできるとは聞いてるけど」
「ほう……」
あの粉もそうだが、巻物さえ奪えばどのような術がかけられたのかもわかるだろう。
千年祭を飛ぶのには雪翔の力も必要だが、妖怪などの雑魚の邪魔なども入るので、やはり那智や周りの援護は必要となってくる。
「ここから出ていってはくれないのですよねぇ?」
「無理だ。信託が起きずともここにいるように言われている」
「なら仕方ありませんね。みなさん出てきていただけます?」
影から残りの狐をだし、中のものは任せましたと狐に向かっていく。
「何を……」
「邪魔なものは排除しないとねぇ。ここの神社に来る狐ならきっと前狐が決めてると思うんですよ。あのじいさんはその事には長けていましたから」
「俺を殺しても意味はないぞ!」
長い爪で引っ掻くように攻撃しただけで意図も簡単によろけてしまう。
「今ですよ」
コン__
「あ!」
「上出来です。皆さん戻ってください」と、手に巻物と袋を握る。
「お前!」
「あなたの親父様とか言う人に伝えてください。東がいる限り勝手なことはさせないと」
「また他のやつが来る。団体様でな」
それだけ言って姿を消してしまったので、臭い袋には術をかけて臭いがしないように封をする。
「この巻物に使い方が書いてあれば良いのですけどねぇ」
しばらく誰も来れないように結界だけを強化し、のんびりと歩いて帰りながらいつものように辻にいるモノを適当に祓っていく。
家についたときにはすでに夜も更け、誰も来ていないとの事で布団も敷いてあったので、そのまま横になり眠ることにした。
朝にいつものように起きてから土間へと行くと、板の間でお茶を飲みながらテレビを見ている雪翔がいた。
「お早うございます。早いですねぇ」
「いつも6時には起きるので。お茶もらいました」
「いいですよ。ここはみんなの使う共有の場ですから、テレビでも見てのんびりしていててください」とだけ言って朝餉の支度を始める。
朝はほとんど同じメニューになるが、ほうれんそうのお浸しに、人数分の鮭を焼き、卵焼きを焼く。それらを平皿に置いて机に並べ、ご飯や味噌汁もお櫃と保温器にいれる。
手伝いますと言われ、机に運んでもらうが、後は漬け物を出すだけだったので、みんなを起こして来るように頼む。
「橙狐」
「はいな」
「誰か来たら私の振りをしておいてくださいね。少し出掛けてきますから」
「雪翔様はどうされますか?」
「あの子が来たら出掛けてるって言ってくれたらいいよ」
頼んだよと言って姿を消して社へと行く。
「神酒はもらってるよ」と琥珀が言うと、漆は今日の揚は上物だったと堪能していたらしい。
「誰か来ました?」
「いつもの老人が犬の散歩ついでにここに来たが、それ以外は小さい子達ばかり遊びに来て宮司が困っていたよ?」
「それはいつもの事でしょう?違う方です」
「野狐が来たから追っ払ってやったが、嗅いだことのない臭いだった」
「あれは臭かったね」
「臭いですか?」
「どんな臭いかわかります?」
「ほら、人間の女がつけるような臭い」
「そう、蜜柑のような臭いだった!我らは鼻が利くが、あのような臭いはごめんだ」
「わかりました。引き続きお願いしますね」
「なにかあれば呼んでくれても良いぞ」
「その時が来たらにしておきます」
そのまま社の外に出て冬の社へと向かう。
近くにプレハブの家ができており、工事関係か発掘の方かはわからないが明かりがついている。
社にも電気が通されたのか中の改装など行われ、補強などもしているのか外には幕が張られているが透けて見えるので意味はない。
「臭いますねぇ。蜜柑も食べるのは美味しいのに、変な臭いがついているのは困りますよねぇ」
社の裏の古墳のところにも人は数人いたが、木の上に見知らぬ狐が一匹。太い枝に寝そべってこちらを見ていた。
「あなた誰です?」
「どうも。東風神社の狐さんだよね?」
「そうですけど。あなたが那智の言っていた狐ですか。こんな所にいないで那智の世話にでもなったらいかがです?」
「旦那がここにいろって言うからさ。その内ここにも御信託が来るだろう?それを俺が受けてやろうと思ってさ」
生意気な口を聞く狐だと思いながらも、「きっとあなたには降りないでしょうねぇ」と少し嫌味な風に言う。
「何でそんなことがわかる?」
「那智にもわかっていると思うんですけど、あなた何か術かけたでしょう?」
「俺にはまだそんな力はないよ。親父様が行けって言うから来てやっただけだ。少し巻物と、この粉で操らせてもらったけど。夏の狐も大したことないね」
「そうでしたか。臭いの正体はその粉なんですね?まぁ、そんなものにかかるほど那智は甘くないと思っていたんですけどねぇ?」
「簡単だったけどな。それにこの地の狐は弱いと聞いているし。俺が総代勤めてやっても良いんだけど?」
「それでここの狐も手にかけたんですか?」
「あれは放っておいても死んだだろう?楽にしてやっただけだよ。ちょっとこの粉の臭い嗅がせただけだけど」
「その粉はなんなんです?」
「しらね。何でもできるとは聞いてるけど」
「ほう……」
あの粉もそうだが、巻物さえ奪えばどのような術がかけられたのかもわかるだろう。
千年祭を飛ぶのには雪翔の力も必要だが、妖怪などの雑魚の邪魔なども入るので、やはり那智や周りの援護は必要となってくる。
「ここから出ていってはくれないのですよねぇ?」
「無理だ。信託が起きずともここにいるように言われている」
「なら仕方ありませんね。みなさん出てきていただけます?」
影から残りの狐をだし、中のものは任せましたと狐に向かっていく。
「何を……」
「邪魔なものは排除しないとねぇ。ここの神社に来る狐ならきっと前狐が決めてると思うんですよ。あのじいさんはその事には長けていましたから」
「俺を殺しても意味はないぞ!」
長い爪で引っ掻くように攻撃しただけで意図も簡単によろけてしまう。
「今ですよ」
コン__
「あ!」
「上出来です。皆さん戻ってください」と、手に巻物と袋を握る。
「お前!」
「あなたの親父様とか言う人に伝えてください。東がいる限り勝手なことはさせないと」
「また他のやつが来る。団体様でな」
それだけ言って姿を消してしまったので、臭い袋には術をかけて臭いがしないように封をする。
「この巻物に使い方が書いてあれば良いのですけどねぇ」
しばらく誰も来れないように結界だけを強化し、のんびりと歩いて帰りながらいつものように辻にいるモノを適当に祓っていく。
家についたときにはすでに夜も更け、誰も来ていないとの事で布団も敷いてあったので、そのまま横になり眠ることにした。
朝にいつものように起きてから土間へと行くと、板の間でお茶を飲みながらテレビを見ている雪翔がいた。
「お早うございます。早いですねぇ」
「いつも6時には起きるので。お茶もらいました」
「いいですよ。ここはみんなの使う共有の場ですから、テレビでも見てのんびりしていててください」とだけ言って朝餉の支度を始める。
朝はほとんど同じメニューになるが、ほうれんそうのお浸しに、人数分の鮭を焼き、卵焼きを焼く。それらを平皿に置いて机に並べ、ご飯や味噌汁もお櫃と保温器にいれる。
手伝いますと言われ、机に運んでもらうが、後は漬け物を出すだけだったので、みんなを起こして来るように頼む。
0
あなたにおすすめの小説
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】『左遷女官は風花の離宮で自分らしく咲く』 〜田舎育ちのおっとり女官は、氷の貴公子の心を溶かす〜
天音蝶子(あまねちょうこ)
キャラ文芸
宮中の桜が散るころ、梓乃は“帝に媚びた”という濡れ衣を着せられ、都を追われた。
行き先は、誰も訪れぬ〈風花の離宮〉。
けれど梓乃は、静かな時間の中で花を愛で、香を焚き、己の心を見つめなおしていく。
そんなある日、離宮の監察(監視)を命じられた、冷徹な青年・宗雅が現れる。
氷のように無表情な彼に、梓乃はいつも通りの微笑みを向けた。
「茶をお持ちいたしましょう」
それは、春の陽だまりのように柔らかい誘いだった——。
冷たい孤独を抱く男と、誰よりも穏やかに生きる女。
遠ざけられた地で、ふたりの心は少しずつ寄り添いはじめる。
そして、帝をめぐる陰謀の影がふたたび都から伸びてきたとき、
梓乃は自分の選んだ“幸せの形”を見つけることになる——。
香と花が彩る、しっとりとした雅な恋愛譚。
濡れ衣で左遷された女官の、静かで強い再生の物語。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
男装官吏と花散る後宮〜禹国謎解き物語〜
春日あざみ
キャラ文芸
<第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。応援ありがとうございました!>
宮廷で史書編纂事業が立ち上がると聞き、居ても立ってもいられなくなった歴史オタクの柳羅刹(りゅうらせつ)。男と偽り官吏登用試験、科挙を受験し、見事第一等の成績で官吏となった彼女だったが。珍妙な仮面の貴人、雲嵐に女であることがバレてしまう。皇帝の食客であるという彼は、羅刹の秘密を守る代わり、後宮の悪霊によるとされる妃嬪の連続不審死事件の調査を命じる。
しかたなく羅刹は、悪霊について調べ始めるが——?
「歴女×仮面の貴人(奇人?)」が紡ぐ、中華風世界を舞台にしたミステリ開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる