天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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魔界城

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食堂に着くとすでに夕食の準備ができていて、人数分揃っている。

「エマさんはニコルさんの婚約者だから?」

「エマは親父の侍女だ。侍女と言うよりは、我が儘に付き合う世話役のような感じかな?」

「ルーカス様を追いかけるのはニコルの役目、魔王様の我が儘を聞くのが私の仕事かしら?」

「とにかく食べて寝よう。明日は人間界だ!」

「その事なんだが……」

「何か問題でも?」

「ニコルとエマなんだが、いい加減結婚させようかと思ってな。人間界に連れてってももいいか?」

「いいぞー!」

「いいぞってどこに住むの?あ、家?」

「奏太、流石にそれは野暮だろう?俺もいつまでも居候するわけにはいかないから、そろそろ家でも持とうと思ってな。お前らの家の近くと言っても裏に空き家があっただろう?そこを買った。裏にもう一軒小さいが家もあるから、そこに使用人は住ませる。ニコルには隣の家を用意した。今改装中だ。あ、もう終わってるかもしれないな」

「日用品は天満鍋セットを送ってやる。隣とはいえ、通いとはなかなか粋な計らいだな」

「普通通いじゃないの?」

「奏太、お付きは同じ屋敷に住むのが習わしだ。何時なんどき何があるかわからんからな。まぁ、どちらにしてもルーカスもエマも家の屋敷に居ることの方が多くなるだろう?」

「まぁな。エマには了承はもらってるから……」

「何するの?」

「夫婦でbar天満をやってもらう。魔は夜の種族だからな。エマ一人でもできるから、ルーカスが本社に居るときにはニコルも移動しやすいだろう?」

「うん」

「後は前と同じだ。天幻魔界は王族の言うことは聞く。ニコルの嫁になったのならエマもお付き同様だ」

「新婚旅行は?」

「なんだそれは?」

結月の一言で全員の視線が集中する。

結婚したもの同士が旅行に行くこととは説明したが、魔界にも幻界にもそのようなものはないらしく、みんな興味津々だった。

「いいじゃない。ルーカス様行ってもいいですか?」

「構わないが、奏太、どのぐらいいなくなればいいんだ?」

「居なくなるって……旅行だから一週間ぐらい外国とか行くとか」

「人間界が外国みたいなものよ。私、昔ロンドンにいたの。100年ぐらい。だから、そこ以外がいいわ」

「奏太、結婚に必要なことはお前が手伝ってやれ」

「結婚式も?」

「そうだ」

「わかったよ。でもあまり期待しないでよ?」

そんな話をしながら食事を済ませ、それぞれが部屋に戻りゆっくりとする。

「ノアもゆっくりしなよ。それに、俺ノアが居なかったら無事にここまでこれなかったと思う。ありがとう」

「そんな、私は何も……」

「まだちょっと帰れるのか不安なんだけど」

「大丈夫です。帰れますよ?ですのでもう休みましょう」
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