【R18】紅い眼が輝く時

ノプリー

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「・・・・君は一体何をしているんだ?」

怒っている風でもなく、ただ疑問を口にしたその様子に、エルナはとりあえずほっとした。駆けてきたせいで息が上がっていたのが、ようやく少し落ち着いて来た。

「申し訳ありません。少し用事があって出掛けたのですが、遅くなってしまって。今、夕食の準備を・・・・・」

と、そこで旦那様がシャツ一枚だけなのに気が付いて、肩のショールを取った。

「こんな薄着ではお風邪を召されます」

旦那様の首にぐるぐると巻きながら、小さい頃のイザベラにも、こうしてよくマフラーを巻いてあげたりしたなぁと思い出した。今は旦那様が座っているのに対してエルナが屈んでいる状態なので、目線がわずかに上だからだろうか。

エルナはまるで小さい子どもにやってあげるように、服に付いている小さな葉や草切れを払い、顔にかかる髪を耳に掛けて撫でつけた。されるがままになっている姿があまりに可愛らしくて。

「・・・・私の夕食などどうでもいい。あの男はどうしたんだ」

「あの男って・・・・・もしかして、フランツさんの事ですか?」

直前に二人で会っていたのは事実なので、少しどきりとしたが、

「そうだ。君はあの男と交際しているんだろう」

という断定的な言葉に、エルナは驚いて手を止める。

「街中で二人でいるところを見かけた。とても親密な様子で。そして君は帰って来なかった。だから私は・・・・君が、駆け落ちしたのかと・・・・・・」

まさか見られていたなんて。旦那様の最後の言葉を慌てて否定した。

「まさか!確かにフランツさんにお店を案内して頂いて、途中カフェに立ち寄ったりもしましたけれど・・・・・。街では偶然お会いしただけなんです。駆け落ちだなんて・・・・まさか」

しばらく二人は黙ったままでいたが、沈黙に耐えられなくなったのはエルナだった。

「・・・・・・お付き合いを申し込まれは、しました。結婚を前提に。でも、お断りしました」

エルナは止めていた手を再び動かした。

「妹の仕送りがありますし、ここの仕事をやめるつもりはありません」

「・・・・・君は愚かなほど真面目だな。結婚すれば、夫の家に頼る事も出来るだろうに。それに・・・・・あんな《仕事》からも解放されるぞ」

「旦那様、そんな風に脅かされても、私は《お食事》のお世話を苦痛には思っておりません。これからも続けて参ります。旦那様が必要とする限り」

旦那様は深く溜息を吐きながら、頭が痛いというように額を押さえた。

「・・・・・・・・・・君は本当に、愚かだ」

旦那様はどうやら、私に出ていってもらいたかったらしい。でもそれは、私が邪魔だから、という理由ではなく、《お食事》をさせる事に旦那様自信が抵抗があるから、という事のようだ。

常に人が側にいるのが、ある意味、旦那様の気分を落ち着かないものにさせているのかもしれない。

しかしエルナはこう言った。

「・・・・・エルナは今、ここを我が家だと思っておりますわ」

人を寄せ付けまいとするのは、傷つきたくないからだ。

私は絶対に、旦那様のお側にいよう。

冷たい風が二人の間をひゅうっと通り抜けて、エルナはぶるりと震えて肩をすくめた。

旦那様はエルナの肩に頭を寄せて、

「・・・・・・寒い。お腹が空いた・・・・」

と、小さく呟いた。

「はい、旦那様」

エルナはそっと、頭のてっぺんにキスをして微笑んだ。







二人で身体を寄せ合いながら、旦那様の部屋に入り、大きなベッドに腰掛けた。いつの間にか、空の端に姿を見せた月の光が室内に射し込んでいる。どちらともなく、二人はキスを交わした。

それから随分長い時間、互いに冷たくなった頬に優しく触れ合い、唇を啄んだり、軽く舐め合った。激しさは一切なく、ゆったりとした触れ合いだった。

旦那様の柔らかな唇が顎、頬を通り、そして耳のふちを何度も往復し、温かな息がかかる。

それだけで背筋がゾクリと粟立ち、声が出そうになるのを旦那様の肩に顔を埋めて耐える。

ちゅ、ちゅく、ちゅ・・・・・。

「っふ・・・・・・、あぁっ!」

耳朶を軽く噛まれ、堪えきれなかった声とともに、びくっ、と身体が反応した。

旦那様はくたりと身体を弛緩させるエルナの背に手を当てて、ゆっくりベッドに押し倒し、腿を挟み込むように跨がった。

首筋に熱くぬるりとした舌が這い、同時に先程まで愛撫されていた耳を爪先でカリカリと刺激されて、エルナは旦那様の下で身体をくねらせながら嬌声を上げた。

そしていつの間にか、沢山並ぶワンピースの釦が外されていた。

大きな手で、両方の乳房の下の方からぐっと押し上げられ、尖った胸の先が下着をつんと持ち上げる。

(あぁ・・・・・・・・・・・)

エルナの胸が、次なる快感に高鳴っていく。

しかし旦那様の手は、中心に向かってはギリギリの所でまた引き返すのを繰り返し、一向にエルナの望む刺激を与えてはくれない。

意識を集中させていたエルナだったが、ふと旦那様の顔に目を向けると、旦那様の紅い目がじっとこちらを見つめていて、目が合った瞬間、胸の先をきゅうぅっと摘ままれた。

「あっ、は・・・・・・・・!」

その途端、涙が溢れ落ちて視界が滲んだ。下着の上から既に固くなっている先端を人差し指と中指で挟まれ、親指の腹で擦られると、直接触られるのとは違う快感で満たされた。時折きゅっと胸の先を摘ままれる度に涙が溢れ、その度に旦那様はそれを舌で舐め取った。

先端は何度も擦られた事で、熟れた赤い果実のようにぷくりとふくらみ、手が離れた後もじんじんと甘い痛みが残っている。脚の付根は既に熱を持って疼いている。

いつもなら《食事》を始めるために、旦那様はそこをとろとろになるまでほぐすが、今日は違った。

エルナをくるりとうつ伏せにさせると、下腹を軽く抱えて腰を上げさせた。顔はシーツに突っ伏したままなので、お尻を突き出したような体勢だ。

そしてスカートをたくし上げたかと思うと、下着をするりと下ろしてしまった。

「あっ?!やっ・・・・・!」

思わぬ形で秘処が晒されてしまい、エルナは焦って手で隠そうとした。

そんなエルナの手を旦那様は優しく捕まえて、腰の辺りで一纏めにして手首をぎゅっと握った。

ただ、振り払おうと思えばすぐにそうできる、そのくらいの力加減だった。そんな対応に少し安心したエルナは、恥ずかしいけれど、そのまま旦那様に身を任せる事にした。

旦那様は臀部のまろみに指を這わせ、キスを落とし、エルナはその度に、ぴく、ぴく、とお尻を震わせる。

背を向けているので、どこにどんな刺激が与えられるのかわからない。弛くではあるが、腕も拘束されていて自由がきかない。

そんな状態に鼓動も呼吸も早くなり、興奮している自分を自覚した。

腰の方から手を回され、指の腹で花芽をつぅーっと下から撫でられ、びりびりと背骨まで甘い痺れが走った。

「ふ、うぁっ・・・・・・!!」

それを何度か繰り返されただけで、自分だけで下半身を支えるのが難しいくらい、腰が砕けた。

そして肩口をかぷり、と甘噛みされて、エルナは声にならない悲鳴を上げて呆気なく達した。

旦那様は優しく歯を立てただけで、肌に食い込んだ感触はなかった。毒は注入されていない。

つまりエルナは、歯を立てられただけで、条件反射のように達してしまったようだ。

そんな事実に気付いてしまって、色づき始めていた肌が全身真っ赤になるくらい、羞恥心が込み上げた。

「・・・・・大丈夫か?」

手の甲で頬を撫でながらそう聞いた旦那様に、エルナはこくり、と頷いた。そして、今なら聞ける気がして、前から気になっていた疑問を口にした。

「あの・・・・、旦那様は、よろしいのですか?その・・・・・・・・・」

エルナははっきりとは言えなかったが、旦那様には伝わったようだ。表情が見えない旦那様の感情が気になって仕方なかったが、後ろを振り返る勇気はなかった。

「・・・・・脚を閉じて」

旦那様は再度エルナの腰を支えた。どうするのかと、エルナが少し緊張しながら待っていると、

「んっ・・・・・・!」

閉じた腿の間に、熱く、硬い、でも少し弾力のあるものが差し込まれ、ああこれが旦那様のものなのだとわかった。旦那様はゆっくりと抜き差しを繰り返し、その動きを自分の愛液が潤滑剤となり、摩擦を助けた。

「は、あぁぁっ・・・・・!!」

旦那様のものでエルナの花芽を擦られる。達したばかりの身体には苦しいくらいの刺激で、エルナは快感に耐えるだけで、何も出来ないでいた。

しかし背後から、旦那様の少し荒い息が聞こえて、自分の身体で気持ち良くなってくれているのだと胸が熱くなる。旦那様が動きやすいように、何とか自分の身体を支える。

動きは少しずつ早くなり、そして旦那様が一際強く、ぐっと腰を深く突き入れたかと思うと、微かな呻き声とともに、びくっ、と一度痙攣した。

荒い息は少しずつ収まり、旦那様はエルナから離れると、続きの浴室の方へ行ってしまった。

エルナはよろよろと上体を起こすと、脱ぎかけだったワンピースに白くどろりとしたものが付いている事に気付いた。

指先で掬って匂いを嗅いでみると、生暖かく、独特の青臭さがある。何かしらとエルナがつんつんとつついていると、旦那様がタオルを持って戻って来た。

「・・・・・触らなくていい。すまない、服を汚した」

そう言って、その白いものをタオルで拭き取り始めた。

旦那様が汚した?はて、と数秒間考えて、答えが分かり、エルナはかーっと頬が熱くなった。

つまりあれは、旦那様の・・・・という事らしい。初めて見たとはいえ、自分の無知が恥ずかしい。

「だ、旦那様。《お食事》は大丈夫ですか?あまり召し上がっていらっしゃいませんが・・・・・・」

旦那様が口にしたのは涙だけだ。空腹を訴えていたのに、あれでは足りないのではないだろうか。

旦那様は一瞬目を丸くし、そしてくすりと笑った。美しくもどこかいたずらめいた微笑は、今まで見た事がない表情で、エルナは目を奪われた。

「随分と余裕があるようだ。今日はこれで終わりにしておこうかと思ったが・・・・・・手加減はいらない、という訳だな」

「え・・・・・・」

エルナの顎をくい、と持ち上げ、旦那様は言った。

「腹が満たされるまで、頂くとしよう。・・・・今夜は寝られないな?」

宣言通り、朝までずっと《食事》は続いた。


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