ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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感情と利益

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勝手に抜け出したことで何かしらは言われるのではないかと身構えること数日、アロンはいまだに何も言われていない。

それどころか誘拐事件で怖がっていると思われているようで、エルヴィスが何かと心配し、いろんな贈り物を手配した。

薔薇、パン、服、なぜかそれに混じるエルヴィス達の写真。

アロンはパンを棚に隠し、気に入った服だけ残して他を丸めてベッド下に置き、薔薇を抱えて窓から放り投げた。

そして残った写真達の処理がわからず手に持って悩んだ。

「なんで写真なんて贈るんだよ」

エルヴィスが演説している写真、誰かと握手している写真、エルドが車椅子に座って段差を見つめている写真、そしてライネスが誰かと一緒にいる写真。

贈り主がエルヴィスだからなのか、おのずと本人の写真が一番多い。

だがアロンの気を引いたのはとある一枚の写真だった。

「ライネス……?」

そこに映っている赤髪の男は紛れもなくライネスである。肩から上しか映っておらず、しかも横顔だが、その顔は見たことのないほど穏やかな笑みを浮かべていた。

目線は何かを見つめているのだろう。まるでこの写真には片割れとなる半分があるかのように思える。その半分の写真にライネスをこんな表情にさせる何かがあるのだろう。

「こいつ、こんな顔できるのか……」

アロンの記憶の中では、基本ライネスはどこか嫌な笑みを浮かべる嫌なやつというイメージしかない。

だからこの写真には違和感しかなかった。

「もしかしてあいつ双子なのか?」

気になりだすとどうしても意識が向いてしまう。しかもライネスは誘拐事件以来まだ顔を出していない。

アロンは不本意ながらもエルヴィスの事務室なる場所を訪れた。

「確かここだよな」

ドアの上にはめられているプレートを一目見やる。読めないために無視した。

ドアを開こうと開閉ボタンを押すが、何度押してもなぜか開かない。

「ああクソッ!なんでだよ!」

アロンがイラつきながら顔を近づけて原因を探ろうとした時、突然首の輪っかとドアの「ピッ」という音が重なった。

「なんだ!」

驚いたアロンは慌てて下がると、ドアがひとりでに開いた。

すると中から、

「こうやって触るといいのか?」

「もう少し力加減をコントロールするといい。人間の皮膚は弱い」

「じゃあこうかな!」

「背中の皮膚は薄く、両脇は神経が集まっている。慎重になったほうがいい」

なぜかなかではエルドが壁際で半裸になり、エルヴィスがその体をあちこち触っていた。

「……何やっているんだお前達」

恐ろしいものを見るような目でアロンは口もとを引き攣らせた。

「アロン!いいところに来てくれた!今エルドに人間の触り方を教えてもらっていたところなんだ。ぜひ今アロンで実践させてほしい。もう傷つけないから。ね」

アロンが一歩下がる。

「ふざけんなよ!誰かさせるかよ!」

アロンはそう言うと慌てて来た道を走っていった。

「アロン!待って!………おや?」

追おうとしたエルヴィスが地面に何か落ちているものを見つけた。

それは横顔を撮られたライネスの写真である。

「この写真は……私が送った写真に入っていたものだね。いい表情だから、アロンの警戒心も解くのかと思っていたが、なぜこれだけを?」

不思議がるエルヴィスの背後に来たエルドはその写真をのぞき込んだ。

「……なぜこの写真を選んだ」

「だってライネスにしてはいい表情だろう?」

エルドは写真を見つめながらほんの少し黙った。

戦闘型アンドロイドは面部の細かい作りをコストカットしている側面があるためか、どの機体も表情が硬い。

ライネスは昔の経験に加えて支配階級として作られた機体なため、多少他の戦闘型よりも表情が豊かである。ただ、昔のライネスであればニコリともしない。

「この時のライネスは誰を見つめていたのか、覚えているか」

「もちろん!私のデータ容量を疑うのかい?覚えているからこそライネスはこういう一面もあると知ってもらいたくてね。どうにもアロンはライネスのことが苦手みたいだから、何かできないかと思って写真を送ったんだ。ついでに私たちの写真も!」

「エルヴィス、誰も昔の恋人を見て微笑んでいる夫の写真など見たくない。それはダメだ。人間の欲深さは事業や利益だけに現れるわけじゃない。感情方面の、特に誰かを愛することには独占的な感情を抱く」

「なぜ?」

「愛は人間達にとって特別なものだ。友情とも親愛とも違う、お互いのあいだでしか生まれない繋がりであり、その繋がりによって人間は次の世代を誕生させていく」

「繁栄が大事ならばなぜ人間同士で多妻結婚をしないんだい?そのほうがいいのでは?確か昔の人間はそうしていたはずなんだけれどね」

「エルヴィス、私たちが今のような外見や細かい表現ができるようになったのは時代の変化と進歩だ。人間達も時代とともに価値観が変わっていく。感情方面で言えば、その人を独占したい、愛しているから自分だけを見てほしい、というのを念頭に置いて考えればむしろ今の価値観が一番合うのかもしれない。それに、私はずっと言い続けている。感情を利益で推し量ってはいけないと。あなたが向き合うのは妻であり、家族だ」

「……やっぱり人間の愛は難しいなぁ。利益で推し量れないか」

エルヴィスは写真を指でさすっとなでた。

利益重視なのは職種型と戦闘型の特徴の一つである。そのほうがより社会をうまく回せる。その利益重視なところを捨てて考えるのが人間達の愛である。だから職種型のエルヴィスにとっては難しい考え方だった。











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