ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

文字の大きさ
28 / 163

記憶とメモリー9

しおりを挟む








ライネスがアレアと出会ったのはほんの偶然である。

それはとあるテロ集団の攻撃に遭った民間人を救出する際のことだった。

ライネスは本来なら指揮する立場にいるのだが、この日、副指揮官が代わりに指揮を取り、ライネスは自ら救出の場に立った。

理由は他でもない。テロ組織員がいないかどうかを探すためである。

その際中に、助けを求める女の声を聞いた。

その人がアレアだった。

アレアは自分を助けたライネスに一目惚れをし、その場で求婚をした。

アレアの家はちょうど軍部へ武器提供をする裕福な家庭であり、ライネスは周りの賛同に断れきれず、そのまま求婚を受け入れた。

なにぶん戦闘型アンドロイドなため、結婚生活はギズギズしたものがありながらも、それなりに良好に過ごすことができた。

だが、変化が訪れたのは結婚して2年目のことである。












アレアは箱の中に残った最後の飴を見て眉をひそめた。

「もう残り一個しかない……」

ライネスとの時間は貴重であり、人間の食べ物を口にできないアンドロイドと一緒に食べれるこの飴はさらに特別なものである。

支配階級の軍用アンドロイドであるライネスは常に忙しい。家に帰って来れる頻度も少ない。

「買いに行こう!」

アレアは思い立つとすぐに行動する派だった。

支度をして部屋を出ると、ちょうど廊下を通る人物に出会った。

「エルヴィス!」

「おや?アレアさん、今日は庭園にお出かけですか?」

「お買い物に行くんだよ!」

「いいですね。では送り迎えのひとを準備しましょうか?」

「大丈夫、大丈夫!1人でいけるから!じゃあね!」

遠ざかっていくアレアの背中を見て、エルヴィスは興味を無くしたかのようにまた廊下を歩いた。



だがその日、アレアは帰って来なかった。エルヴィスが実家のほうへ確認をしても戻っていないという。

監視カメラでその姿を探したが、お店に入った姿を最後に途絶えてしまった。

ライネスに連絡が入ったのはその晩のことである。

アレアが見つからないという情報に急いで軍部から戻ってきた。

「アレアが失踪したというのはどういうことだ」

ライネスがエルヴィスに問い詰めるとあちらはどこか悩ましげな顔をした。

「午後に買い物に行くと言って、お店まで入る姿は確認できたけどその後出てくる姿はなかったんだ」

「店は調べたか?」

「調べたよ。なんならエルドにお店の監視カメラまで侵入してもらったけど、相手はなかなか強いハッカーみたいで、エルドが反撃を受けて今自己修復中なんだ」

「ハッカー………まさか」

「グレイシー・アンブラじゃないかな。確か彼女の元には凄腕のハッカーが加わったっていうじゃない?この近くで本人の目撃情報も見つかったらしいし、たぶん関係あると思うよ」

その時だった。

エルドが他のアンドロイドに車椅子を押してもらいながら会議の場に出た。

「あれ?エルドじゃないか。もう修復終わったのかい?」

「いや、先ほどグレイシー・アンブラと名乗る人物が連絡をしてきたらしい」

その名前にライネスは目を鋭くし、エルヴィスはやっぱりと目を見開いた。

「あの女はなんと言っている」

「可愛い子猫を保護したから、受け取りに来てほしい。謝礼はライネスの軍事情報入りメモリーカードだそうだ」

「謝礼だと?」

ライネスが鼻で笑った。

「俺が軍事情報を渡すと思うか?」

「アレアさんのことはどうするんだい?」

エルヴィスが聞くとライネスの判断に一瞬だけの空白ができた。

「………なんとかする。どうせ融通が効く。とりあえず渡すことをエサに誘きだす」

「わかった。じゃあ私が準備してこよう!エルドもお疲れ様。まだ修復できていないならゆっくりしてくるといいよ。他のことは私に任せて」

エルヴィスがニコニコと会議室を出て行った。

ふたりの反応を見ていたエルドは確認の意味で「本気か?」と言った。

ライネスの言っていた融通が何を指しているのかわかっているからだった。

しかしライネスはどこか煩わしそうに頭をかいて、まったく問題だと感じない口調で続けた。

「仕方ないだろ。軍事情報は渡せない。だがアレアを放っておくこともできないだろ。こうすることが一番効率がいい」

「アレアさんなら怒る気がするが」

「あいつの性格ならしばらくは怒るだろうな。なぐさめればそのうち収まるはずだ」

いつものように発散させて、何か贈り物でもすれば怒りは収まるはずだ。

ライネスはそう考えた。

だからーー













ーーだからこの手で殺した。












正確に言えば殺そうとした。

グレイシーはいなかったものの、誘き作戦で姿を現した誘拐犯がアレアを盾に前へ出た。

店の店主を殺してから成り変わったグレイシーの手下である。

「潜伏して1ヶ月でやっとつかんだ機会なんだ!これで俺はあの方のお役に立てる!お前らアンドロイドは全員鉄屑てつくずになれ!」

誘拐犯が口にしているあの方はさしずめグレイシーのことだと思われる。

アンドロイド嫌いが全てグレイシーのもとに集まっているんじゃないかと思うほどその側にどんどん湧いてくる。

ライネスは冷めた目で誘拐犯を見やり、そしておびえているアレアを見た。

「ライネス……」

か弱く震える声にライネスは意図的に表情を和らげた。

どうにも戦闘型の顔の作りは怖いと評判らしい。

ぶつけたのか、それとも殴られたのかアレアの顔には酷いアザができている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

さようなら、たったふたつの

あんど もあ
ファンタジー
王子に愛されてる伯爵令嬢のアリアと、その姉のミレイユ。姉妹には秘密があった……。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました

西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて… ほのほのです。 ※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

処理中です...