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絢爛会3
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男の手がアロンに伸ばされようとした時である。
「いた!」
その声に振り返ると走っていったアロイスが戻ってきていた。男がアロンに近づこうとするのを見て焦った声を出す。
「何やってんだよ、父さん!」
「父さん!?」
まさか目の前の変な男がアロイスの父親とはかなり以外である。
だがここに他の人がいないのでおそらく間違いではない。
「こいつお前の父親なのか!?」
「そうだよ!叔母を亡くしてから様子がおかしくなり始めたんだ。今日は会場に着くなり2階に来ていたから……休憩室にいないと思ったらまた酒を飲んでいたのか!」
だがアロイスの反応を気にせず男はまだアロンに手を伸ばそうとしている。
「アレア!」
「おい!近づくなって言っただろ!」
「父さん!その人は死んだ妹じゃない!しっかりしてくれ!」
妹?アレアってこの男の妹か?
場面がアロイスの出現でさらに乱れ、アロンに手を伸ばす男、それを阻止してつかみかかるアロイス、そしてふたりの押し合いに壁際で潰されかけそうになるアロン。
「だっ、誰か………っ、ぶっ!」
アロイスのひじが思い切り頬にめり込んできた。
「すまないアロン!」
「離れ、ろ!!」
耐えかねたアロンがそろそろ手を出そうかと考えていた頃、ちょうどアロイスと男を引き離す人が現れた。
警備ロボットである。そのそばにはネロシカと数人の男女が立っている。
「あら、アロイス。ずいぶんとみっともない姿ね」
「……お前か」
「姉に対してその言い方は失礼じゃないかしら。それに、わたくしはわざわざあなたに教えにきたのに」
「何を?」
「あなたが欲しがっていたあの絵画、噂じゃ今日のオークションに出るらしいわ」
アロイスがハッと固まった。
「お前がわざわざ教えなくてもオークションには最初から参加するつもりだ」
「そう?余計なお世話を焼いたみたいだね。あなたもそう強がらずに、わたくしの絢爛会に加入すればいいのに。そうすればオークション情報どころか、さまざまな情報があなたに有利に動くのにね」
「それこそ余計なお世話だ!僕は自分の実力でのし上がる!お前は口出しをしないでくれ!」
「まあ、怖い。本当に頭が硬いわ。なんと言うか、宝の持ち腐れね。そこまで言うならもう何も言わないわ。………父さん、行きましょう」
男は警備ロボットに拘束されながらも依然として目はアロンを凝視している。
その視線に気味悪いものさえ感じたアロンはそっとアロイスの後ろに隠れた。
声をかけても返事がないのを見てネロシカがそばにいる若い男2人に、
「申し訳ありませんが、父を休憩室に連れて行ってあげてくださいませんか?」
「もちろんです!お任せを!」
「ネロシカ様のお言葉でしたらなんなりと!」
若い男2人はまるで下僕のように答えると呆然とする男の脇を固めて連れて行った。
それを苦い顔で見届けるとアロイスはアロンを振り返った。
「すまない。驚いただろ」
「当たり前だろ!なんなんだよあいつ!」
「僕の父さんはなんというか……その、叔母を亡くしてからはここが、少しな」
そう言って人差し指で自分の頭をつんとする。
「たくっ、どう聞いてもアレアって女の名前だろ。見間違いでも俺を女と見間違えるとか、相当酔っているだろ」
アロイスとネロシカが同時にアロンを見た。
「……なんだよその視線」
「いや、お前確かにクソガキ感あるけど、黙っている時は割といける。顔立ちはどちらかといえば中性寄りじゃないか?普段の言動がその魅力を半減させているが」
「は?」
「そうですわね。アロンさんのお顔はとても魅力的ですわ」
「………」
アロンは無言で2人を交互に見て、やがて顔をしかめた。
「お前たち俺のことからかっているだろ」
それを先に否定したのはネロシカである。
「まさか。わたくしはむしろアロンさんを絢爛会に引き入れたいのですよ?」
ネロシカの後ろにいる若い男女たちからどよめきが起きた。
「会長であるわたくし直々の推薦ですわ」
「なんだよ、そのなんとか会」
「ダメだっ!!」
突然叫んだアロイスにアロンがびくっと肩を持ち上げた。
「アロンは僕の友達だ!お前の絢爛会には入らない!」
そう言ってアロンの腕を引っ張りドスドスと足音を響かせながら廊下を歩き出した。
「おい!手を離せ!」
「あの女の絢爛会だけは入ったらダメだ!」
「そもそもなんなんだよその絢爛会?」
「ネロシカが会長を務める若者の交流会だ。名だたる貴族の子息令嬢が加わっている。最初は小さな子どもたちの集まりだったのに、いつの間にかあんなにデカくなって、しかも裕福層のなかでは若い者がこぞって入りだがる!あの女は人の心を籠絡するのがうまいんだ!本当に姑息なっ!」
アロンではよくわからない難しい単語が続けて出てきたが、アロイスがどれだけネロシカを嫌っているかだけはわかった。
「入らねぇよ!」
アロイスがぴたっと足を止めた。心配をにじませた表情で振り返り、「本当か?」と聞く。
「嘘をつく必要ねぇだろ?それより今どこに向かっているんだ?」
「休憩室」
「帰る」
「え?」
「いやさっきお前の父親が休憩室に連れて行かれただろ!」
「大丈夫だ。ここには別の休憩室がある。そこに連れて行ってやるからさ」
「いいって。もう帰りたいんだけど……」
「いた!」
その声に振り返ると走っていったアロイスが戻ってきていた。男がアロンに近づこうとするのを見て焦った声を出す。
「何やってんだよ、父さん!」
「父さん!?」
まさか目の前の変な男がアロイスの父親とはかなり以外である。
だがここに他の人がいないのでおそらく間違いではない。
「こいつお前の父親なのか!?」
「そうだよ!叔母を亡くしてから様子がおかしくなり始めたんだ。今日は会場に着くなり2階に来ていたから……休憩室にいないと思ったらまた酒を飲んでいたのか!」
だがアロイスの反応を気にせず男はまだアロンに手を伸ばそうとしている。
「アレア!」
「おい!近づくなって言っただろ!」
「父さん!その人は死んだ妹じゃない!しっかりしてくれ!」
妹?アレアってこの男の妹か?
場面がアロイスの出現でさらに乱れ、アロンに手を伸ばす男、それを阻止してつかみかかるアロイス、そしてふたりの押し合いに壁際で潰されかけそうになるアロン。
「だっ、誰か………っ、ぶっ!」
アロイスのひじが思い切り頬にめり込んできた。
「すまないアロン!」
「離れ、ろ!!」
耐えかねたアロンがそろそろ手を出そうかと考えていた頃、ちょうどアロイスと男を引き離す人が現れた。
警備ロボットである。そのそばにはネロシカと数人の男女が立っている。
「あら、アロイス。ずいぶんとみっともない姿ね」
「……お前か」
「姉に対してその言い方は失礼じゃないかしら。それに、わたくしはわざわざあなたに教えにきたのに」
「何を?」
「あなたが欲しがっていたあの絵画、噂じゃ今日のオークションに出るらしいわ」
アロイスがハッと固まった。
「お前がわざわざ教えなくてもオークションには最初から参加するつもりだ」
「そう?余計なお世話を焼いたみたいだね。あなたもそう強がらずに、わたくしの絢爛会に加入すればいいのに。そうすればオークション情報どころか、さまざまな情報があなたに有利に動くのにね」
「それこそ余計なお世話だ!僕は自分の実力でのし上がる!お前は口出しをしないでくれ!」
「まあ、怖い。本当に頭が硬いわ。なんと言うか、宝の持ち腐れね。そこまで言うならもう何も言わないわ。………父さん、行きましょう」
男は警備ロボットに拘束されながらも依然として目はアロンを凝視している。
その視線に気味悪いものさえ感じたアロンはそっとアロイスの後ろに隠れた。
声をかけても返事がないのを見てネロシカがそばにいる若い男2人に、
「申し訳ありませんが、父を休憩室に連れて行ってあげてくださいませんか?」
「もちろんです!お任せを!」
「ネロシカ様のお言葉でしたらなんなりと!」
若い男2人はまるで下僕のように答えると呆然とする男の脇を固めて連れて行った。
それを苦い顔で見届けるとアロイスはアロンを振り返った。
「すまない。驚いただろ」
「当たり前だろ!なんなんだよあいつ!」
「僕の父さんはなんというか……その、叔母を亡くしてからはここが、少しな」
そう言って人差し指で自分の頭をつんとする。
「たくっ、どう聞いてもアレアって女の名前だろ。見間違いでも俺を女と見間違えるとか、相当酔っているだろ」
アロイスとネロシカが同時にアロンを見た。
「……なんだよその視線」
「いや、お前確かにクソガキ感あるけど、黙っている時は割といける。顔立ちはどちらかといえば中性寄りじゃないか?普段の言動がその魅力を半減させているが」
「は?」
「そうですわね。アロンさんのお顔はとても魅力的ですわ」
「………」
アロンは無言で2人を交互に見て、やがて顔をしかめた。
「お前たち俺のことからかっているだろ」
それを先に否定したのはネロシカである。
「まさか。わたくしはむしろアロンさんを絢爛会に引き入れたいのですよ?」
ネロシカの後ろにいる若い男女たちからどよめきが起きた。
「会長であるわたくし直々の推薦ですわ」
「なんだよ、そのなんとか会」
「ダメだっ!!」
突然叫んだアロイスにアロンがびくっと肩を持ち上げた。
「アロンは僕の友達だ!お前の絢爛会には入らない!」
そう言ってアロンの腕を引っ張りドスドスと足音を響かせながら廊下を歩き出した。
「おい!手を離せ!」
「あの女の絢爛会だけは入ったらダメだ!」
「そもそもなんなんだよその絢爛会?」
「ネロシカが会長を務める若者の交流会だ。名だたる貴族の子息令嬢が加わっている。最初は小さな子どもたちの集まりだったのに、いつの間にかあんなにデカくなって、しかも裕福層のなかでは若い者がこぞって入りだがる!あの女は人の心を籠絡するのがうまいんだ!本当に姑息なっ!」
アロンではよくわからない難しい単語が続けて出てきたが、アロイスがどれだけネロシカを嫌っているかだけはわかった。
「入らねぇよ!」
アロイスがぴたっと足を止めた。心配をにじませた表情で振り返り、「本当か?」と聞く。
「嘘をつく必要ねぇだろ?それより今どこに向かっているんだ?」
「休憩室」
「帰る」
「え?」
「いやさっきお前の父親が休憩室に連れて行かれただろ!」
「大丈夫だ。ここには別の休憩室がある。そこに連れて行ってやるからさ」
「いいって。もう帰りたいんだけど……」
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