51 / 163
デートの場所
しおりを挟む
ゼノンの表情が少し沈んだ。
エルドはスゥと目を開けて見やったが、その隣にいるアルケと視線が合った。
相手の相変わらず微笑み気味の目は記憶の中にある主人とよく似ている。
「ゼノンさん、今日はどういったご用件で来られましたか?」
エルヴィスがそう聞くとゼノンは思い出したように顔を上げた。
「え?ああ、そうでした。今日は突然のご訪問申し訳ありません。実は少し事業の拡大をしようと思いまして、その際、隣の市とも掛け合いをしようと」
「ああ!なるほど!つまり私を通して話をつけてほしいということでいいですね?」
「え?あ……はい、その通りです」
「いいですよ!」
あんまりにもスムーズに進んだ話にゼノンは用意してきたプレゼン資料があることをすっかり忘れてしまった。
「あの、本当にいいんですか?一応資料をお持ちしました」
「大丈夫です!あとでデータを送っていただければ問題ありません。実は私もあなた方にお聞きしたいことがあります」
「はい、お答えできる範囲でしたらなんでもお聞きください」
言いながらエルヴィスが先ほど言った言葉の中に出てきた「あなた方に」という部分が気になった。
あなた方?私ではなく、あなた方………?
まさかアルケも含まれているのか?と思ってしまったが、アルケとエルヴィスの接点といえば何かしらのイベントで顔合わせをしたことがあった程度である。特に話すこともなかったため、エルヴィスがいったい何を聞きたいのかまったく検討がつかない。
「おふたりは恋人同士ですよね」
「はい、その通りです」
「ということはデートしますよね?」
「デート、ですか。確かにしますが……」
いったい何を聞かれているのかまったくわからない。
「デートは何をしてらっしゃいますか?」
「何を、とは……?」
「どのような内容でデートを進めていますか?」
まるでどのようなスケジュールで会議を進めているかのような聞き方にますます困惑してくる。
しかもエルドのほうを見やるともうすでに目を閉じ、ライネスという軍用アンドロイドは相変わらず鋭い眼差しで警戒してくる。アロンにいたっては興味がなさそうに用意されたお菓子を食べていた。
唯一質問したエルヴィスだけが真剣な顔をしている。
「そうですね」
ゼノンがそう言うとエルヴィスがシュバッとどこかからメモ帳とペンを取り出した。
「えーと、とりあえず行く場所を決めます」
「場所……例えばどこですか?」
エルヴィスはメモしながら聞いた。
「そうですね。動物園や水族館などいいじゃないでしょうか」
興味なさげにしていたアロンがぴくっと反応した。
しかしエルヴィスはどこか難しい顔であごを触った。
「ふむ、外か………。この建物の周りを囲む庭園は見たことありますか?」
「え?ええ、あります。とても手入れの行き届いた美しい庭園だと感じました」
「そうでしょう!ここをデート場にするならばどうだろう?」
「それはいい考えですね。ただ、いつも行く場所をデート場にするより、普段あまり行かない場所のほうが新鮮さがあると思います」
「なるほど……」
ふたりとも黙ったのを見計らってアロンが声を上げた。
「な、なあ!」
「どうしたんだい?アロン」
「その、水族館があるのか?」
「…………興味があるのかい?」
「水族館ってあれだろ?ほら、大きなガラスの向こうに水と魚が入っていて、いろんな種類が見れるところ!クラゲもあるんだろ?」
アロンは手振り身振りで水族館を現した。
それ見ていたゼノンが思わず、
「もしかして水族館を知らないのか?」
「知っている!母さんから聞いたんだよ!なあ、本当に実在するのか?海の中にいるような場所!」
「もちろんーー」
「ゼノンさん」
エルヴィスがゼノンの話をさえぎり、ずいと前のめりになる。
「貴重なお話ありがとうございました。まだ急いでいますよね?事業拡大のお話は任せてください。何かありましたらご連絡します」
「え?はい……ありがとう、ございます」
追い払われていると気づかないわけがなかった。ゼノンはアルケを連れて立ち上がると、離れる直前にチラッとエルドに視線をやった。あちらも気づいて目を開けた。
だがお互い何も言わずにまた視線をそらしていく。
ふたりが出ていくとアロンはエルヴィスに詰め寄った。
「水族館に行きたい!」
「庭園も楽しいよ!まだまだいろんな花がーー」
「水族館に行きたい!」
「温室だってまだ見ていないところがたくさんーー」
「なんで水族館はダメなんだよ!」
「アロン、外は危ないからダメだよ」
「なんでだよ!ちゃりなんとかイベントだって外だろ?それには連れていってくれたじゃないかよ!」
「それは周りがわざわざきみを誘拐するような人がいないと知っているからね。でも不特定多数の身分もわからない人がいるところは危ないよ」
「エルドがいるだろ?監視カメラで見ていれば大丈夫なんじゃないか?」
アロンはそう言うとエルドを振り返って同意を求めた。だがあちらはエルヴィスの意見を尊重するようで、アロンとは目線を合わせず、エルヴィスの反応を伺っていた。
「きみが外に行きたいのは知っているけど、でも危険はなるべく避けたほうがいい」
アロンはギリッと歯を噛むとパッとライネスを振り向いた。
「な、なあ……水族館に行ってみたい……」
ライネスはわずかに首を傾げるとニヤッと笑った。
人差し指で自分の口もとをつんつんとする。その意味を理解したアロンが苦虫を噛み潰したような表情であごを引いた。
こいつ………っ!!キスにこだわりすぎだろ!
エルドはスゥと目を開けて見やったが、その隣にいるアルケと視線が合った。
相手の相変わらず微笑み気味の目は記憶の中にある主人とよく似ている。
「ゼノンさん、今日はどういったご用件で来られましたか?」
エルヴィスがそう聞くとゼノンは思い出したように顔を上げた。
「え?ああ、そうでした。今日は突然のご訪問申し訳ありません。実は少し事業の拡大をしようと思いまして、その際、隣の市とも掛け合いをしようと」
「ああ!なるほど!つまり私を通して話をつけてほしいということでいいですね?」
「え?あ……はい、その通りです」
「いいですよ!」
あんまりにもスムーズに進んだ話にゼノンは用意してきたプレゼン資料があることをすっかり忘れてしまった。
「あの、本当にいいんですか?一応資料をお持ちしました」
「大丈夫です!あとでデータを送っていただければ問題ありません。実は私もあなた方にお聞きしたいことがあります」
「はい、お答えできる範囲でしたらなんでもお聞きください」
言いながらエルヴィスが先ほど言った言葉の中に出てきた「あなた方に」という部分が気になった。
あなた方?私ではなく、あなた方………?
まさかアルケも含まれているのか?と思ってしまったが、アルケとエルヴィスの接点といえば何かしらのイベントで顔合わせをしたことがあった程度である。特に話すこともなかったため、エルヴィスがいったい何を聞きたいのかまったく検討がつかない。
「おふたりは恋人同士ですよね」
「はい、その通りです」
「ということはデートしますよね?」
「デート、ですか。確かにしますが……」
いったい何を聞かれているのかまったくわからない。
「デートは何をしてらっしゃいますか?」
「何を、とは……?」
「どのような内容でデートを進めていますか?」
まるでどのようなスケジュールで会議を進めているかのような聞き方にますます困惑してくる。
しかもエルドのほうを見やるともうすでに目を閉じ、ライネスという軍用アンドロイドは相変わらず鋭い眼差しで警戒してくる。アロンにいたっては興味がなさそうに用意されたお菓子を食べていた。
唯一質問したエルヴィスだけが真剣な顔をしている。
「そうですね」
ゼノンがそう言うとエルヴィスがシュバッとどこかからメモ帳とペンを取り出した。
「えーと、とりあえず行く場所を決めます」
「場所……例えばどこですか?」
エルヴィスはメモしながら聞いた。
「そうですね。動物園や水族館などいいじゃないでしょうか」
興味なさげにしていたアロンがぴくっと反応した。
しかしエルヴィスはどこか難しい顔であごを触った。
「ふむ、外か………。この建物の周りを囲む庭園は見たことありますか?」
「え?ええ、あります。とても手入れの行き届いた美しい庭園だと感じました」
「そうでしょう!ここをデート場にするならばどうだろう?」
「それはいい考えですね。ただ、いつも行く場所をデート場にするより、普段あまり行かない場所のほうが新鮮さがあると思います」
「なるほど……」
ふたりとも黙ったのを見計らってアロンが声を上げた。
「な、なあ!」
「どうしたんだい?アロン」
「その、水族館があるのか?」
「…………興味があるのかい?」
「水族館ってあれだろ?ほら、大きなガラスの向こうに水と魚が入っていて、いろんな種類が見れるところ!クラゲもあるんだろ?」
アロンは手振り身振りで水族館を現した。
それ見ていたゼノンが思わず、
「もしかして水族館を知らないのか?」
「知っている!母さんから聞いたんだよ!なあ、本当に実在するのか?海の中にいるような場所!」
「もちろんーー」
「ゼノンさん」
エルヴィスがゼノンの話をさえぎり、ずいと前のめりになる。
「貴重なお話ありがとうございました。まだ急いでいますよね?事業拡大のお話は任せてください。何かありましたらご連絡します」
「え?はい……ありがとう、ございます」
追い払われていると気づかないわけがなかった。ゼノンはアルケを連れて立ち上がると、離れる直前にチラッとエルドに視線をやった。あちらも気づいて目を開けた。
だがお互い何も言わずにまた視線をそらしていく。
ふたりが出ていくとアロンはエルヴィスに詰め寄った。
「水族館に行きたい!」
「庭園も楽しいよ!まだまだいろんな花がーー」
「水族館に行きたい!」
「温室だってまだ見ていないところがたくさんーー」
「なんで水族館はダメなんだよ!」
「アロン、外は危ないからダメだよ」
「なんでだよ!ちゃりなんとかイベントだって外だろ?それには連れていってくれたじゃないかよ!」
「それは周りがわざわざきみを誘拐するような人がいないと知っているからね。でも不特定多数の身分もわからない人がいるところは危ないよ」
「エルドがいるだろ?監視カメラで見ていれば大丈夫なんじゃないか?」
アロンはそう言うとエルドを振り返って同意を求めた。だがあちらはエルヴィスの意見を尊重するようで、アロンとは目線を合わせず、エルヴィスの反応を伺っていた。
「きみが外に行きたいのは知っているけど、でも危険はなるべく避けたほうがいい」
アロンはギリッと歯を噛むとパッとライネスを振り向いた。
「な、なあ……水族館に行ってみたい……」
ライネスはわずかに首を傾げるとニヤッと笑った。
人差し指で自分の口もとをつんつんとする。その意味を理解したアロンが苦虫を噛み潰したような表情であごを引いた。
こいつ………っ!!キスにこだわりすぎだろ!
24
あなたにおすすめの小説
分厚いメガネ令息の非日常
餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」
「シノ様……素敵!」
おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!!
その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。
「ジュリーが一番素敵だよ」
「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」
「……うん。ジュリーの方が…素敵」
ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい
「先輩、私もおかしいと思います」
「だよな!」
これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる