ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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デートの場所

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ゼノンの表情が少し沈んだ。

エルドはスゥと目を開けて見やったが、その隣にいるアルケと視線が合った。

相手の相変わらず微笑み気味の目は記憶の中にある主人とよく似ている。

「ゼノンさん、今日はどういったご用件で来られましたか?」

エルヴィスがそう聞くとゼノンは思い出したように顔を上げた。

「え?ああ、そうでした。今日は突然のご訪問申し訳ありません。実は少し事業の拡大をしようと思いまして、その際、隣の市とも掛け合いをしようと」

「ああ!なるほど!つまり私を通して話をつけてほしいということでいいですね?」

「え?あ……はい、その通りです」

「いいですよ!」

あんまりにもスムーズに進んだ話にゼノンは用意してきたプレゼン資料があることをすっかり忘れてしまった。

「あの、本当にいいんですか?一応資料をお持ちしました」

「大丈夫です!あとでデータを送っていただければ問題ありません。実は私もあなた方にお聞きしたいことがあります」

「はい、お答えできる範囲でしたらなんでもお聞きください」

言いながらエルヴィスが先ほど言った言葉の中に出てきた「あなた方に」という部分が気になった。

あなた方?私ではなく、あなた方………?

まさかアルケも含まれているのか?と思ってしまったが、アルケとエルヴィスの接点といえば何かしらのイベントで顔合わせをしたことがあった程度である。特に話すこともなかったため、エルヴィスがいったい何を聞きたいのかまったく検討がつかない。

「おふたりは恋人同士ですよね」

「はい、その通りです」

「ということはデートしますよね?」

「デート、ですか。確かにしますが……」

いったい何を聞かれているのかまったくわからない。

「デートは何をしてらっしゃいますか?」

「何を、とは……?」

「どのような内容でデートを進めていますか?」

まるでどのようなスケジュールで会議を進めているかのような聞き方にますます困惑してくる。

しかもエルドのほうを見やるともうすでに目を閉じ、ライネスという軍用アンドロイドは相変わらず鋭い眼差しで警戒してくる。アロンにいたっては興味がなさそうに用意されたお菓子を食べていた。

唯一質問したエルヴィスだけが真剣な顔をしている。

「そうですね」

ゼノンがそう言うとエルヴィスがシュバッとどこかからメモ帳とペンを取り出した。

「えーと、とりあえず行く場所を決めます」

「場所……例えばどこですか?」

エルヴィスはメモしながら聞いた。

「そうですね。動物園や水族館などいいじゃないでしょうか」

興味なさげにしていたアロンがぴくっと反応した。

しかしエルヴィスはどこか難しい顔であごを触った。

「ふむ、外か………。この建物の周りを囲む庭園は見たことありますか?」

「え?ええ、あります。とても手入れの行き届いた美しい庭園だと感じました」

「そうでしょう!ここをデート場にするならばどうだろう?」

「それはいい考えですね。ただ、いつも行く場所をデート場にするより、普段あまり行かない場所のほうが新鮮さがあると思います」

「なるほど……」

ふたりとも黙ったのを見計らってアロンが声を上げた。

「な、なあ!」

「どうしたんだい?アロン」

「その、水族館があるのか?」

「…………興味があるのかい?」

「水族館ってあれだろ?ほら、大きなガラスの向こうに水と魚が入っていて、いろんな種類が見れるところ!クラゲもあるんだろ?」

アロンは手振り身振りで水族館を現した。

それ見ていたゼノンが思わず、

「もしかして水族館を知らないのか?」

「知っている!母さんから聞いたんだよ!なあ、本当に実在するのか?海の中にいるような場所!」

「もちろんーー」

「ゼノンさん」

エルヴィスがゼノンの話をさえぎり、ずいと前のめりになる。

「貴重なお話ありがとうございました。まだ急いでいますよね?事業拡大のお話は任せてください。何かありましたらご連絡します」

「え?はい……ありがとう、ございます」

追い払われていると気づかないわけがなかった。ゼノンはアルケを連れて立ち上がると、離れる直前にチラッとエルドに視線をやった。あちらも気づいて目を開けた。

だがお互い何も言わずにまた視線をそらしていく。

ふたりが出ていくとアロンはエルヴィスに詰め寄った。

「水族館に行きたい!」

「庭園も楽しいよ!まだまだいろんな花がーー」

「水族館に行きたい!」

「温室だってまだ見ていないところがたくさんーー」

「なんで水族館はダメなんだよ!」

「アロン、外は危ないからダメだよ」

「なんでだよ!ちゃりなんとかイベントだって外だろ?それには連れていってくれたじゃないかよ!」

「それは周りがわざわざきみを誘拐するような人がいないと知っているからね。でも不特定多数の身分もわからない人がいるところは危ないよ」

「エルドがいるだろ?監視カメラで見ていれば大丈夫なんじゃないか?」

アロンはそう言うとエルドを振り返って同意を求めた。だがあちらはエルヴィスの意見を尊重するようで、アロンとは目線を合わせず、エルヴィスの反応を伺っていた。

「きみが外に行きたいのは知っているけど、でも危険はなるべく避けたほうがいい」

アロンはギリッと歯を噛むとパッとライネスを振り向いた。

「な、なあ……水族館に行ってみたい……」

ライネスはわずかに首を傾げるとニヤッと笑った。

人差し指で自分の口もとをつんつんとする。その意味を理解したアロンが苦虫を噛み潰したような表情であごを引いた。

こいつ………っ!!キスにこだわりすぎだろ!





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