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アロンの犬
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衝撃の告白にアロンが反応できずにいると、「驚かせてすまない」といつも通りの様子で言うとエルドは部屋を出て行った。
残されたアロンが自分の頬をつねって現実かどうかを確かめた。
しっかりとつねった箇所が痛い。
「……あいつ、表情あったのかよ」
水族館の件からしばらくしたあと、エルヴィスとライネスはどちらもアロンの前に姿を現さなかった。
そんな折、クラックとイアンが見知らぬ人間を連れてアロンの前に現れた。
「………」
リボンで両手を縛られた若い男がおずおずと前に立った。
アロンは若い男とクラック達を見比べて訝しげな表情をした。
食べかけのクッキーを口から下ろして言う。
「なんだ、こいつは」
「市長と少佐……あ、エルヴィスさんとライネスさんのことです。おふたりからの贈り物です」
「贈り物?」
「はい!ライネスさんが捕まえた銀行強盗の1人で、市長が、誠心込めて調教したので危害を加えることはないと言っていました!」
何を言っているのかよくわからない。
アロンは胡乱げな目を若い男に向け、そしてその首にある輪っかに気づいた。
「なんだ、こいつもアンドロイドと結婚したのか?エルヴィスか?」
「違いますよ!!」
クラックが凄い勢いで食いついた。
「市長の心にはアロンさん1人しかいません!こんな社会の規範から外れたクソッタレごときが汚していい位置ではありません!」
こいつ意外と汚い言葉を吐くんだな、と感想を抱きながらもう一度男を見やると、あちらもアロンを見返した。
「あ、あの……フィンジャーと言います。よ、よろしくお願いします?」
フィンジャー?アロンはその名前をつい最近どこかで聞いた気がした。
「あ…………ああ!!お前水族館で俺とゼノンを縛ったヤツじゃねーかよ!」
クラックとイアンは初めてその話を聞いたのか、お互い顔を見合わせて目を見開いた。
「あ、そうっす。赤い目出し帽を被っていました」
「やっぱりお前か!帰れっ!」
「えっ!?ちょ、待ってくださいよ!お願いします!あんたのペットにならないと殺すって脅されたんすよ!助けてくださいよ!」
「知らねーよ!なんだよペットって!お前人間だろ!」
「牢獄にぶち込む代わりにあんたの言いなりのペットにならば見逃してやるって言われたんすよ!もし今ここであんたが断れば俺は牢獄に戻るどころが即座首輪に仕込まれた毒で絶命コースすっよ!いいんすか!目の前で人が死んで!」
まくし立てられるように言われ、ついにはひざを地面につかれ、片足にしがみつかれた。
「助けてくださいよ!!犬になりますから!!」
「やめろ!離せよ!」
みかねてクラックとイアンがフィンジャーを引きはがした。
「やめろこの!」
「どうするクラック?こいつ市長の前に引きずり出してそのまま毒殺してもらう?」
「いい考えだな!」
「どこかすか!?悪魔でしょあんたら!!」
「うるさい!補助型のお友達アンドロイドとしての僕らと、きみみたいな社会のクソッタレと一緒にするな!僕達はアロンさんを縛ったり傷つけたりしないんだよ!」
3人がわちゃわちゃしている間にアロンは残りのクッキーを平らげた。
「……お前ら本当になんなんだよ」
最近疲れることばかりである。休もうにも精神的な疲れがそれを阻んでしまう。
そこで何かを思い出したイアンが「あ」と声に出した。
アロンにしがみつこうとするフィンジャーをクラックに任せて懐から何かを取り出した。
「アロンさん、こちらをどうぞ」
「なんだこれ?」
「ライネスさんたち支配階級の軍用アンドロイド向けに開催される人間との接し方交流会です。主に恋人同士、夫婦同士の参加者を集めているそうで、アロンさんにも招待状が送られました。エルヴィスさんから行くかどうか決めていいとのことです。行くのでしたらおそらくライネスさんと一緒に参加されることになるかと思います」
「俺が行くわけないだろ……」
「そうですか。それは残念です」
「ライネスは行くのか?」
「アロンさんのご意向に任せるとのことです」
「だったら行かなくてもいいだろ」
「わかりました。そのようにお伝えします」
イアンが封筒をポケットにしまおうとした時である。
アロンが突然その手をつかんで引き止めた。
「そのさ……」
「はい、なんでしょう?」
「その交流会には他には誰が参加するんだ?」
「やはり他の支配階級の軍用アンドロイドになると思います。気になることでもありましたか?」
「いや、前に会った軍用?のアンドロイドがいたんだけど、そいつも参加するのかなぁと思って」
「相方がいらっしゃれば参加される可能性がありますね」
「だよな……そもそも恋人いるかどうかもわからないし」
そこでまだアロンに抱きつこうとするフィンジャーが口を開いた。
「その会ったアンドロイドが好きになったんすか?」
「お前は黙れっ!」
クラックの肘打ちがゴッとフィンジャーの背中に当てられる。
「いてぇ!!だって、フツー好きにならなければ聞かないっしょ!」
それに反論したのはアロンである。
「好きじゃねぇ!単純に聞きたいことがあるだけだ!」
アロンはそう言うが、なぜかクラックとイアンに疑惑的な目で見つめられた。
「お前らその目はなんなんだ!」
残されたアロンが自分の頬をつねって現実かどうかを確かめた。
しっかりとつねった箇所が痛い。
「……あいつ、表情あったのかよ」
水族館の件からしばらくしたあと、エルヴィスとライネスはどちらもアロンの前に姿を現さなかった。
そんな折、クラックとイアンが見知らぬ人間を連れてアロンの前に現れた。
「………」
リボンで両手を縛られた若い男がおずおずと前に立った。
アロンは若い男とクラック達を見比べて訝しげな表情をした。
食べかけのクッキーを口から下ろして言う。
「なんだ、こいつは」
「市長と少佐……あ、エルヴィスさんとライネスさんのことです。おふたりからの贈り物です」
「贈り物?」
「はい!ライネスさんが捕まえた銀行強盗の1人で、市長が、誠心込めて調教したので危害を加えることはないと言っていました!」
何を言っているのかよくわからない。
アロンは胡乱げな目を若い男に向け、そしてその首にある輪っかに気づいた。
「なんだ、こいつもアンドロイドと結婚したのか?エルヴィスか?」
「違いますよ!!」
クラックが凄い勢いで食いついた。
「市長の心にはアロンさん1人しかいません!こんな社会の規範から外れたクソッタレごときが汚していい位置ではありません!」
こいつ意外と汚い言葉を吐くんだな、と感想を抱きながらもう一度男を見やると、あちらもアロンを見返した。
「あ、あの……フィンジャーと言います。よ、よろしくお願いします?」
フィンジャー?アロンはその名前をつい最近どこかで聞いた気がした。
「あ…………ああ!!お前水族館で俺とゼノンを縛ったヤツじゃねーかよ!」
クラックとイアンは初めてその話を聞いたのか、お互い顔を見合わせて目を見開いた。
「あ、そうっす。赤い目出し帽を被っていました」
「やっぱりお前か!帰れっ!」
「えっ!?ちょ、待ってくださいよ!お願いします!あんたのペットにならないと殺すって脅されたんすよ!助けてくださいよ!」
「知らねーよ!なんだよペットって!お前人間だろ!」
「牢獄にぶち込む代わりにあんたの言いなりのペットにならば見逃してやるって言われたんすよ!もし今ここであんたが断れば俺は牢獄に戻るどころが即座首輪に仕込まれた毒で絶命コースすっよ!いいんすか!目の前で人が死んで!」
まくし立てられるように言われ、ついにはひざを地面につかれ、片足にしがみつかれた。
「助けてくださいよ!!犬になりますから!!」
「やめろ!離せよ!」
みかねてクラックとイアンがフィンジャーを引きはがした。
「やめろこの!」
「どうするクラック?こいつ市長の前に引きずり出してそのまま毒殺してもらう?」
「いい考えだな!」
「どこかすか!?悪魔でしょあんたら!!」
「うるさい!補助型のお友達アンドロイドとしての僕らと、きみみたいな社会のクソッタレと一緒にするな!僕達はアロンさんを縛ったり傷つけたりしないんだよ!」
3人がわちゃわちゃしている間にアロンは残りのクッキーを平らげた。
「……お前ら本当になんなんだよ」
最近疲れることばかりである。休もうにも精神的な疲れがそれを阻んでしまう。
そこで何かを思い出したイアンが「あ」と声に出した。
アロンにしがみつこうとするフィンジャーをクラックに任せて懐から何かを取り出した。
「アロンさん、こちらをどうぞ」
「なんだこれ?」
「ライネスさんたち支配階級の軍用アンドロイド向けに開催される人間との接し方交流会です。主に恋人同士、夫婦同士の参加者を集めているそうで、アロンさんにも招待状が送られました。エルヴィスさんから行くかどうか決めていいとのことです。行くのでしたらおそらくライネスさんと一緒に参加されることになるかと思います」
「俺が行くわけないだろ……」
「そうですか。それは残念です」
「ライネスは行くのか?」
「アロンさんのご意向に任せるとのことです」
「だったら行かなくてもいいだろ」
「わかりました。そのようにお伝えします」
イアンが封筒をポケットにしまおうとした時である。
アロンが突然その手をつかんで引き止めた。
「そのさ……」
「はい、なんでしょう?」
「その交流会には他には誰が参加するんだ?」
「やはり他の支配階級の軍用アンドロイドになると思います。気になることでもありましたか?」
「いや、前に会った軍用?のアンドロイドがいたんだけど、そいつも参加するのかなぁと思って」
「相方がいらっしゃれば参加される可能性がありますね」
「だよな……そもそも恋人いるかどうかもわからないし」
そこでまだアロンに抱きつこうとするフィンジャーが口を開いた。
「その会ったアンドロイドが好きになったんすか?」
「お前は黙れっ!」
クラックの肘打ちがゴッとフィンジャーの背中に当てられる。
「いてぇ!!だって、フツー好きにならなければ聞かないっしょ!」
それに反論したのはアロンである。
「好きじゃねぇ!単純に聞きたいことがあるだけだ!」
アロンはそう言うが、なぜかクラックとイアンに疑惑的な目で見つめられた。
「お前らその目はなんなんだ!」
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