ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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仮面の男

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アロンの持っていたサンドイッチがいつの間にか地面に落ち、それを拾い上げてくれたのはユスヴェルだった。

「はい、落ちましたよ」

「私が預かります」

エルドはユスヴェルからサンドイッチを受け取るとアロンに向かって言った。

「地面に落ちたからまた新しいのを持ってこよう。ユスヴェルさん、少しばかりのあいだアロンをお願いします」

「もちろん!きみの頼みなら断りませんよ!」

「感謝いたします」

そう言ってエルドはどこかに消えた。

「さて、アロンさん。ふたりきりになりましたね」

どう見ても他にもひとがいる。

「他の交流会参加者達はすでに別室にて避難しています。あなたはどうしますか?」

「それ、なんのつもりで聞いているんだ?」

「いえいえ!意図があるわけではありませんよ。ただ生身の人間であるあなた達は一度壊れてしまえば元に戻らないので、私はエルヴィスの友人としてすごく心配をしているのです」

「ここにこんなにアンドロイドがいるんだから大丈夫だろ。捕まえた犯人どもがここに来なければ俺がどうやって怪我するんだ」

「それもそうですね。ただ、お一人だと寂しくありませんか?」

「いや、まったくだが?」

「それならよかったです!寂しかったら私の護衛をひとり貸しますので」

「あ?護衛?」

ほら、とユスヴェルが手のひらで自分の後ろを示した。その後ろには先ほども見たスーツにサングラスのアンドロイドがふたりいる。

「この子たちは戦闘型の護衛アンドロイドです。機体に使われる素材の7割は軍用アンドロイドと同じものです。丈夫なので鞭を振るっても壊れませんよ」

「鞭?なんでそこで鞭が出るんだ……」

「そういうご趣味はないんですか?」

「俺がか?」

アロンの怪訝な表情にユスヴェルがこてんと首を傾げた。

「おや、もしかして加虐のご趣味はない方ですか?」

「加虐だぁ!?あるわけないだろ!さっきから何言ってやがんだ!」

「ああ!これは申し訳ない!勘違いをしていたようですね」

アロンがいやそうに一歩離れた。

「実はエルドの前の所有者がとんでもない方だと聞きましてね。それで今回伴侶となった人物がどんな人なのか気になりまして」

それなら寝たふりをしていたアロンが聞いていた。

確か加虐趣味のある主人だったはずである。名前は確かーー

その時である。突然誰かが声を上げた。

「エスター?」

その名前にアロンがパッと振り向く。近くで軍用アンドロイドが2台話し合っていた。

「ああ。立てこもり中の本人が自分のことをエスターだと名乗っている」

エルドの前の主人と同じ名前にアロンが、偶然か?と目を見開いた。偶然にしてはできすぎている気がした。

「しかも人質の解放に別の人質を要求している」

「なんて厚がましい」

「誘拐犯に厚がましいも何もあるか」

「それで、別の人質とは誰だ?」

「今日の交流会で講師を担当したエルドというアンドロイドとその連れの人間だ」

俺とエルド?

「おやおや。これはタイミングの良い時に。まさか犯人とお知り合いですか?」

「なわけあるか!そもそも仮面被っているし顔なんてわからねぇよ!」

そこまで言ってアロンはモニターに映っている犯人を見上げた。

端末で誰かに連絡をとっているように見えるが、先ほどアンドロイド2台の話を聞くにおそらくこちら側と連絡をしている可能性がある。

だがアロンが注目したのはその仮面である。

白い仮面に金色の模様が片方にしか描かれていない。

今日エルドがつけていた仮面は黒一色だが、その作りがなんとなく犯人がつけている仮面と似ている気がした。

「アロン、新しいサンドイッチを持ってきた」

ちょうどエルドがサンドイッチを片手に戻ってきた。

「エルドちょっとこっち来い!」

アロンは手招きして、そばまで近づいてくるのを見るとその袖を引っ張って犯人の男を指さした。

「あいつのつけている仮面お前のと似てないか?」

「ああ、確かに。私の仮面とは対になるデザインだからな」

「ど、どういう……」

「市長!エルドさん!」

先ほど去っていったアレイタという女型の軍用アンドロイドが走ってきた。その目がエルドとアロンを一瞥すると続けた。

「犯人からの要求ですが、エルドさんとアロンさんを人質と交換しなければ今すぐ現人質を撃ち殺すと言っています」

「それは困ったね」

ユスヴェルの眉間に深いシワが刻まれた。

「それでしたら私が交換に応じましょう」

「いいのかい?エルド」

「構いません。交換を断って人質に手を出されても困るでしょう」

「それはそうだけど、相手はアロンさんも要求していますよ?そこはどうしますか?」

「実は先ほどアロンの言葉で相手が誰なのかわかりました。なんとか私だけで説得してみます」

アロンが、本当か?と見上げた。自分の言葉と言うが、それはおそらく先ほど言った仮面の話だと思われる。

だがその後のエルドの反応は特別今真実を知った、というふうには見えなかった。もっともエルドの顔に表情らしい表情は浮かんだことは少ない。浮かんだとてアロンではわからなかった可能性がある。

「本当ですか!?それは驚きですね。もしかしてあなたのお知り合いでしたか?」

「……ええ。あくまで知り合いだけの関係です」

「ふむ。わかりました!さすがにアロンさんを差し出してしまえばエルヴィスとの友情がひと段落しそうなので、困っていました。あはは!」

「交渉しに行きますので、アロンをお願いします」

「お任せください!」

エルドが迷わずに向かうのを見てアロンが戸惑った。

「おい…本当に行くのかよ。エルヴィスが来てからでも……」

「アロン、ここで待ちなさい」

「………っ、おい!」

エルドがアレイタとともに廊下の先へと消えていった。

アロンは伸ばしかけた手を下ろして不安げにモニターを見上げた。

あいつバカなのかよ。自分から行くとか、何考えているんだ。





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