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嫉妬の連続3
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「ここで少し待ってくれ」
そう言ってエルドがどこかに消える。
エルヴィスは寒くないか、何か欲しいものはないかとしきりに聞き、さすがにうっとうしく思い始めたアロンが、何かを食べたい、と言って離れさせた。
「なんなんだ、あいつ」
「しつこいのは職務型の特徴だ」
「あれはしつこいを通り越してうっとうしいんだよ!」
暖かいマロンラテを飲みながらアロンがあきれた。
そもそもの話、あそこまで気使うなら別に部屋から出るくらいは許してほしい。そんな不満を抱えながらエルヴィスの遠ざかる背中を見つめた。
ライネスはその不満を顔に出している姿を見て思わず小さく笑った。
そしてアロンの頬骨近くに、どこでつけてきたのか小さな汚れを見つけた。
手を伸ばしてそっと拭き取ろうとした。
もしかしたらアロンのわかりやすい態度がおもしろく感じ気が緩んだかもしれない。
もしかしたら今までの接触でほとんど大きな事故に至らなかったために油断をしていたかもしれない。
ライネスは手を伸ばして言葉通りそっと拭き取ったつもりだった。
しかしーー
「いった!!」
その声に弾かれるように手を離した。
見ると先ほど親指で軽くこすった部分の皮がめくれていた。
アロンは痛みに顔を引きつらせてこすられた部分を触ろうか触らまいかを迷っていた。
「なにすんだ!」
ライネスはほんのり少し固まっていたが、すぐに端末を取り出して「病院に連絡する」と言って操作し始めた。
それに驚いたのはアロンである。
「待て待て!そこまでしなくていいだろ!」
痛いは痛いが、こんな程度の傷なんてゴミ溜め場にいた頃なら屁でもない。
そう考えると今この小さな傷でだいぶ痛く感じる自分はもしかしたらもうゴミ溜め場で生活できなくなってしまったんじゃないか。
とはいえ、監禁を除けばこんな衣食住の保証された生活から離れたいとは思えない。
アロンは慌ててライネスの端末に手を覆い被せた。
「病院に連絡とか正気かよ!」
「アンドロイドは寝ない。この時間ならほとんどの病院は開いている」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
「感染症になったらどうする?」
「傷口を洗えばなんとかなる!」
そう言ってアロンは水を探そうとしたが周りになかった。マロンラテか自分のつばかのあいだで悩んでいるとライネスの端末が鳴り、驚いて手を引っ込めたがその際に触れてしまったようで、あちら側と繋いでしまった。
『ライネス~やっと出てくれたよぉ』
向こう側からネビュラの声が聞こえ、ライネスが小さなため息をついた。
「間違えて押した。じゃあな」
『待って待って!少しだけでいいから悩みを聞いてくれないか!』
「お前の悩みなんていつも同じだろ。今取り組み中だ」
『取り組み中?あ!もしかしてアロンさんと一緒にいる?』
「……じゃあな」
『待って!絶対そうだ!絶対一緒にいる!どうすれば人間の伴侶と長く幸せになれるんだい!?教えて!!僕もきみみたいに伴侶と仲良くお出かけとかしたい!』
「お前はできねぇだろ」
『そんなことない!消灯時間に廊下で散歩くらいできる!』
「そうかよ。がんばれ」
『そんなにすぐ切ろうとしないで!僕はきみより見た目がいいし、怖くないし、職務型だし、ゴリラを超えるような握力もないし、どうしてきみが伴侶と仲良くできて僕はできないの!?しかも2人目の伴侶でしょ!?うらやましい!!』
伴侶を亡くしたばかりかその情緒不安定な泣き言にライネスのこめかみがピクピクと跳ねた。
「言いたいことはそれだけか。切るぞ」
『うわわわわんっ!!!』
会話の内容にアロンが首を傾げた。
「ネビュラとあの囚人うまくいってないのか?」
話を聞いてくれる相手がいることにネビュラがすぐ反応した。
『そう!まだイチャイチャもできてないのに死んちゃったんだーー』
ピッ。
ライネスが通話を切った。
あまりこの話題をアロンに聞かせたくない。変に怖がられても困るのはライネスである。
「気にするな」
「死んだってことか?あの囚人が?たった3ヶ月くらいで?」
本当を言うなら3ヶ月もない。だがライネスはただ小さくうなずいた。
「何があったんだよ……」
「お前が気にしなくていいことだ。それより傷は大丈夫か」
アロンは舌に指をつけて傷の部分をぺぺっとなでた。
「大丈夫だ。ヒリヒリするけどすぐ治るだろ」
「そうか」
そう言ってライネスは胸ポケットから何かを取り出した。袋を破り、中身を取り出してアロンの傷部分に当てた。
「消毒用の綿だ」
アロンはツンとした消毒水の匂いとひたっとした冷たい感触に思わず身を後ろにさげた。
「持っているなら最初から言えよ!それで病院に連絡しようとしたのかよ!」
「お前達人間の体は弱すぎる。感染症ですぐに死ぬか後遺症になる」
「それは否定しねぇけど、お前達の治療技術だっけ?あの変なカプセルを使えば簡単に治せるだろ。それに薬さえあれば死なねぇよ。ここはゴミ溜め場じゃねぇし」
ライネスはアロンの傷跡を見つめて何も言わなかった。
あまりの沈黙にアロンはちらっと視線をやった。
そして消毒し終わったライネスに向かって顔を近づけるよう手招きした。
「どうした」
「いいから、こい!」
アロンはコップをベンチに置いて、ライネスの顔をはさむように持ってぐいっと自分に近づかせ、小声にボソボソと言った。
「確かにお前達と比べれば弱いかもしれないけど、でも触ってすぐ壊れるような薄いガラスじゃないんだよ」
そう言ってライネスの頬に小さくキスをした。
突然の行動にライネスは反応できず、アロンのこの行動の意味を理解しようとした。しかし何ひとつわからない。
「何をしている?」
「キスだろ!」
「なぜした?」
真顔で聞かれ、アロンが恥ずかしさに相手の顔を突き放すように手を離した。
「ここに来るまでキスしてるやつとか抱き合ってるやつとかたくさんいただろ!真似したんだよ!いやならそう言え!」
真っ赤な顔で怒るアロンにライネスはやらかしたと気づいた。
そう言ってエルドがどこかに消える。
エルヴィスは寒くないか、何か欲しいものはないかとしきりに聞き、さすがにうっとうしく思い始めたアロンが、何かを食べたい、と言って離れさせた。
「なんなんだ、あいつ」
「しつこいのは職務型の特徴だ」
「あれはしつこいを通り越してうっとうしいんだよ!」
暖かいマロンラテを飲みながらアロンがあきれた。
そもそもの話、あそこまで気使うなら別に部屋から出るくらいは許してほしい。そんな不満を抱えながらエルヴィスの遠ざかる背中を見つめた。
ライネスはその不満を顔に出している姿を見て思わず小さく笑った。
そしてアロンの頬骨近くに、どこでつけてきたのか小さな汚れを見つけた。
手を伸ばしてそっと拭き取ろうとした。
もしかしたらアロンのわかりやすい態度がおもしろく感じ気が緩んだかもしれない。
もしかしたら今までの接触でほとんど大きな事故に至らなかったために油断をしていたかもしれない。
ライネスは手を伸ばして言葉通りそっと拭き取ったつもりだった。
しかしーー
「いった!!」
その声に弾かれるように手を離した。
見ると先ほど親指で軽くこすった部分の皮がめくれていた。
アロンは痛みに顔を引きつらせてこすられた部分を触ろうか触らまいかを迷っていた。
「なにすんだ!」
ライネスはほんのり少し固まっていたが、すぐに端末を取り出して「病院に連絡する」と言って操作し始めた。
それに驚いたのはアロンである。
「待て待て!そこまでしなくていいだろ!」
痛いは痛いが、こんな程度の傷なんてゴミ溜め場にいた頃なら屁でもない。
そう考えると今この小さな傷でだいぶ痛く感じる自分はもしかしたらもうゴミ溜め場で生活できなくなってしまったんじゃないか。
とはいえ、監禁を除けばこんな衣食住の保証された生活から離れたいとは思えない。
アロンは慌ててライネスの端末に手を覆い被せた。
「病院に連絡とか正気かよ!」
「アンドロイドは寝ない。この時間ならほとんどの病院は開いている」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
「感染症になったらどうする?」
「傷口を洗えばなんとかなる!」
そう言ってアロンは水を探そうとしたが周りになかった。マロンラテか自分のつばかのあいだで悩んでいるとライネスの端末が鳴り、驚いて手を引っ込めたがその際に触れてしまったようで、あちら側と繋いでしまった。
『ライネス~やっと出てくれたよぉ』
向こう側からネビュラの声が聞こえ、ライネスが小さなため息をついた。
「間違えて押した。じゃあな」
『待って待って!少しだけでいいから悩みを聞いてくれないか!』
「お前の悩みなんていつも同じだろ。今取り組み中だ」
『取り組み中?あ!もしかしてアロンさんと一緒にいる?』
「……じゃあな」
『待って!絶対そうだ!絶対一緒にいる!どうすれば人間の伴侶と長く幸せになれるんだい!?教えて!!僕もきみみたいに伴侶と仲良くお出かけとかしたい!』
「お前はできねぇだろ」
『そんなことない!消灯時間に廊下で散歩くらいできる!』
「そうかよ。がんばれ」
『そんなにすぐ切ろうとしないで!僕はきみより見た目がいいし、怖くないし、職務型だし、ゴリラを超えるような握力もないし、どうしてきみが伴侶と仲良くできて僕はできないの!?しかも2人目の伴侶でしょ!?うらやましい!!』
伴侶を亡くしたばかりかその情緒不安定な泣き言にライネスのこめかみがピクピクと跳ねた。
「言いたいことはそれだけか。切るぞ」
『うわわわわんっ!!!』
会話の内容にアロンが首を傾げた。
「ネビュラとあの囚人うまくいってないのか?」
話を聞いてくれる相手がいることにネビュラがすぐ反応した。
『そう!まだイチャイチャもできてないのに死んちゃったんだーー』
ピッ。
ライネスが通話を切った。
あまりこの話題をアロンに聞かせたくない。変に怖がられても困るのはライネスである。
「気にするな」
「死んだってことか?あの囚人が?たった3ヶ月くらいで?」
本当を言うなら3ヶ月もない。だがライネスはただ小さくうなずいた。
「何があったんだよ……」
「お前が気にしなくていいことだ。それより傷は大丈夫か」
アロンは舌に指をつけて傷の部分をぺぺっとなでた。
「大丈夫だ。ヒリヒリするけどすぐ治るだろ」
「そうか」
そう言ってライネスは胸ポケットから何かを取り出した。袋を破り、中身を取り出してアロンの傷部分に当てた。
「消毒用の綿だ」
アロンはツンとした消毒水の匂いとひたっとした冷たい感触に思わず身を後ろにさげた。
「持っているなら最初から言えよ!それで病院に連絡しようとしたのかよ!」
「お前達人間の体は弱すぎる。感染症ですぐに死ぬか後遺症になる」
「それは否定しねぇけど、お前達の治療技術だっけ?あの変なカプセルを使えば簡単に治せるだろ。それに薬さえあれば死なねぇよ。ここはゴミ溜め場じゃねぇし」
ライネスはアロンの傷跡を見つめて何も言わなかった。
あまりの沈黙にアロンはちらっと視線をやった。
そして消毒し終わったライネスに向かって顔を近づけるよう手招きした。
「どうした」
「いいから、こい!」
アロンはコップをベンチに置いて、ライネスの顔をはさむように持ってぐいっと自分に近づかせ、小声にボソボソと言った。
「確かにお前達と比べれば弱いかもしれないけど、でも触ってすぐ壊れるような薄いガラスじゃないんだよ」
そう言ってライネスの頬に小さくキスをした。
突然の行動にライネスは反応できず、アロンのこの行動の意味を理解しようとした。しかし何ひとつわからない。
「何をしている?」
「キスだろ!」
「なぜした?」
真顔で聞かれ、アロンが恥ずかしさに相手の顔を突き放すように手を離した。
「ここに来るまでキスしてるやつとか抱き合ってるやつとかたくさんいただろ!真似したんだよ!いやならそう言え!」
真っ赤な顔で怒るアロンにライネスはやらかしたと気づいた。
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