ゴミ拾いで3体の夫ができた人間

那原涼

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譲れない何か

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フェスティバルから帰ったあと、アロンは部屋の中でテーブルに突っ伏しながら考えた。

どうすればエルドが廃棄されずに済むのか。どうすればここにいられるのか。

しかしいくら考えてもいい案は出てこない。

悩み続けて、部屋に誰かが入ってきたことにも気づかない。

「アロン」と呼びかけられてテーブルからパッと顔を上げて振り返った。

「エルヴィス?」

「今日何かあったのかい?」

「いや………何もなかったけど」

「そうか……それならいい」

エルヴィスはいつになく真剣な様子で言うとアロンの隣に座った。

「もしかして監禁のことまだ怒っている?アロン、私はただあなたの安全が気になるだけなんだ。人間の一生は短い。どんな病気や事故で死んでしまうのかわからない。だからようにするしかない」

アロンはエルヴィスに視線をやするとすぐにテーブルの上に落とした。

「わかっているけど……いや、監禁に関しては今はいい」

「え?いいの?……もしかして受け入れてくれた!?」

エルヴィスの顔が驚きから笑顔に変わった。

「そういうわけじゃねぇよ」

「なんだ、違うのか……」

「お前、もしもう1人の人間と結婚するとして、俺をじゃまに思ってもとの場所に返すか?」

「そんなわけない!きみしか愛さないし、大事にする!!」

思ったより反応が激しく、アロンは少し引き気味になると同時、少しホッとした。ただ、自分1人しか愛さないと言ったことは少し困る。おそらくユラはエルヴィスに惚れている。

そしてエルヴィスは人間の愛というものにこだわっている。そのせいか、確か以前自分1人しか娶らないと言ったことがある。

「じゃあさ…例えばの話な?お前に他の人と結婚してほしいと言ったとして、その時離れたいと言ったら……さすがにゴミ溜め場に帰すよな?」

その言葉を聞いた瞬間、エルヴィスが目を見開いた。

アロンは何も言わずに見つめてくる相手から視線をそらし、慌てて弁解するように続けた。

「いや!離れたいと言っても本当は近くにいたいけど、ただ……その、何言ってるか俺もわからないけど……もし、そんな時は、首都に残してくれるか……?」

テーブルの上でアロンは頭を抱えて唇を噛みしめた。心の中で考えていた言葉をなるべくきれいに羅列してゆっくりと言葉にした。

「どこでもいい。食べ物…いや、お前達とまた会えるならどこでも……た、頼む。ゴミ溜め場には帰りたくない」

可能であれば食べ物があれば一番いいが、それだと厚かましいんじゃないかとアロンは言うのをやめた。

これが今アロンが考え得る、エルドを廃棄にさせず、かつエルヴィスから離れてもまだ会える最良の策だった。

ユラからはエルヴィスから離れるようにしか言われていないのでライネスやエルドと離れなくともいいだろうが、ユラがエルヴィスと結婚するとさすがに一緒に住むのだろう。その時自分がここにいればきっとユラは許さない。

だから先ほど考えたものが一番いいんじゃないかと思った。

エルヴィスの返答を待っているが、一向に物音がない。

アロンが恐るおそると視線を向けようとすると、ガタッと椅子を倒してエルヴィスが立ち上がった。

それに驚いてアロンがビクッとして見上げる。

目を見開いたままエルヴィスはもの言いたげに小さく口を開いていた。

「離れたいのか?」

「え?あ、いや、ちがーー」

弁解の言葉を口にする前に思い切り肩をつかまれ、その勢いに椅子と一緒に後ろに倒れた。

「いーーッ!」

「アロン、私から離れたいのか?なぜ?確かに監禁はしたが、だがそれはきみのためだと言っただろう?欲しいものは与えた。食べ物も与えた。住処も与えた。ずっと愛していると言い続けた。心移りもしていない……何がダメだったんだ?」

床に押し付けられてアロンが恐怖した目線を向けた。

肩にかかる圧力は小さくない。キリキリと痛む肩と様子のおかしいエルヴィスに恐怖で何も言えなかった。

またも息苦しさを感じた。

「教えてくれるかい?なぜダメなんだ?離れたい理由は?私が誰かに心移りしたように見えたのかい?それとも愛の言葉が足りなかった?何を言えばいい?もしかしてきみが誰かを好きになったのかい?相手は誰?」

「ま、待ってーーうっ!」

ぐっと手のひらが口を覆った。大きな手に覆われて言葉が話せず、顔が痛みで涙が浮かんだ。

「どうしよう。きみの口から聞きたくない。他の人を好きになるなんて……やはり人間なのか?相手は人間なのか?」

アロンはあまりの恐怖と息苦しさに震え出した。それにも関わらず顔をつかんでくる手にますます力が入り、あごの骨から軋むような音が響いた。

その時である。

部屋の一角からそーと声が響いた。

「あ、あの……エルヴィス様?その、さすがにやりすぎなのでは……」

まだ部屋にいるフィンジャーである。

しかし、フィンジャーの声が響いた途端エルヴィスがパッと振り向いた。

「黙れッ」

「ひぃ"っ!!」

初めて見る怒りの形相にアロンはビクリと反応し、フィンジャーにいたっては「すみませんでしたわんわんッ!!」と鳴き始めた。

このままでは本当にヤバいと察し、アロンはなんとかもがいて口と手の間に空間を作った。

「たっ、例えばの話だと言っただろ……っ!!」

悲鳴のようになんとか言えた言葉にエルヴィスがピタッと止まった。

そしてその顔から雪が溶けていくようにだんだんと険しいものが消えていく。

「そ、そうだよね!ごめんね!アロン大丈夫!?ああ、顔にアザが!本当にごめんね!私はなんてことを……!」

エルヴィスが慌てながらアロンを起こし、顔に流れた涙を拭いていった。

だがすぐに異変に気づいた。

「アロン?」

アロンは首を押さえながら口を開けてヒューヒューと息を吸おうとしているがうまくできず、焦りからますます呼吸ができなくなっていた。


「アロン!」

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